不思議なリボルバー達 | 黄昏オヤジの暴発日記

黄昏オヤジの暴発日記

退職後の第二の人生を手探りで進むオヤジのモデルガン+独り言。黄昏に染まりながら気まぐれに発火しつつ、この世の由無し事に毒を吐く(令和4年5月20日・タイトル一部修正)

 オートマチックが好きで手元にあるモデルガンのほとんどがそう。かといってリボルバーが嫌いなわけではない。タナカのボディガードはお気に入りだし、コクサイの金属製M29も手放し難い。

ただ、オートマチックと比べ基本的に人力作動で、かつ、可動範囲が限られているためギミックとしての面白味は一歩譲る。

 実銃の世界を見ても、マテバやウエブリーフォスベリーのようなオートマチックリボルバーはあるが、機能的には完成された感じであり、あまり変わり種は出てこないように思える。

 しかしである。ネットを徘徊していると、時折変わったリボルバーに出くわすことがある。オートマチックと同様、古い時代のモデルが多いがそれを割り引いても奇妙で独創的なものが多い。

 今回はそんな変わったリボルバーの中からいくつか紹介したいと思う。

 

 まずは、いわゆるオートマチックリボルバー(セルフコッキングリボルバー)

 有名どころはマテバやウエブリー・フォスベリー、というかこれ以外にはほとんど知られていない。でも、種類はとても少ないが実はほかにもある。

 一つ目はアメリカ製の「ユニオン」というモデル。チャールズ・F・レフィーバーという人物の設計に基づき、当時オハイオ州にあった「ユニオン銃器会社」が1909年から1912年に生産した。口径は32口径と比較的小ぶりな銃。ウエブリー・フォスベリーによく似たジグザグパターンの溝がシリンダーの周囲に刻まれている。作動方式もよく似た反動利用だったみたい。後半部分が覆われているので何か独特の仕掛けがあるのかなぁと思わせるが、単に手を保護するためだけのものだったようだ。これはまぁ常識的な部類。

*今回紹介する中では一番常識的(?)なユニオン。そこそこ妙です。

*参考まで。こちらはウエブリー・フォスベリー。ユニオンに比べるとまともに見えます。ちなみにこれは珍しい38口径バージョン。

 

 次に登場するのは一気に変態度が上がる。リボルバーなのにカートがエジェクトされるというから不思議。

 スペインは「ズライカ(Zulaica)」というメーカーが製造したモデル。設計は1905年で1920年まで生産されたというが生産数は非常に少なかったらしい。ただ、第一次大戦中フランス軍の将校のポケットピストルとして需要があったという。口径は.22ロングライフルで6連発。作動方式はなんとブローバック!

 ただし、詳しい説明や内部の設計図などというものは発見できなかったので、詳細は不明。わずかにあった説明文からすると、発射後シリンダー後部のスライド上に見える部分が後退、カートをエジェクトするとともにシリンダーが回転するとある。ハンマーもおそらくコックされたものと思う。興味をそそるモデルである。

*古いようで何故か新鮮さも感じます。今回発見できたのはこの1枚のみ。ほかにご存じであればよろしく

 

 2番目のモデルにして一気にハードルが上がってしまったが、次に紹介するのはもっとすごい。今回の本命である。

 案外知っている方も多いかもしれないがこれがその銃。ランドスタッドである。

*言葉を失うような不思議な銃。シリンダー(?)があるのにボックスマガジン?なんでや!

 

 銃のことを少しでも知っているものが見れば思わず「なんで?」と二度見してしまいそうな構成。一見するとダブルアクションリボルバーのようだがなぜかオートマチックのようにマガジンがある。それに普通ハンマーがあるところがスライドのように見えてしまう。何がどうなっているのか本当にわからない。

 一般的には「ランドスタッドの自動リボルバー」と呼ばれているが、正直なところリボルバーともオートマチックとも言えない不思議な銃である。

 さあ、語る。

*トリガー脇の細長い、先端が丸くカーブを描いているロッドが結構、肝心のパーツ。

*シリンダー(?)の後ろにある細長いパーツがいわゆるボルト。シリンダーロッドの周囲のスプリングがリコイルスプリング。

 設計したのは、ハルバート・フォルケスタッド・ランドスタッドというノルウェー人。時代は1899‐1900年。ノルウェー軍の軍用拳銃の採用を目標に設計されたらしい。口径は7.5ミリ「ナガン」。そう、あのロシアの「ナガン」である。

 私も正直なところ完全に作動方式を理解していない。以下の説明は、相変わらずの頓珍漢なコンピュータによる翻訳と設計図や画像から推測したものであることをご了承願いたい。

 まず中央に存在するシリンダー状のもの。これは通常の円形のシリンダーではない。平たい長方形の弾倉と考えていただいたほうがよい。従って薬室は上下に1個づつしかない。

*横になった弾倉。当たり前だが、平たいので横にすると向こうが見える。ファイアリングピンはコッキングポジションにあり、後端が突き出している。フレームから下に出、トリガーと接している平たいロッドが、トリガーと連動して弾倉を回転させる。

 ボックスマガジンには6発装填されるが、それを本体に装着する際には左側のグリップパネルを外して(あるいはグリップパネルと一体構造なのかも)はめ込むようにするようだ。

 マガジンをはめ込んだ後(もしくははめ込む前かもしれないが)、バレル下のシリンダーロッドを後ろに押し込む。そうするとそのロッドに連結(あるいは一体となった)されたボルトが後退し、ファイアリングピンがコックされる。

 シリンダーロッドを離すとリコイルスプリングの力でボルトとともに前進するが、その際にマガジンからカートリッジが押し出され下側の薬室に挿入される。

 この辺りの動きはまるでオートマチックそのものである。

 しかしこのままではカートリッジは下の薬室に入ったままであり、絶対に発射できない。なんとか上の薬室までもっていく必要がある。どうするか?

 ここでリボルバー作動が行われる。この状態でトリガーを引くと、左側面のフレームからトリガー後部に接する平たい棒状の金属パーツを上に押し上げることになる。このパーツの先端には関節が二つ設けられ、長方形の弾倉のシリンダーロッド(回転軸)に沿って動くようになっている。しかもシリンダーロッドには棒状パーツの先端と接するように出っ張りが設けられている。

 つまり、トリガーを引くことにより、棒状のパーツが押し上げられ、その先端がシリンダーロッドを回転、結果として長方形の弾倉を180度回転させ、上下の薬室が入れ替わる。見事にカートリッジはバレル基部とご対面。ファイアリングピンはリリースされ無事発射となる。

*これがパテントに付いていた分解図。これをじっくりと眺めてようやくおぼろげに動きが分かった。Fig5の図では、空カートのエジェクトする様が描かれているのが憎い。同時にボルトの後退に伴いバレル下のシリンダーロッドが後退(リコイルスプリングを圧縮しているのだろう)様がうかがえる。

 見にくいがFig6、7、8をよく見ると弾倉の回転する仕組みが分かる。

 しかしこれだけではない。発射後、ボルトはオートマチックのように後退しその過程でなんと空ケースをエジェクトしつつ、ファイアリングピンをコックする!

 あとはリコイルスプリングの力で前進する際に次弾を装填し、次の発射に控える。

おそらくはこのような作動をするものと思われる。

*下のモデルからは空カートがのぞいている。

 どうだろうか、想像してみよう。重いトリガーを絞ると長方形の弾倉がヒラリと回転し、発射。そうすると小さなボルトが後退し空カートが蹴り出され宙に舞う。コックされたファイアリングピンが本体後方に突き出す。再度トリガーを引くとまたシリンダーがヒラリと回転し・・・。実に面白いでないか。発射シーンをぜひ見てみたい。

 ただ、構造が複雑すぎ、しかもその割にメリットが少ないため実用性には乏しく、軍用としてはもちろんのこと、市場的にも受け入れられる可能性がなく試作のみで終わった。

 大げさな機構の割には通常のリボルバーと同じ6連発、機構は複雑で作動不良の可能性は大、しかもトリガーがかなり重たかったというから仕方がなかったのかな。

 ただ1つ残された試作品は設計者のランドスタッドさんとともにイギリスに渡るが、氏は1955年に死去。

 その後、銃本体はオークションを経て生まれ故郷のノルウェーに帰り、とあるコレクターのもとにあるという。

 変わった銃だが、最後は国に帰れて良かったのかな、などと思う・・・

 

 

 おまけ

 全くの正体不明のハンドメイドガンの紹介

 見てほしい。きれいなエッジや直線がなく手作り感が満載。しかもどんなふうに動くのかよくわからない。まるで「風の谷のナウシカ」にでも出てきそうな、なんとも不思議な魅力に溢れた銃ではないだろうか。

*「ナウシカ」に持たせろ!

*シリンダー状の膨らみと、さもリボルバーのようなグリップとトリガーに騙されてしまうが、これはリボルバーではない。ロータリーマガジン方式のオートマチックが正解。

 ネット上では、オートマチックリボルバーの一種と紹介されているが実際は違うと思う。

 ダブルアクションのようなトリガー形状やグリップ形状、さらにはシリンダー状のパーツが付いているので、そのように言われているのだろう。しかし、よく見るとシリンダー状のパーツは独立しておらず、動かない(回転しない)。これは内部にロータリー方式の弾倉を備えているためその部分が膨らんでいるだけである。

 作動方式はボルト(スライド)が後退するタイプのオートマチックのようだ。45口径だというので何らかの遅延作動をするのだろう。

*こんな風に上部のパーツが後退するが詳しい構造はわからない。

 1958年ごろのゴールデン・ステートアームズというところの「世界の銃」というカタログに「詳細不詳」として掲載されていたという。

 2014年にオークションに出品され、その際の落札予想価格は1500ドルから2500ドルだった。結果は知らない。

 だれがいつどのような目的で作ったのかもわからない謎めいた不思議な銃である。

 

 ということで今回はここまで

 なお、次回もリボルバーを取り上げるつもり

 探ると、実に面白い

 ではでは