私が小学2年生の夏、痴漢にあった。
自宅近くの公園で、ラジオ体操をした後だった。
その日は珍しく、1人で帰宅していた。
30歳前後の男が、加藤さん宅から出てきた。
男は、私に「おはよう」と声を掛け、道沿いのガレージのシャッターを背に私を立たせた。
「ちょっと触るけど大丈夫だからね」
そう言って、私の服の中に手を入れてきた。
胸を直に触って、
「こっちはまだか…」
と言った。
今度はパンツの中に手を入れて、直に股間を触った。
長かった。
体感では30分くらい。
触られている間、私は何も喋らなかった。
でも、誰か通りがかって助けてくれないかな?と思っていた。
しかし、誰も通らなかった。
さすが私、運が無い!と思った。
抵抗する気はなかった。
抵抗して逆上されたくないのもあったが、被虐待慣れしている私には、当然の報いだと思った。
はいはい、また大人の好きなようにされるだけで、何の意思表示も許さないんでしょ?と思っていた。
触り終わったあと、男は、
「お家まで送ってあげる」
と言って、私に手を繋がせた。
歩いて2分。
私はわざと家の真ん前に着いてから
「ココ」と、自宅を指さした。
あわよくば、家人が男と手を繋ぐ私を発見するかも?と思ったからだ。
家が目の前だと気付いた男は、慌てて手を離し、来た道を走って逃げて行った。
帰宅すると、祖母が矢継ぎ早に聞いてきた。
「なんでこんなに遅くなったの?」
「さっき手を繋いでた男の人は誰なの?」
私は「痴漢されてた」と言ったが、
祖母は「そんなわけないでしょう」と言った。
私の(あわよくば)は、何にもならなかった。
「信じられないなら信じなくていいけど」
私はそう言って、自室に籠った。
この時には既に、誰も自分の言うことなんか信じてくれないとわかっていた。
痴漢された恐怖心の上に、それを信じてもらえなかった絶望を、私は心に生き埋めにした。