財団法人長野経済研究所 が発行している「経済月報6月号 」に05-06シーズンの長野県内のスキー場の状況についてのレポートが掲載されている。その内容をベースに05-06シーズンを振り返ってみると・・・



  『長野県のスキー場利用者数は、早期の積雪に恵まれ滑り出し好調であったが、年明け以降は失速し、全体としては減少傾向が継続した。・・・・・



冒頭この文章ではじまるが、これは長野県に限らず05-06シーズンの全国的な特徴だった。
前年のシーズンは全国的に降雪が遅く年末ぎりぎりまで雪がないところが多かったのに比べ約1ヶ月雪が早く良いスタートを切ることができ12月単月としては対前年比で非常に良い結果となった(しかしこれは前年が悪すぎた、という前提であるが)。しかし、その後の全国的な「大雪」のため12月下旬から1月中旬まではお客様の足が遠のいてしまった。これにはもちろんメディアの取り上げ方にも問題があったと考える(アクセス道路などは充分に確保され通常の生活には大きな支障がなかったにもかかわらずこの時期のメディアの論調として「スキー場は危険なので行くな」的なものであった)。ただ、それに対して有効な情報発信ができなかったことは業界全体、またスキー場を抱える自治体としては問題であり今後の対応を検討する必要を強く感じる。
ただ、雪が落ち着いてきた1月下旬以降もお客様が戻らず結果、営業的に非常に悪く前年(04-05シーズン)を全国平均として下回る状況だった。
具体的には長野の例で言うと、



  『・・・・・2005年度の県内主要スキー場24ヶ所(利用者数で県内全体の約7割を占める)の利用者数は延べ6,009千人となり、前年度より212千人の減少となった。
   前年度比では昨年度の△5.9%に対し本年度は△2.8%となり減少幅は縮小した。・・・・・



ここでレポートは「減少幅が縮小した」としているがこれは単純な比較の問題であり、先のようにその前年(04-05シーズン)が1ヶ月近いシーズンスタートの遅れによって90年代中頃より右肩下がりの状態を続けているSNOW業界の中でも全国的には一番落ち込んだシーズンさえ下回った、というとらえ方が必要だと考える。

このレポートの結びとして『今後の勝ち残りに向けて』の項目の中で、



   『・・・・・長野県では、依然としてスキー場利用者数が減少し続けているものの、スキー場の整理統合はほとんど進んでいない。明らかな供給過剰構造の中、多くのスキー場が従業員の削減や効率の悪いリフトの停止など、顧客を無視した一方的なコスト削減策を進めている。こうした事業者本位の取り組みが、サービス水準の悪化やコース全体の魅力低減につながり、結果として利用者離れが加速する悪循環に陥っている。・・・・・



これは全く正しい。
スキー、スノーボードをする方は感覚的にスキー場があまり減っていないと思われているだろうが、具体的には1991年のバブル崩壊の年に600以上のスキー場があったがそれから15年以上たった現在未だに600以上のスキー場が営業されている状態である(少し減っている)。現在お客様の利用者数がピークの半分以下になっているにもかかわらず淘汰が進まない、競争原理の働かないマーケットになっている。これはご存知の方も多いが自治体が関わっているスキー場も多くその営業状況に関わりなく営業が続けられているところも多い、ということが大きな問題となっている。もちろん言うまでもなく営業状況の悪いスキー場にはその穴埋めのため血税が投入されている。
その存続だけのため上記引用の内容のようなお客様の視点を欠いた対応を安易に進めてきたスキー場が多い中、未だクオリティの高いスキー場もあるが小さくなったパイをシェアしている状態が10年以上も続いているために結果厳しい営業状況が続き同じような対応に引きずられ我々の「快適で楽しい遊び場」がなくなる可能性も高くなっている。



   『・・・・・今後、さらなる勝ち組・負け組の両極化を予想させるシーズンでもあったと言えるだろう。



と、結んでいるが確かにここ1-2シーズンを見ているとそれがはっきりしてきたと思っている。ただ、これがなかなか供給過剰状態解消につながらないジレンマがある。ドラスティックな市町村合併により自治体によっては複数のスキー場を抱えるところもでてきたことからこれが契機になって今後の運営について真剣な検討が進んでいるところもある。また、自治体によっては目の前の問題として財政再建団体になりそうなところもでてきておりこのような状況がスキー場減少の後押しをしてくれることを願う。

そんな人頼みだけでなくこのレポートの最後にあるように『強い危機意識を常に持ち、顧客の視点にたった施設整備やサービスの提供を徹底的に進め』ることは非常に重要であり粛々と進めるべきことだと考える。
しかし、現場のいちスキー場から見るとSNOWの情報が届きにくくなっている状況(一般誌には取り上げられない、専門誌は縮小、宣伝広告費も大幅に減少している中CM等の露出も激減・・・etc.)、お客様もコンサバティブになりスキー場が固定化される傾向(同じスキー場にリピート、失敗しないスキー場選び)があるなか、サービスやプログラムを変えクオリティがアップしたとしてもそれがなかなかお客様の利用数、結果業績に反映しにくくなっているのではないか。

お客様へのアプローチの方法、告知・セールスの方法の見直し、今の延長線上でないシステムの見直しをする必要があるのでは、と特に最近考えているのですが・・・その方法の具現化を・・・