国会で保険適用について、
不妊治療が話題になっていますね。
今、43歳の私も4年間してきました。
不妊治療に関わりのない人からすれば、
治療がどんなものか、想像もできないと思うので、

実態の一例として書きたいと思います。
『芸能人が、40歳くらいで子供を産んでるから、自分も産めるだろう。
他の人より若く見られるし、元気だし、大丈夫だろう。』
この思考パターンが、とっても多いんです。
私もそうだったし、
特に、バリバリ働きたいという女性は、
このパターンがとっても多いです。
私の友達もかなり多かったです。
不妊って、
健康かどうかは関係ないんです。
若く見られるとか元気とか関係ないんです。
卵子の年齢は自分の年齢プラス1歳なんです。
そこが重要で、そこが最も知られてないところじゃないかと思います。
不妊は病気じゃないんです。
(病気が原因のものもありますが)
正しい知識が不足しているから、
子供を持つ人生設計を、後回しにする事が、
40歳前後で不妊に悩む女性で一番多い後悔です。
小学校5年生くらいで、
女子は生理の授業を受けますが、
ここですでに卵子についての基本的知識を、
教えるべきじゃないかな〜と思います。
生みにくくなることを知ってたら、
結婚も子作りも、もっと早く計画したのに。
っていう人が周りにとっても多いです。
私も、不妊治療はじめるまで、
な〜んにも知りませんでした。
一番はじめに驚いたのは、これでした。
卵巣にある卵子というものは、
自分自身がお母さんのお腹の中にいる時にだけ作られます。
女性はこの世に誕生してからは、卵子を作りません。
生理がきてから、どんどん出て行くだけなのです。
どんなに若く見られる女性でも、
どんなに元気な女性でも、
卵子の年齢は、
「自分の年齢 +1歳」です。
43歳の私は、
44年前に作られた卵子を使うわけです。
卵子と精子が受精した「受精卵」には、
染色体という、人間の情報が含まれます。
性別はもちろん、人間を作る全ての情報が入っています。
この染色体が異常だと、多くの場合、生まれてこれません。
生まれてこれないというよりか、
着床すらしないことが多いです。
着床しないということは、
妊娠しないということです。
(※着床=受精卵が子宮内膜に入り込むこと)
染色体が正常の受精卵のことを、
「正常胚」と呼びます。
卵子が老化していると、
どうしても染色体が異常になりやすいのです。
若ければ、4コに1つは正常胚ですが、
40歳になると、20コに1つくらいになります。
(胚盤胞の割合です。詳しくは割愛するので、統計データは然るべきところのデータを参照してくださいね。)
さらに、
一周期で育つ卵子の数も激減します。
若ければ20コくらい卵胞が育って採卵できますが、40歳くらいになると、6つ育てばいい方で、 時にはようやく1つだけ育った卵胞に卵子がない空包で採卵数が0になることもあります。
(自然の場合は、卵胞の中から一番育ったもの1つだけを排卵します。)
女性が35歳を過ぎると、
急に妊娠しずらくなるのは、
卵子の老化と、数が減るのが原因です。
11歳くらいで生理がはじまって、
50歳くらいで閉経することを考えれば、
40歳が生みにくいのは、
病気ではなく、自然の摂理です。
健康であろうが、
若く見られようが、
そこは一切関係ありません。
体外受精をしても、
40歳以上が妊娠することは、
とっても大変なことです。
(でも諦めるだけじゃありません。
私の通っていたクリニックでは、卵子の細胞を元気にさせるために、
細胞の中にあるミトコンドリアを活性化させる取り組みがされていました。
細胞を活性化させることによって、受精卵になった時に正常な染色体になるようにします。
サプリや統合医療、毎日の運動で、
私も正常胚が取れるようになりました!
不妊治療に従事しているお医者様や、
患者さんは、日々努力しているんです。
)
不妊が年齢に関係するのは、子宮ではなく、『卵子の年齢』です。
逆に言えば、
受精卵か卵子を、若い時に凍結しておいて、それを移植すれば、高齢でも妊娠できます。
※卵子凍結=若いうちに卵子だけを凍結保存する
(卵子凍結は、今はアスリートや、癌患者の方がするようになってきていますが、
現代の社会でキャリアを積みたい女性の選択肢になってもいいんじゃないかと思います。)
でも現在、数十年前に卵子凍結をしていたという人なんて、ほとんどいないので、
体外受精は、いま体の中にある卵子を使います。
簡単に体外受精の流れを説明します。
1) 卵子を採る(採卵) / 精子を採る(採精)
↓
2) 病院で卵子と精子を受精させる(体外受精)
↓
3) 受精を確認し、胚分割を見守る
↓
4) 2日目または3日目に育てる(分割胚)
↓もしくは
5) 5日目胚に育てる(胚盤胞)
↓
6) 受精卵を子宮に移植する(胚移植)
↓
7) 約2週間後に妊娠判定
例えば、
卵胞6コ → 採卵3コ → 受精卵2コ → 胚盤胞1コ
という具合に減っていきます。
卵が採れても、途中で成長が止まり、胚移植まで育たないことも多いんです。
しかも、正常胚でないと、多くの場合、妊娠しません。
移植して、妊娠判定で陰性なら、また採卵からスタートします。
これを繰り返します。
毎回ドキドキです。
(※受精卵を凍結させたり採卵だけ何回かしたり、お医者様と自分に合った方法を選びます。)
保険適用が話題なので、
じゃぁ実際どのくらいかかるものなの
と、気になりますよね。
・タイミング法
・人工受精
・体外受精
方法によって全然変わってきますが、
40歳前後はほとんど一番高い体外受精になります。
まず、大きくお金がかかるところは、
・卵子を採る「採卵」
・受精卵を移植する「胚移植」
この2つです。
簡単な手術みたいなかんじで、
採卵は痛みを伴うので麻酔をかけます。
全身麻酔で、採卵後1〜2時間ほど寝て帰ります。
(総合病院に通っていた頃は、卵胞数が少ないという理由で一部麻酔で、もう地獄のように痛かったです。
)
その採卵と胚移植に、
オプション的に色んな費用がかかります。
顕微受精にするのか、
受精卵を凍結させるのか、
などなど。
そして、
採卵までに卵を育てる薬や注射も必要です。
この注射なども保険適用外なので、
1回1万円以上とかになります。
5日間の注射代だけで5万円くらいは普通です。
毎回病院から帰るときの精算で、
20万円とかになることも普通です。
もうお金の感覚が麻痺していきます。


1ヶ月で40万円くらいかかることも普通。
多い時は、1ヶ月で80万円になったこともありました。
そして、サプリメントや、
鍼灸など、妊活にいい事は惜しめもなくするものなので、
私の場合、全て合わせて、
年間で約200万円。
最後の一年は、
不育症検査とか色んな検査もしたので、
4年間合計で、1千万円かかりました。
(私はかなりかかった方だと思います。)
トータルで採卵12回、胚移植9回しました。
今の助成制度では、6回分トータル105万円まで支給されます。(※40歳未満でスタート/夫婦合算所得730万円未満)
働く女性が不妊治療をしずらい理由。
時間です。
採卵も胚移植も、
生理を起点にスケジュールを立てます。
採卵の場合は、
卵胞が20mmくらいの頃合いのいい大きさに育つのを見極めるため、
だいたい生理14日目あたりが採卵になるので、生理9日目を過ぎると、2日に1回の頻度で診察を受け、卵胞の育ちを確認します。
どの卵胞も別々の育ち方をします。
例えば、
右の卵巣: 8mm 12mm
左の卵巣: 9mm 13mm 17mm
こんなかんじです。
1日に2mmずつぐらい、ジワジワと大きくなります。
この卵胞の中に、卵子があるはずですが、卵子は見えません。
未熟卵でも、育ち過ぎても、卵子は使えません。
よりたくさんの、いい卵子を採るために、
お医者様が、いつ採卵日がベストかを毎回悩みます。
そして、「明後日採卵です。」
と、突然言われるわけです。
自分では、4日後くらいと思っていても、
急に決まるわけです。
『明後日は都合悪くて。。
』
なんて言えません。
言ってもいいですが、
採卵自体キャンセルになったり、
いい時期に採れなかったり、
自分が損するだけです。
採卵は簡単な手術のようなもので、
朝一番に病院に行きます。
痛みを伴うので全身麻酔をかけて昼ごろ終わり、1〜2時間ほどベッドで休んで帰ります。
午後仕事とか、常人は無理です。
私は自分で仕事をしているので、
スケジュール調整はまだマシでしたが、
毎回お休みを申請しないといけないとなると、
フルタイムで働く女性は、
難しいというか、
ほとんど無理じゃないかな〜と思います。
1ヶ月先の予定なんて、全く見えないからです。
不妊治療の長期休暇ができればいいですが、
妊娠と違って、終わりが見えないし、
そもそも妊娠できるかすらわからないし、
会社の理解を得るのは難しそうだし、
女性としては、
自分のキャリアをなくして不妊治療をするのか?
難しい決断を迫られます。
スケジュール等で、かなり精神的負担があることを説明しましたが、
女性ならではの精神的負担も大きくあります。
仕事を優先して生きてきても、
“子供を持たない人生”を選択してる人は少ないということです。
持つという選択をしていなくても、
「きっといつかは結婚して子供ができるんだろう。」
と、ぼんやり考える人が多いんじゃないかと思います。
特に強く子供が欲しいと思ってなくても、
持たない人生もイメージしてなかったわけです。
それで、30代過ぎて結婚して、
いざ、そろそろ子供でも。
と、思ったら、あれ?なんかうまくいかないぞ!?


と焦り、不妊治療に至る人が多いです。
そこで突きつけられるのが、
・大金と時間を割いて子供を作るか?
・子供のいる人生を諦めるか?
の、2択です。
そこで、本能が『子供が欲しい!』と叫びます。
そしたら、もう止まらないわけです。
理屈で、「子供いない人生も素敵じゃない。」
っていうのは理解できても、
まだ可能性がある限りは、欲しい気持ちがある限りは、がんばりたくなるものです。(もちろん子供が欲しくないという方も多くいらっしゃいます。)
でも、
不妊治療のことは、
友達にも話したくない。という人が多いです。
自分の親にも、相手側の親にも、
内緒にする人もいます。
しかも、
不妊治療の情報が少な過ぎる。
だから、
孤独になる人が多いです。

私は、
8回目と9回目の移植で、
正常胚でどちらもやっと妊娠しましたが、
子宮の形が人と違う事が原因で、
この1年で2回流産しました。
「また妊娠できても、早産の可能性も高く、その時酸素が一時的に回らなかったりすると、脳に障害を負う可能性もある。」と、説明を受けて、
天国の赤ちゃんには戻って来てほしいけど、もし健康で生まれて来なかったら、この子が50歳くらいで自分は寿命で死んでしまうし、だったら天国で遊んでくれた方が安全だ。
と思い、不妊治療を断念しました。
結局私の場合、母体側の原因という結果でしたが、妊娠しないとわからなかったという点で考えれば、若ければこの結果も早く気づいたり、100%妊娠できない体ではないので、もう少し頑張れたら、無事出産できた可能性もありました。
私は主人が大好きなので、笑、
38歳の時に出会って結婚する晩婚の事実が変わらなかったとしても、
知識があれば心構えが変わったと思います。
2人して簡単に子供を授かると信じて、
いざ無理だとわかると、
夫婦仲が良くても離婚を考える人もいます。
喧嘩という意味でなく、
私じゃなかったら、夫は子供が持てたかも。
私も実は相手のためと思って少し考えました。
赤ちゃんに恵まれなかった悲しさ以外にも、
両方の親や夫を悲しませたことや、
命を繋ぐ責任感というか、色々複雑でした。
不妊治療って、
子供ができるか、できないか、だけじゃなく、
家庭とか、それぞれの状況や事情があるので、
とってもデリケートなことなんです。
「流産」という経験は、した人しかわからないかも知れませんが、初期流産であっても、
『子供の死』というのをしっかりと体験します。
出産予定日もあって、毎日声をかけて、生まれてくると信じて疑わなかった子が、お腹の中で死んでいると診察されるのは、母親としてこんなに辛い事がこの世にあるのかというくらい辛いです。
「ダメでも前向いて、またがんばろ。」
が、通用しません。
『失敗 』と『子供の死』が経験として全く違うからです。
高齢になるとこの経験をする割合も増えます。
流産じゃなくても、
胚移植して、妊娠判定で陰性を告げられるだけでも、実は、めちゃくちゃ悲しいです。
受精卵の成長を移植前も見て、
自分のお腹に入って2週間くらい話しかけながら大事にして、
判定日に陰性(着床していない)ということは、
お腹の中で途中で死んでしまったということなので、めちゃくちゃ悲しいです。
だから、
不妊治療を続ける人は、多少なりとも傷つきながら、孤独にがんばって、赤ちゃんが来てくれることを願って続けているんです。

『安定期に入る前までは妊娠したことを話さない方がいい』という風潮もあって、
当事者が不妊治療や流産について、人にしゃべる事はあまりないです。
なので、勇気振り絞って書いてみました。
不妊治療をしやすい社会になることと、
体の仕組みと、妊娠のプロセスの、
正しい基礎知識を教育に組み込んで、
人生設計を正しく立てられ、
悲しい思いをする人が少なくなることを、
心から願います。。!
私の個人的な一例としてご紹介しました。
)
