
心、境界線⑤
「お食事ありがとうございました。久しぶりに沢山飲めて楽しかったです!」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます」
お互い礼を言い合い思わず笑ってしまったウンスとヤン医師は、レストラン入口で会話をしていた。
「・・・私はユ先生はもっと大きな病院の方が良いと思ったのですが、貴女の考えを聞いて良かったです」
「そんなっ、・・・ヤン先生に気を使わせて本当に申し訳ありません」
「私はユ先生の為にお手伝いしますよ。あ、今回のお返しに」
「えー、別に良いのに、おっと―・・」
足元がふらつきよろけたウンスをヤン医師が腕を掴み支え、大丈夫ですか?と声を掛ける。
大丈夫と手を振りウンスは体重を立て直そうとしたが、後ろから背中を押す手に驚き固まってしまった。
「えっ?!」
「ウンス」
背後から最近聞いた低い声に“何故彼は後ろから現れるのか”と驚きと呆れに振り向くと、やはり声の主はヨンで、グレーのジャケットを着こなす姿は何時見ても医者には見えなかった。
「またぁ?」
「また?いや、ウンスこそまた酔っているだろう」
「だから、貴方には関係ないでしょう!」
笑顔だったウンスが怒り出し、咄嗟にヤン医師はヨンに向きすみませんと声を掛ける。
「ユ先生のお知り合いでしょうか?申し訳ありません、私が飲ませ過ぎてしまった様で責任を持って送りますので」
だから、ヨンの手は借りないと暗に伝えているのをヨンは表情を変えず聞いており、ヤン医師をジッと見つめた後漸く言葉を発した。
「・・・俺は―」
「ちょっと待ってよ、チェ先生!」
だが。
後ろから更に女性の声が上がり、ヨンは肩越しに振り向き、咄嗟に気付いたウンスもはぁーとため息を吐き出した。
「止めてよ、修羅場に巻き込むのは」
「そういう訳じゃない」
しかし、女性はヨンの前にいるウンスを見つけるとユ先生?と驚いたが、背中を支えるヨンに2人を交互に見て先程と同じく眉を上げ怒り出した。
「ほらね、やっぱり結局はユ先生と付き合っているんだわ!なのに、別な女性とも付き合うだなんて本当に最低な男ね!」
「・・・・・は?」
女性の怒りの半分をぶつけられたウンスは唖然としたが、直ぐ様何ですって?と聞き返した。
「私と彼が?何言ってんの?」
「誤魔化されないわ、最近また再会して会い始めているんでしょう?前は隠れて付き合っていたみたいだけど、今は堂々と出来るものね!」
「・・・・・え?」
――数年前の2人の関係は既に知られていた?
反応出来ず固まってしまい、ウンスは目線だけをヨンに向けるとヨンもまた知らなかったのか視線だけをウンスに向けていた。
お互い周囲には言っていず、空気さえ病院では出していないつもりだった。しかし、どうやらそれは自分達だけで周囲には見つかっていたらしい。
それでももう4~5年前の話で今更話をぶり返す事も無いとウンスは思ったのだが。
「でももう5年前の話じゃないの、今は・・・」
「嘘よ、この間もチェ先生がユ先生を送って行ったと話を聞いているんだから!何も無い訳ないじゃない!」
「・・・」
「・・・」
確かにキスはしたが、それ以上は何もしてはいない。
今更ヨンとよりを戻すなんて・・・。
「何、黙ってんの?彼女に何か言いなさいよ」
小さい声でヨンに話し掛けるが、ヨンも小さく首を振る。
「さっき別れたばかりだから」
「嘘でしょう?馬鹿じゃないの?」
本当に修羅場に巻き込まれているではないか。
女性はギロリとウンスを睨み付けている。
何時の間にか怒りの矛先はヨンでは無く、ウンスに向けられてしまった様だ。
「どうせ、外でユ先生は笑っているのでしょう?でもよく考えて?貴女に満足出来ないからチェ先生は外に女を作るんじゃないのかしら?」
「君、そういう事を外で言うものではないよ?」
様子を見ていたヤン医師は女性に対し、自分の品位を下げてはいけないと優しく説い始め女性は一瞬ポカンとなるが、
「関係ない人は混ざらないで!」
「ちょっと待って、私も関係ないんだけど?」
「嘘よ!またそうやって内緒で付き合うつもりなの?」
女性の荒げた声にはぁーとウンスは辟易したため息を吐き出し、ヨンの手を自分の背中から離すと女性へと視線を戻した。
そして。
「私、チェヨンさんなんか好きじゃないわ」
ウンスの言葉に傍にいたヤン医師は驚き、目線をヨンに向けると彼の視線はウンスを凝視している。その瞳はショックなのかわかっていたのか不明な程に感情が見えなかった。
「女性に対して軽く考えているみたいだし、いて当たり前みたいな感じがずっと嫌いだったの。それに今更来たとしてもまた他の女性に失礼な態度だとしたらそんな男と付き合いたいとも思わないわ」
ヨンが傍にいるにも関わらず隣を一瞥もせず、真っ直ぐ女性を見つめ話すウンスに女性の方が戸惑い始めチラチラとヨンを見ている。ウンスはヨンから離れヤン医師へと向かうと、そこで漸くヨンを見た。
「ずっと思っていた事よ」
そう言いウンスはヤン医師の腕を引き、歩いて行った。
ヨンは一瞬目を開いてウンスを見つめたが、
結局言葉を発する事は無く2人の後ろ姿を見つめるだけだった――。
数日経ち、江南病院内ではヨンとウンスの話が何故か広がりやはりあの2人は恋人同士だったのかと盛り上がっていた。そして、ヨンの行動にウンスが嫌になり去って行ったとも広がりそれを聞いたアン医師は事実なのか?とヨンに尋ねるが、答え様とはしなかった。
ウンスは関係無いとわかった女性もおり、再びヨンへと迫る者もいたが「どんな気持ちで来てるんだ?」と意味不明な質問をして冷たくあしらう様になってしまい、女性から振られた事が悔しいんだろうと揶揄する者達もいた。
そんな話が盛り上がっていた中、
突然ヨンは異常な行動を起こした。
何と今まで付き合った女性に会い謝罪し始め、
短い期間で終わった事、
何故振ったかを話し始めたという。
アン医師はどうなってんだ?と唖然とし、ふと思い出し急いでイ医師の場所へと向かった。
「ありゃあ、一体彼は何をしているんだ?」
アン医師の問いに静かにカルテを見ていたイ医師は、あれかと顔を上げた。
「この間ユ先生と会って何か言われたんでしょう?漸く気付いたって事ではないですか?」
「女性を軽く扱った事をか?」
するとイ医師はん?と首を傾げた。
「まあ、それもありますが・・・アン先生は今までの話を聞いて彼をどう思いました?」
「来る者拒まずの最低な男だと・・・」
「ですよね?ですが、実はユ先生には自分から行っているんです。
別れた筈なのに彼女から嫌がられているのに必ずユ先生に近付く、全く他の女性とは異なっていませんか?」
「・・・・・あ!」
そうだった。
彼女が酔って誰か呼ぶと話になった途端、急いで個室に向かって行った。
確かに今までのは全て女性から言われたもので彼ではなかった筈だ。
「・・・ユ先生が自分を嫌いだった事を知って、かなりショックなんじゃないですか?」
――だとして今の彼の行動は一体?
アン医師は困惑気味にイ医師を見つめるが、
彼もまた無表情でカルテを読んでいるだけだった。
⑥に続く
△△△△△△
ウンスがヨンをどう思っていたか漸く知ったみたい。
23時になってしまいましたねm(_ _)m💦
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アメリカツアーも終了✨お疲れ様でした❣️