
君に降る華【特別話】⑶
「――なのにユ先生、失敗したと?」
「あの男!ドライブって言うから車に乗ったらそのままホテル行こうとして。
・・・この年だからって舐めてんじゃないの!」
しかし、その話を聞いた同僚はやれやれとため息を吐いた。
「・・・彼、良い物件だったのでしょう?行けば良かったんじゃない?」
「う、ま、まぁ・・・確かに、そうなんだけど・・・」
確かに、
車が発進し少し話をしていると男性はウンスに熱が籠った眼差しを送って来て、
「何処かに泊まりに行かない?」
と、少し低めの声を掛けて来た。
それが何の意味かわからない年でも無く、
それでも少しの緊張を持ちそのまま進んでも良いだろうか?と考えていると――。
――カチャン!
ウンスの手から落ち足元に落ちたバッグから金属音がし、そこで漸くウンスは音の出処がわかり中から小さなケースを取り出した。
それは少し前からバッグの奥底に持つ様になっていた医療道具だった。だがウンスはこの世界で使うつもりは更々無く、このケースはあの青年の為の物と決めていた。
――・・・あぁ、これだったのね。
雪が舞う中、小さく笑った顔を思い出す。
そして若いながらに隊長になった苦労を吐露していたが、とても端正な綺麗な顔をしていた。ソウル市に来て待ち行く人々を見てもあんなに整った一般人は見つけられなかった程だ。
さっきから音がしていたのはコレだったのね・・・。
――あの青年に何かあったとか?
ウンスがそのケースを見て考えていると、それが気になったのか男性はケースの中身を尋ねて来て、
医療道具だと話すと男性は一瞬で強ばった表情になり、あぁそう、と言いながら前を向いてしまった。
「どうかした?」
「い、いや、あぁ、・・・そうだ、近くのBARに行かないかい?」
ホテルに行く筈がいきなりBARに変更し、行き先を変えた男性の様子にウンスは眉を顰めた。
――・・・あやしい。
これも女特有の勘だろうか?
「・・・そういえば、とても素敵だから女性に人気がありそうよねぇ」
「え、いえ、そんな事は・・・」
話し方もレストランでの彼では無く、ギクシャクした態度に変わっている。
――はぁ・・・またか。
「私、予定を思い出したからここで降ろしてくれないかしら?」
「え?は、はい」
止まった場所は漢江近くだったがこの時間ならタクシーもある、帰れなくはないだろう。
「あの、ユ先生・・・」
車から降りたウンスは少し屈むとニコリと笑顔を男性に向け。
「貴方、刃物を見てビビるのは後ろめたい事が沢山あるんじゃない?・・・だったらこれからも気を付けるのね」
――最近の女性は護身用に何かしら持っているのだから。
男性はギョッとした顔をしたが、無視しウンスはドアを閉め歩道を歩き出した。少しすると車は発進しウンスはちらりと後ろを振り返る。
「・・・・何で、何時もこんななの?」
ガックリと肩を落としたが、ふとバッグの中をちらりと覗いた。
「ある意味助かったともいうわね・・・はぁ、あの人大丈夫かしら?」
また怪我したとか?
それとも、何かお小言を私に言っているのかしら?
「・・・有り得そう」
ウンスはキョロキョロと周囲を見回したが、顔に当たる雪に我に返った。
―先程よりも降る雪が多くなってきている。
早くタクシーを探さないと!
駅に向かい早足でウンスは歩き始めたのだった――。
「・・・・・」
ヨンは雪が積もった外を眺めていたが、何故かふと懐にしまった髪飾りに手をあてた。
こんなに降った次の日には確実会えた筈だった、とそればかりが頭に過ぎってしまう。
――あぁ、また後ろ向きになっているか?
そもそもこんな場所にウンスが現れても大変な目に合わせてしまうだけだと、自分がよくわかっているだろうと息を吐き、村人達が集まっている場所へと近付いた。
昨日言った通りに重臣とその子息は、村人達に禄を手渡している。
貰った村人達は喜び重臣達に頭を下げ感謝を述べており、傍から見れば良い光景なのかもしれない。
――あれがキム家の私財だとしたらな。
「どうせ国庫から出したクセに偉そうに」
「隊長・・・」
ボソリと吐いたヨンの愚痴にチュンソクが困った顔で声を掛けた。
「・・・ふん、滞在中にずっと妓生がいるのも気に食わない。あの若造は何しに来ているのだ?」
自分達より若いが正妻も既にいるという。
それを聞いた隊士達は、途端に子息に向ける視線が刺々しいものに変わっていた。
「あの若造、妖魔などと言いやがって・・・」
自分は幾ら言われても構わないが、ウンスの事だけは絶対に許さない。
国の財を撒き散らし村人達から頭を下げられ、満足気にしている重臣親子を静かに睨み続けていた。
⑷に続く
△△△△△△
ウンスを守ったのは道具でしたが、
はたして偶然なのか〜?(ー~ー)''
ヨン氏の苦労はあちこちで続くヨ。
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