ぼやりと水面の上に明かりが浮かんでいる。
今日は波も無い穏やかな日ゆえ波に日差しでも当たっているのだろうか?
ヨンはそう思い足を進め短く刈られた草原を歩きだした。
ヨンがこの地に来るまでは小さな湖は鬱蒼とした林と好き放題に伸びた雑草で人が近付けない程になっていた。
鎌を持ち少しづつ刈っていき、二日掛けて漸く湖が少しだけ見える様になるとそれ以上は刈る事を止め、釣りを始めていく。
鎌を持ち少しづつ刈っていき、二日掛けて漸く湖が少しだけ見える様になるとそれ以上は刈る事を止め、釣りを始めていく。
来た当初からここの湖の魚で充分だろうと考えていた。
日々生きるだけの食料だけで良い。
小さな藁葺き屋根で静かに過ごす。
しかし、ふと気付くと自分の視線は壁に掛けた鬼剣に向いていた。
退いた事に後悔は無い筈だ。
ただ昔ながらの癖でそうしているだけなのだ。
背を向け横になろうとして動きを止めた。
最近また眠れなくなっている。
悪夢を見たのだろうが、起きるとその記憶が曖昧になってしまい思い出せない。
だが、懐かしいという記憶はある。
「・・・やはり、メヒか?」
約束を守ると決めてここに来た。
会いに来たのか?
だが、夢の中でも会えていないんだ。
どうすればいい?
そう思うとまた足は湖に向いている。
微かに残る記憶を必死に思い出そうと釣りもせずジッと水面を見つめる。その繰り返しだった。
そんなある日。
机に置かれた物を見てヨンは後ろを向いた。
背後には何時もの様にテマンが静かに立っている。
「これは何だ?」
「チ、チャン侍医がくれた茶葉です」
「典医寺に行ったのか?」
「隊長が寝れてないって言ったら、それを・・・」
「余計な事を・・・」
確かに以前も寝不足の際に薬湯にもなると茶葉を貰ったが、恐らく同じ物をテマンに渡して来たのだ。
「近くにも医者はいるのだから、わざわざ侍医に言う必要はない」
「は、はい」
少し落ち込み気味になったテマンをチラリと見てヨンはその茶葉を手に取った。
ふと、
茶葉とは別に香る匂いに鼻の近くまで寄せると薬草の中に異様な匂いがするものがあった。
――何処で嗅いだ事があった筈・・・。
だが、思い出せずヨンはそれを懐に仕舞い再び外に出て行った――。
テマンはそんなヨンの後ろ姿を見ながら典医寺での事を思い出していた。
テマンが久しぶりに典医寺に行くとそこにはヨンの叔母のチェ尚宮が立っていた。
ヨンの最近の様子を伝えるとチェ尚宮は考え始めたが、わかったと言い去って行った。だが、去って行ったと言っても向かった先は診療所で慌ててテマンも後を付いていく。
中には当然の如くチャン侍医が患者を診ており、彼も入って来たチェ尚宮に驚いた顔をしていた。
「おい、若造」
診察台の上に寝ていたのは禁軍の一人だったが、呼ばれた若者はチェ尚宮を見て戸惑っている。
「たいした怪我じゃないだろう。付薬貰って役目に戻られよ」
「え、え?」
「早く行け」
小柄な女性なのに出す気迫はヨンと似たものがあり、禁軍の若者は慌てて診療所から出て行った。
「どうされたのですか?」
「チャン侍医、話がある」
チェ尚宮の低い声にチャン侍医の表情が変わっていき、理解したのとあまり関わりたくないという眼差しに直ぐに気付いたチェ尚宮だったが、
「兎に角、聞かれよ」
「はぁ」
ため息を吐きながらチャン侍医は持っていた治療道具を机に置いたのだった――。
話を聞いたウンスは口元に手を寄せ何やら考え込んでいる。
「・・・それは、別れた恋人がいたのなら当然そんな心境になるでしょうね」
「ですが、それとはまた別な何かがあるとチェ尚宮は言っております」
「それが、その・・・昔話って事?」
「・・・他の国でも似た話は聞いた事はありますし、『悲恋噺』、『言い伝え』等は探せば出てきます」
「・・・何が言いたいの?」
「チェ尚宮が仰るには、隊長が以前教えてくれた話があったが・・・
『だが、あの辺りに“天女伝説“の話など無かった。』
というのです」
チェ尚宮は数年前彼からその話を聞いた時違和感を感じたが、メヒとの大事な思い出だろうとそれ以上確認する事は無かった。
だが、確かにあの辺は平凡な田舎村でそんな摩訶不思議な話など聞いた事が無い。
はたしてメヒは何処からそんな話を見つけて来たのか?
チェ尚宮はずっと疑問に思っていたという・・・。
「・・・・はい?」
ウンスは首を傾げそのままチャン侍医を見つめてしまう。
それを外で聞いていた武閣氏達も、その言葉に顔を見合わせていた――。
⑥に続く
△△△△△△
話を先に言ったのは・・・👀?
仕事はやはり長々と伸びてしまうのだけど、それなりに落ち着いた時期ともいう。(ˊᗜˋ)
時間がある時はコツコツ書いてはいるので、あとは見直すだけなんだけどねぇ(⊃´▿` )⊃💦
🐈⬛ポチリとお願いします✨🐥
にほんブログ村
🦌🦅🦮🐧🦊🐈🐥~🎤🎶