あの場所でもう一度◇(16) | ー夢星石ーシンイ二次創作

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あの場所でもう一度◇(16)
【崔医師と李医師の会話】



「自然にその流れに持ち込む為にはどうしようか?」


呟きか?
それとも自分に質問しただけなのか?

突然のヨンの発言に口に含んだ酒を吹きそうになり、イ医師は口を咄嗟に抑えた。

漢江近くにある店は年々お洒落な装いに変貌しているが、それでも長年営業している大衆食堂等もありそういう場所は旅行客より地元民の集まり場所になっていた。暑気払いだ、納涼会だとの項目で満席の店内は冷房を効かせても汗ばむ湿度になっている。
常ならば勤務終わりのイ医師やヨンは衣服を崩す事なくそのままの姿で食べているが、
店内に男性しかいないのを二人はわかっている様で今日に限っては釦(ボタン)を外し腕捲くりまでした格好で寛ぎ酒を嗜(たしな)んでいた。

しかし、イ医師とヨンは久しぶりに二人だけの夕飯となりこの店に立ち寄ったのだが、はたして二人で良かったのだろうか?とイ医師は心配し始めてもいる。
彼が「飯、食いに行きませんか?」と声を掛けて来た時に何か違和感を感じてはいたが、久しぶりだし良いかと了承した。

だが、待ち合わせをすればキム医師もウンスもいない。

「・・・・・」

イ医師は細い目を更に細くし、最早見えていないのではないか?という状態に閉じてしまった。

それでも夕飯は進み普段の仕事の話や必ず聞かされるウンスの事、それをそうですかと軽く頷き半分は聞き流していたのだが彼はそんな言葉を唐突に入れて来たのだ。
周囲からは新しく出来た店の話や、恋人、配偶者の愚痴、開発途中のマンションの物価価格など喧喧囂囂と変わる話題で耳が痛くなると感じでいる矢先にヨンの言葉。

思わず口を抑え、は?と片眉を上げ見つめてしまった。

あー、さっき後ろから誰かの女房が色っぽいとか何とか話が聞こえていたからな。
彼も感化されたか?

「・・・聞いてます?」
「あ、やっぱり俺に聞いていたのか」
「イ先生以外誰がいるんです?」
「・・・」

――何を聞いて来るんだこの人は。

イ医師は水を1口飲み、そうですねと言う。

「横に座って何気に肩でも抱いて囁やけば良いんじゃないですか?」
「へぇ、イ先生てそうするタイプなんですね」
「・・・違います、例えです。そもそも彼女だってそうなれば空気読む――」

だが、そこまで言ってイ医師は口を閉じた。
ヨンの眼差しが一瞬冷たくなったからだ。

女性も何も相手はウンスだった。

あの人が空気を読む・・・かどうかは怪しいし、ちらりと匂わせた所で反応するかもわからない。
だが、自分がそれを彼に言うとまたおかしな考えになり始めるだろう。

――あー、そう。

そこまで考えイ医師は、ヨンに視線を向けた。

「・・・だから俺に聞いて来たんですか?知らないですよ、彼女の事は」
「そうですか?」
「当たり前でしょう?同期ですが、恋人同士になった事なんて1度も無いんですから」
「でも、何でも理解し合っている様に見えますが?」
「それはあくまで同僚の範囲です。恋愛感情はまた違います」

この間の件ですんなりウンスが従った事をまだ根に持っているのだろう、
それが癪に障るのか自分がスムーズに振る舞えない事が悔しいのだとヨンの態度でわかった。


「・・・はぁ、そもそもチェ先生だって彼女がいたじゃないですか?」

それにモデルなどしていたのだから、嘸(さぞ)かし華やかな経験だってしていただろう。
綺麗だが随分と攻撃的な女性だった元恋人もいたくせに。

口には出さなかったが、イ医師が目でそう言うとヨンは目を逸らし口篭った。あの恋人とは彼から誘った訳では無くモデル時代の若さとお互いの軽い気持ちでの関係だったと彼は言う。

「昔は互いの利益を考えていたのかもしれない」

だが今は違う。
本当に好きなのだと。
昔とは全く違う感情なのだと。
それに合わせて自分には男としての欲がある。


「ユ先生は言われたら素直に受け取る人ですよ」
「・・・まあ、それは」

イ医師の言葉にヨンはそれも確かに、と頷いた。

好きと言えば頬を染めるのだから、言われても嫌にはなっていないとは思う。
恋人なのだから、キスの先にあるものだって意識してくれるだろう。だが、そんな考えは自分のエゴしかない訳で、では彼女の中で自分はどの範囲で許されているのだろうかと考え出すと、
イ氏やキム氏と同列かもしれない、
そんな不安さえ湧いていた。

そしてイ医師の話を聞いて感じた事は、やはり自分も彼女の事を彼らと同じ範囲でしかわかっていなかったという事だった。
それに自ら昔の過去話を語る方ではないウンスを見ていたイ医師達と自分。
ウンスはその違いをちゃんと区別しているのだろうか?


腹を満たした2人が店を出る頃にはあちこち飲食店に入る客や漢江公園に向かう恋人達などが増えていた。
今は暑さも薄まり少し肌寒くなっているが、公園のサイクリングロードを散歩するには丁度良いかもしれない。

時々夜道をウンスと歩き彼女の横顔を盗み見ていた。

色素が薄い肌に細く程良い高さに通った鼻、気難しい性格だと思った薄い唇が動けば想像とは違う様に大きく、そして笑顔になる口元は年相応よりも若く見える程だった。怒った、険しい顔しか見ていなかったのに彼女の笑顔を見たら直ぐに目を奪われ、まだ離れたくないなと勝手に手が動いていたのだ。

他の誰でもなくウンスの恋人は自分なのだから、
現状に満足するべきなのに――。




手を繋ぎ歩くカップルの後ろ姿をぼんやり眺めていたヨンを横目でイ医師は見る。

何となくだが、こうなる事は予想出来ていた。

ウンスがけして性に対して拒否感を持っている訳ではない。
トラウマを今だ引き摺っている訳でも無い。
ただ、今の彼女の優先順位が仕事なだけだ。
故に彼まで意識が回らない。
ユウンスとは意外と単純な人で、
少しの強引さで引っ張らないと気付きもしない性格だった。


「・・・」


まだヨンは薄暗い街並みを歩く通行人に視線を向け黄昏れている。
完璧な男だと思ったが、彼もまた意外と単純な人だとわかった。

何かアドバイスを言う、

・・・など、するつもりは更々無く。


「まあ、頑張って」



ヨンが何故自分を夕飯に誘ったのか意味を理解しているイ医師は、

それに対してのお返しだと口角を僅かに上げたのだった――。









(17)に続く
△△△△△△△

こちらのイ医師はジグザグよりも優しくない。
どこかの誰かに似ているなぁー。
今回は少し2人男の話。
何気ない会話でしたからアメ限でも良かったんですけどネ。


少し暗い話に進みそうになり、軌道修正していました(^_^;)
暗い方にいくとまた長くなりそうで・・・。



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今度はアメリカツアー❣️