※少し原作やドラマに被る部分がありますが、あくまでもこの話は“蝶が舞う~の中のヨン”話ですので、そのつもりで読んで頂けるとありがたいです。
見張りが薄い場所を探し、屋敷に忍び込んだヨンは走り出す天人を見つけ気配無く追い掛けた。
何処に行く?檻に閉じ込められた小動物の様に走る天人の行動を知らずか、徳成府院君キチョルはゆったりと庭先を見ている。
だが逃がさないと、結局は屋敷内からは出られないという余裕ある横顔を一瞥し、ヨンは舌打ちをしてしまう。
「きゃっ」
「?!」
しまった、と思う前に咄嗟に手を伸ばした。
急いで隠れると、天人はあちこち顔を動かしていたが、それでも焦る様に再びその場を離れて行く。木の影からそれを見ていたヨンだったが、自分の手に視線を移した。
――やはりあの天人に触れると、
身体が、
いや胸がざわめき出す。
「・・・・・」
ヨンはその手を頬に寄せ、次には自分の瞼にも触れていく。
だが、それは自分で触っても何かを思い出せる訳でも無く、直ぐにヨンは顔を上げ横にある塀を越え屋敷を後にした。
坤成殿では無く康安殿に案内されキチョルは眉を顰めると、前を歩くチェ尚宮に声を掛けたが何も返って来ない。徐々に細眉を上げその背中に再び声を出そうとしたが、チェ尚宮は康安殿の中へと静かに促した。
周りを見渡しながらウンスも同じく中へと入って行くと、康安殿内には王様が二人を出迎えていた――。
「王様尋問をどうぞ」
「・・・尋問?」
徳成府院君キチョルは入って来たチェヨンの言葉に驚き、忙しなくチェヨンと王様に視線を移している。ヨンはそれを一瞥し、キチョルの横に立つウンスを見ると彼女の大きく丸い目が不思議そうに此方を見ており視線が合った。
――・・・どうか、上手く。
そう願いながらヨンは再び口を開け声を出した。
武閣氏に連れ出された天人は、王妃の部屋から出て此方に歩いて来る。一瞬だけヨンを見たがそのまま横を通り過ぎ、直ぐに振り返った。
身体から怒りを放ち、冷たい眼差しのまま声を荒らげて来るのをヨンは黙ったまま受け止める。
それでこの方の気が晴れるのなら。
自分に怒りをぶつけても、再び顔を見てくれるならそれで良い。
――なのに。
「貴方みたいな男に誘拐されるなんて・・・!」
吐き捨てる様に言うと、嫌悪感を表し天人は目を逸らしてしまった。
ヨンは徐々に天人との距離が離れていくのも感じていた。
元々何かあった訳では無い、ただ何時か天界に帰す時までお守りしようとこの方との約束を果たさなければと思っただけで、それが自分の役目でもある筈だ。
しかし、それとは別に
心臓が痛い、
苦しい、
ずっと胸焼けの様に
吐き出せないものが何かもわからない。
自分の頬にこの方が触れた時に軽くなった理由と、ずっと抱えている落ち着かない気持ちを知りたい。
この方の近くにいればきっとわかると思った。
――あぁ、それなのに。
部屋からチャン侍医が天人を迎えると、迷わずその胸に飛び込んで泣き出した。
幼子の様に、親に会いたい、ここにはいたくないと、悲しみの限り叫び侍医の胸に顔を付けわんわんと泣く。チャン侍医は静かな眼差しをヨンに向けていたが、抱き着いている天人の肩を優しく抱きながら部屋内へと促し入って行った。
――あれが自分に対する本音だったのだ。
だが、自分には言いたくも無かった、それだけの事。
ヨンは唇を噛み、視線を落とすと兵舎に戻って行った――。
「チャン先生」
「はい」
診療所を横切る度、二人が呼び合う声が聞こえる。
典医寺内は軽やかな声と今までにない賑やかな雰囲気に、他の薬員達もにこやかに二人の様子を眺めている様だった。
「・・・・・」
ヨンは顔を直ぐに逸らせ、その場を離れた。
やはりあの方は自分には笑わない、近付かない、声も掛けて来ない。
「―・・・私も行きたいわ、ねぇチャン先生?」
「そうですね」
天人の手はチャン侍医の袖に触れ軽く叩いている。
そんな力などチャン侍医には羽根が触れた位なのだろう、何時もの様に静かに微笑み見下ろしていた。
江華島で見たあの笑顔は、今はチャン侍医に向いており二人の空気に他の隊士達も余計な口を挟む者はいなかった。
「すき・・・?」
「慕い慕われ・・・まぁ、そういう意味合い?気が合うもの」
「・・・気が合う?・・・そこもまた違う気がしますが?」
二人の会話をヨンは薬草園を通り過ぎる際に聞いてしまい、診療所に寄った自分を後悔してしまう。
二人がそんな会話をしているなど知らなかったのだ。
『慕い慕われ・・・そういう意味合い・・――』
ヨンはふと顔を上げ、眩しい位に星が浮かぶ夜空を見た。
何故だろう?それはそうだと思うのに、自分の中身は空洞の様に空っぽになっていく。
キチョルの屋敷で自分が言った言葉など、天人には誤魔化しだと解ったのだろう。
自分はただ無事この方を天界に帰す為に、一緒に行動をしていただけだった。
邪魔さえなければ、向かえる筈だと。
――だが、今はまだ・・・。
――何時から自分の判断は間違っていたのだろう?
「――・・・もう、笑いませんか?」
ヨンの問いに天人はちらりと後ろを振り返り、
ヨンの瞳を一瞬見たが、
笑う事も怒る事も無く前を向いて歩いて行った。
――戻れるなら。
・・・戻れるなら?
何処まで自分は戻りたいのだ。
江華島に向かう前?
あの天人が顔を撫でた時か?
腹を刺され、これで償えただろうかと思った時か?
はたまた、天界から連れて来てしまった時か?
――俺は、何処に行きたいのだろうか。
「では、医仙は私と共に戻りますので」
「ああ」
チャン侍医と話す間も天人は、侍医が持つ医療道具を確認し顔をそのまま見上げている。
「では行きましょう」
「ええ」
ヨンは仲睦まじく肩を並べ歩き去って行く二人の背中を見つめていたが、
通路を曲がり姿が消えたのを確認すると、ぐるりと建物を警備している兵士や武閣氏の配置を指示し顔を後ろに向けた。
「康安殿に向かうぞ」
「は」
後ろのチュンソクが声を上げ、隊士達もピシリと姿勢を正す。・・・が、隊の端にいたテマンが何故かそわそわと落ち着き無く動いている。
「何だ?」
「・・・何でもないです」
サッと隠れる様に消えたテマンに眉を顰めたが、何も言わないのなら聞く必要は無い事なのだろう。
ヨンはそれ以上問わず、康安澱へと向かって行ったのだった――。
⑫に続く
△△△△△△
次は過去に行きます。
交互で申し訳ないっ😂✨💦
※⑤に載っていました序奏は消えております。
読み逃した、という方は後程の展開ですので読んでなくても大丈夫だと思います・・・うん。🙂
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