蝶が舞う頃に⑥
「・・・貴方大丈夫?」
浅い息を吐いていたヨンに女人が声を掛けて来た。
ヨンは咄嗟に手に握っていた剣を正面に向け構える。気を付けていた筈なのに、迂闊にも一瞬だけ意識を失いかけてしまった。
まだ若い娘だがこの女が安全という保証も無いと、ヨンは丹田に力を込め身体から殺気を放った。
しかし――。
「こんな所じゃ救急車も呼べないし・・・しかも、私も携帯忘れちゃって・・・どうしようかしら?」
誰を呼ぶだと?それも敵だとしたら、この状況は危ない。
――離れなければ・・・。
ヨンは震える手を砂利に付け立ち上がろうとした。
だが、太腿から走った痛みに膝から崩れ落ち身体を凭れていた木にぶつけると、ずるずると地面に倒れてしまった。
「ちょっと!足まで怪我しているんでしょう?動かない方がいいわ!」
「平気だ、煙幕にやられただけだ、直ぐに歩ける・・・」
あぁ、くそ、片足が痛い。
骨は折れていないだろうが、屋根から落ちた時に強く打ち付けたのか太腿に重い痛みが走る。
・・・師匠は俺を探しているだろうか?
俺を見捨てたりはしないだろうか?
はぁと息を吐くと、長い時間何も口に入れていなかったからか、喉も渇いて苦しい。ヨンは軽く咳をし、喉の渇きを逃がそうとした。
「・・・何か飲む?」
「・・・水」
「ちょっと待って」
ガサゴソと何かを取り出した女人は、倒れているヨンの口元に硬い何かを当てて来た。だが警戒し口を開けなかったヨンに、女人は優しく大丈夫よと言う。
「水じゃなくてお茶だけど、入れたばかりでまだ冷たいから」
「・・・・・」
何故かヨンはその声に従い口を開けた。
薄く唇を開けていくと、冷たい茶が口の中に少しずつ流れ込んで来る。ヨンは無意識に顔を上げ、注がれる茶を喉を鳴らし飲み干していった。
喉と腹の中の苦しさが薄まり、再びはぁと息を吐き出したヨンは丹田に再び力を込めたが。
「・・・っい!」
ビキビキと脇腹に痛みが走り、小さく呻く。
腰も打ったのか?・・・何て事だ。
砂利の上で身体を楽な体勢になろうとしたが、何故か女人が手で止めて来た。
「あまりここで動かない方がいいわ。身体中に土や泥が付いてしまうわよ?・・・えー、どうすれば・・・」
ふと、止まった女人はそうだと声を上げ、
「歩いている途中で小屋を見つけたから、そこまで行きましょう!誰かを呼べるかもしれないし。・・・ほら、掴まって」
そう言った女人がヨンの腕を掴み、自分の肩に掛け身体を起こそうとしている。触れただけで細くこんな身体では自分を支えられないともわかる。
――自分の懐に入られて、今刃を向けられたら終わりだろう。
そう思うのに、違うと頭の中で否定もする。そして自分はその女人に従っている。
――・・・あぁ、何故だ?
それでも。
「・・・ッ、いってぇ・・・」
ヨンは歯を食い縛り残っている体力を使い足に力を入れると、
女人の肩を借りながらゆっくりと歩き出した――。
⑦に続く
▽▽▽▽▽▽▽
ヨンの過去からスタート✨
進んでいくと、追加話の様子の意味もわかってくるかもしれませねぇᐠ( ᐢ ᵕ ᐢ )ᐟ
既に読んだ事がある方は少し加筆修正されておりますので、その辺も楽しんで頂けたら嬉しいです。
※⑤の追加話は深夜に足されます☆
(④は消えました)
🐈ポチリとお願いします🐤
にほんブログ村
🦌🦅🦮🐧🐈🦊🐥~🎤
もうすぐ来日!
- ̗̀ 🌷𝓌ℯ𝓁𝒸ℴ𝓂ℯ🌷 ̖́-
