エントランスホールで女神は微笑む⑥
チャンビンはスマホの着信を見たが、知らない番号にすかさずスマホの録音機能を操作した。
「・・・はい」
『あ、こんにちはぁー!・・・チャンビンさんの電話で間違いないですか?あの、今、お時間大丈夫ですかぁー?』
――・・・何だ?誰だ?
聞いた事も無い女性の声に何かの勧誘か?と険しい顔になるが。
『実は、私はユウンスと同じ病院に勤めているシムと申します。少しユ先生の事でお話がありましてぇ・・・』
「い、ユさんですか?」
と、いう事は彼女も医師なのか?
猫なで声の音声にチャンビンは少しだけスマホを耳から離した。
彼女の話では、実は医仙はチェヨンに話せていない事があるという。
「話していない事、ですか?」
『うーん、まぁ、ユ先生が前から考えていた事で、彼が恋人になるのなら知っておいた方が良いでしょう?』
それはそうだ。だが、医仙が言えないという事は・・・。
「・・・それは、ユさんから聞いた方が良い事なのでは?」
本人が言い難い事を他人が言うのはどうだろう?そう聞こうとしたが。
『いいから。ユ先生が彼を意識しているのは良いと思うけど、それでユ先生が気を使っていたら少し違くないかしら?』
――お互いをちゃんと知ってこその恋人よね?
猫なで声が急に大人びいた声になり、チャンビンは驚愕で固まってしまった。
『今日は時間、あります?』
今から?!チャンビンは慌てて時計を見て、まだ20時過ぎだと知るとスマホを耳に付けた。
「大丈夫ですが・・・」
『病院近くのカフェにいますので、お願いします』
「え?」
しかし、プツリと通話は切れ。
――・・・以前もあったぞ、こんな事。
何故自分の周りには強引な者達しかいないのか?
いや、違う。隊長は昔からあのままだった。
ではこの女性は?現代特有の自己中心型だろうか?
「・・・・・」
今から一人で話を聞きに行くのか?
・・・嫌だ。
「何故こんな事ばかり・・・」
隊長に再会したのが運の尽きだったのだろうか?
チャンビンは白くなっていく顔に手を付けながらのっそりと椅子から立ち上がった――。
「・・・まずいな、怒られるか?」
病院の近くのカフェにチャンビンが着いた頃には既に50分は過ぎており、内心ビクビクしながら店内に入った。
ウンスはまだ良い、彼女は昔の事もあり抵抗なく話せる気がする。しかし、チャンビンとしては社会人になりたての頃交際していた女性に痛い目にあった為、暫く付き合いたいと思わなくなっていた。
「そもそもが、私は何時でも研究なんだよな・・・ん?あの人か?」
カフェ内はカップルや一人で時間を過ごしている者達がおり、店内の奥に落ち着いた服装をした女性が一人顔を下げスマホを見ている。
ウンスはどちらかというと、髪色とスタイルとで確実に目が行くタイプだったが彼女も濃いブラウンの長い髪は歳相応のお洒落をわかっている様でもあった。
「・・・あの、シムさんですか?」
テーブルに近付きそう声を掛け彼女が顔を上げると、チャンビンは呆然とし目を大きく広げてしまった。
――まさか。
「・・・・・トギ?」
「はい?」
「・・・トギ、でしょう?」
そこにいたのは現代の服装を着たトギだった。
チャンビンは硬直していたが、ゆっくりとシムの顔から服を見て再び顔へと戻していく。
だが。
「“トギ”という名前ではありませんけど?私はシムイェナです」
トギ?誰?シムは片眉を上げチャンビンを不審げに見つめて来た。
「・・・・あぁ、そう、ですか」
ふらりと身体が傾き、チャンビンは慌ててテーブルに手を付き支えると、座っているシムをまじまじと見る。
――・・・トギまでいたのか。
足に力が入らず一瞬へたり込んでしまいそうになったチャンビンはよろよろとシムの正面の椅子に座ったが、表情は変わらず唖然としておりそれを見たシムは眉を顰めた。
・・・チェヨン氏も変わった人ではあるけど、この人も変な人よね。
あまりチェヨン氏やこういうタイプが好きでは無いシムは、ウンスを応援してはいるが自分の立場だったら確実にチェヨン氏に怒鳴るだろうと考えていた。まず許可無く相談所を退会した段階で絶対に許さないし彼を訴える、その友人も然りだ。
なので、ウンスがしょうがないとチェヨン氏を許したり、突然怪我をした時は彼が傍にいたらウンスが危ないのではないか?と心配にもなった。
だが、あれから甲斐甲斐しく毎日通って来るチェヨン氏を見て、二人が良いならとある意味妥協したのだ。
ウンスの昔からの強かではあるが、自分の夢を持ち物事をはっきり言う性格が気に入っていた。それなのに、最近ではすっかり大人しくなり、ましてやチェヨン氏にクリニックの事を言うのを躊躇い始めている。
・・・彼女はそんな女性になりたかったのだろうか?
いや、違う。
そんな事をしてクリニックを諦める等したら、それこそ一生後悔していくに違い無い。
そして、このチャンビンという男性。
ウンスから彼はセキュリティ会社の職員であり、あの製薬会社や一流企業のセキュリティシステム等を制作、管理していると聞いていた。今流行りのIT企業に勤める男性と製薬会社の御曹司、見事にドラマみたいな組み合わせだと感嘆してしまうが自分の性格上、裕福層には少なからず嫌悪感を抱いているのでおそらくその空気が合わないのだろうと思っている。
とりあえずは今二人がいない時がチャンスだと、チェヨン氏の相棒が彼だとしたら知らせておくべきだろう。
シムは、小さく咳をした。
「話はユ先生の事です」
ハッと我に返ったチャンビンはシムを見る。
「ユ先生はチェヨンさんと会う前から自分の夢を持っているんです。ご存知でしたか?」
「・・・え?夢?・・・いいえ」
自分はウンスの夢等は知らない。
確かに隊長に言われ彼女を少し調べたが、相談所や病院の事だけだった。
隊長は夫婦になったのだから、聞いていたかもしれないが自分はその前に・・・。
今そんな過去話を振り返るつもりは無いが、此方でウンスと会っても既にチェヨンがいるのだから、ウンスに聞く事も無いと決めていたのだ。
「ユ先生、チェヨンさんにも言っていないんですよね」
そう言ったシムの眼差しは少し冷たいものに変わり、
ウンスが数年間夢見ているクリニックを建て独立する話を始めたのだった――。
⑦に続く
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