※二人の出会いが少し違いますのでわからない方は前話の“君に降る華”を先にお読みする事をおすすめ致します
君に降る華◆⑸
兵舎に向かう通路でヨンは足を止め後ろを振り返った。
キチョルとその同行者等は既に康安殿を出て宮殿から去っている。傍にいた者達からも禍々しい気を感じたのだからおそらく同類なのだろう。
それに――。
あの男は、宣恵亭の話など一つも出さなかった。
遺体を調べた限り、やはり生きたままその場で焼け死んだという。逃げ回った痕跡ともがき苦しみその際剥がれた爪等も落ちていた報告がヨンにも届いていた。
なのに、あの男の中ではもう興味の無い事なのだろうか。惨たらしく阿鼻叫喚の中、亡くなっていった重臣達はただの玩具に過ぎないのか?此方を見た時の次の玩具を探す様な純粋な瞳に、ヨンは余計に苛立ちが増しただけだった。
『あの目は余計に興味を湧かせた様にも見えた』
そう言い戸惑う王様と、何故ウンスを、天人を隠すのかと険しい眼差しを向けて来るチョイルシン。
――当たり前だ。
ウンスは俺のものなのだ。
――・・・何なのか、やはり変わらないのか。
自分は新しい王に何を期待し、元まで行ったのだろうか?
「・・・あぁ、元々してなどいなかったか」
何故先の事を考える様になったのか?
当然ウンスがこの地に来たからだ。
あんまりだと、飽きられ帰られては俺が困るからだ。
必ず守るとウンスに言ったのに・・・。
「誰だ?誰が言いふらしてやがる?」
部隊の中の誰かなのか?
チャン侍医がそんな治療を出来ると鼻から思っていないあの男の口振りは、
別な誰かがそこにいたのだと、
そこを突こうとするそんな魂胆しか見えなかった――。
ヨンは急いで典医寺に帰りウンスの部屋に入ると、ウンスは何故か机に座り腕を組んで考えている様子だった。
「イムジャ?」
難しい顔をしているウンスにヨンが声を掛けると、は、と顔を上げ見て来たが、此方を見て驚いている様にも見え、ヨンは何かあったのか?と直ぐに周りを見渡すが異常は無く、部屋の外にいた武閣氏からも報告は無い。
「イムジャ、具合が悪いのか?」
「ヨンさんて、“崔瑩”?」
「ん?」
ウンスの説明によると、その名前の将軍がいたらしい。しかも、この高麗の時代だという。
だが、その説明にヨンも眉を顰めるだけだった。
「・・・それが俺かは知らん。それに自分が将軍などなれる訳がない」
なりたいとも思っていないのだから。
ヨンの言葉を聞き、いやでもとウンスは悩んでしまったが、そのうちに現れる別な男ではないのか?
ヨンが再びそう言うと、
「・・・でも、高麗の王様の傍にいるのだから将来はわからないじゃない?」
きっと貴方の事なのよ、とたたみ掛けて来る。
ふとヨンは微かに疑問を抱きウンスをちらりと見た。
全く政に興味が無かったヨンとしては、今の役目を終わらせたら隊長の座をチュンソクに渡し、何処かに小さな家でも建てようと考えていた。
そこには、何時か来るであろうウンスの分の部屋も用意し、田畑を耕し、漁もしながら二人で慎ましく暮らす・・・その望みを抱き、気長に待つつもりだった。
――だが、今目の前にはウンスがいる。
「・・・その将軍とやらは名将なのだろうか?」
「えぇ、とても立派な将軍だったらしいわ。人望も功績も凄かった、語り継がれるには相応しい人よね」
「イムジャはその男をどう思う?」
「私も小さい頃に学んでいたし、尊敬する一人よ。・・・?」
――今、何故チェヨンは聞いたのか?
目を合わせるとヨンはうんと頷き、ニヤリと満足そうに笑っている。
「イムジャが言うのなら」
――・・・何が?
彼の中で何かを納得した様だが、ウンスには全くわからない。
そして、確かに私には彼があの大将軍崔瑩にも見えない。
・・・やはり、人違いか?いやでも・・・。
あの肖像画を思い出し、ウンスもまた混乱したのだった――。
⑹に続く
▽▽▽▽▽▽▽
・・・やる気の無いヨンの返答に核心がないウンス。
(・_・)・・・しかし、ヨンの中では?
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