⑤=魔術師 | ー常永久ーシンイ二次創作

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
⑤=魔術師




「何か、変だと思いませんか?」


チャンはレストラン内でのウンスの様子がどうにも気になった。ヨンがこの間会った時は警戒感を身体全体から感じる程だったというのに、今日は機嫌良くチャンに微笑んでいたのだ。

チャンを褒め、可愛らしく微笑んで来たウンスに思わずドキリとなったが、
近くから殺気にも似た圧を感じチャン侍医は返事が出来ずにいた。


「何故、侍医が褒められるのだ」

自分の時は声を上げられ、逃げられてしまったというのに、
今日のウンスは殊更機嫌が良く終始笑顔だった。


だが。


「・・・確かに」
「・・・まだ隊長を疑っているのかもしれませんね」

「・・・・・」



ウンスとチャンはその後食事をしながら少しの会話をし、ウンスをタクシーに乗せそのまま彼女の自宅に向かわせた。

「え、いえ、タクシー代迄は・・・」
「いいえ、私がユさんをお呼びしたのですからそれはさせて下さい」

そう言い先に運転手に幾らか渡すとウンスが伝えた場所迄と言い、チャンはそのタクシーをビル前で見送り暫く去った車を見ていたが、後ろからの気を感じ近付くヨンに顔を向けたのだった。



ウンスの笑顔もあの仕草も外向けの顔だとヨンはわかっている。ずっとウンスと過ごしていたヨンには、ウンスが何時もと違うのは気付いていた。

それでも、ウンスがヨンに会いたいと言ってくれている。

何という幸せな事か。

ウンスが少しでも自分を見てくれるなら、その間ずっと想いを伝えていけば良い。

同じ世界に産まれ、ウンスがいる時に来れたのもその機会を逃すなと天の導きなのだ。


「しかし、チェヨンの素性を知るとは・・・調べたのでしょうか?」
「それはわからん」

チェヨンの事も自分が気付いてから調べただけで、まだ把握しきれていないのに、ウンスは彼を既に知っていたという事だろうか?
しかし、彼は海外に長くいてこの国にはあまり情報が無いと思っていたのだが。


「とはいえ、この地に何年か住めば何かしらは何処かで会っているのかもしれないですが・・・」

チャン侍医でさえ、ヨンと会いまだ1年も経っていない。


「兎に角、3日後だな」

ヨンはすっかりと慣れた手付きでスマホを操作していく。そんな姿を見ながらチャン侍医は長いため息を吐き出した。


――彼に再会したのもまた自分の運命なのかもしれないが。


・・・一日でこんなに何度もため息を吐く事等、最近は無かったかもしれないな。


ある意味、懐かしい疲れだと思いながら夜空を見上げたのだった――。






「やったじゃない、ユ先生!」

「これはチャンスよ、一気に前進出来るかもしれないわ!」


病院に出勤するなり、シムとハイタッチをし二人喜び合った。

シムが調べた通りチェヨンはあの製薬会社の御曹司だったのだ。

昨日自分の家に帰った後急いでシムに連絡をし、聞いたシムもまさかと驚いていた。
しかし、これはウンスの人生の中で一番の事件かもしれない。これを機に自分の生活が、人生が一変するかもしれないからだ。

そこでふとウンスは考えた。

「とりあえず、今迄のやり方は止めようと思う」

「と、いうと?」

「要は自立する女というのが、苦手な人もいるって事よ。お金持ちの男性なら尚更近くに寄り添う慎ましやかな女性を望んでいるのでしょう?」

ウンスははっきり物事を言うタイプで、それが魅力だと思っていたが男性の好みに多少ズレがある事がわかって来た。

昨日の男性はよくわからない反応をしていたが、嫌な空気にはなっていなかった
・・・と思う。

「私もそこ迄の男性なんて知らないから何とも言えないけど・・・まぁ、そうよね」

とりあえず、今迄のウンスのやり方では駄目だとはわかっている。

自分も同じで、理数系女子の癖か性格か、理にかなっていないとそこばかりが気になり、つい口に出してしまうのだ。相手を思いやる気持ちが無いと言われた事もある。何が違う?何が間違っている?と疑問から入ってしまう癖も医者になり出来てしまった。


「暫くは大人しい女性でいきます!」
「おお!」

ウンスの断言にシムはパチパチと拍手をしていると、
廊下を通り過ぎた若い女性スタッフ達が二人を見てくすりと笑って行った。

食堂でウンスを嘲笑している彼女達だとウンスはむっとなったが、この間迄の悔しさは湧いて来ない。


「ふん、見ていなさい。ウンスさんの本気を見せてあげるから!」






――と、言いつつも、

あのチェヨンと会うのは夕方の時間帯にして貰った。


あのチャンとは違う独特の空気と世界観を持っていそうで、夜に会うのは今はまだウンスとしては遠慮したかったからだ。



ソウル市内でも人気のカフェは、夕方の時間帯のせいか学生が割合多かったが、昼夕夜とお客のバリエーションが変わっていくのも人気がある証拠なのだと思っている。

店内の大きな張り出し窓の傍に心地良さそうな席を見つけたウンスはそこに座り、頼んだコーヒーを待ちながらも手鏡で髪や化粧を見直していた。

休日だった為に午前中のうちに美容院に行けた事はラッキーだったと、染め直した赤茶色の髪を見ていると店の入口にスーツ姿の男性が立っていて店内を見渡している。
やはり、スタイルが良い彼は注目を浴びてしまうのか店内のお客がチェヨンに視線を注いでいるが、当の本人は気にする訳でも無く窓側に座っているウンスを見つけると大股で近付いて来た。


・・・近付くとやはり、何故か威圧感を感じてしまうのは何なのか?

ウンスはごくりと唾を飲み込み、一つ咳をしてからヨンを見た。


――さぁて、頑張らないと。


「こんにちは、チェヨンさん」

「・・・イムジャ」

ニコリと笑うウンスにチェヨンは再びあの呼び方を向けて来る。う、と一瞬詰まってしまったが、負けじと更に微笑む。


「チェヨンさんに謝りたくて、チャンさんにお願いしました」

「違います、謝るべきは俺の方です。イムジャを怖がらせるつもりはありませんでした・・・」


――なるほど、少しは彼も罪悪感はあったらしい。

眉を下げ謝罪して来るヨンにウンスは、ふむと納得をした。

「結婚相談所もチャンさんから相談所のお金も返して頂きましたから、それはもう気にしていません」

ウンスの言葉にヨンはホッと安堵の息を吐き、その姿を見たウンスは再びニコリと笑う。

「チェヨンさんも退会したのですよね?」

「俺は・・・イムジャを探す為に入っただけで、それ以外に意味はありません」


――すっごい、意味が怖いのだけど? 

ウンスは、目を丸くしてしまったが、この人は少し変わっているのだと言い聞かせ落ち着かせる。


ふぅと、一つ息を吐き、


「そうですか。
・・・チェヨンさんの様な方に気に掛けて頂けるなんて、とても嬉しいですわ」

優しく微笑むウンスの顔を見て、やはり違和感を感じながらも近くでウンスの笑顔を受けた喜びが勝ってしまいヨンは、はい、と大きく頷く。


「俺はイムジャをずっと探していたんです!」

告白ともプロポーズとも言えるヨンの言葉に店内の客達も驚き、二人の男女の行方に注目しており、知らないのは本人達だけだった。


「・・・ですが、私はまだチェヨンさんの事を知りませんので・・・」

「・・・そうですね。では、徐々にで構いません、俺を知って頂きたい」


・・・本当にこの人は、私が好きなのだわ。


人生で男性から追い掛けられた事等無かったウンスに、まさかこんな展開が来るとはと改めて驚いてしまう。


――・・・でも、いくらイケメンだからといって、ここで焦ったら意味が無いわね。

「・・・でも、夜に会うのはまだ・・・」

「わかりました、この時間帯で構いません。俺はイムジャと会えるなら何時でも構わないです」

「そうですか。・・・それでは、まずは会ってお互いを知る事から始めませんか?」


ウンスは、可愛らしく首を傾げどうですか?と微笑むと、ヨンは少しウンスを見て惚けていたが、はいっ、と再び大きく頷きウンスの手を握ろうとして来た。
しかし、瞬時にウンスは手を避け自分の後ろに隠してしまう。

この間の車の中でも、どうにもこのチェヨンは何かと触ろうとして来るのがわかった。


――そこ迄はさせないわ。 


隠された手を掴めなかったヨンは浮いたままの自分の手と、ニコリと笑いながらも隠したウンスの顔を見て一瞬悲しそうな表情になったが、手を下ろしわかりました、と言葉を出した。


「イムジャに信じて貰う迄、俺は伝えます」


「ええ、徐々に、お願い致します」



おおっ!!



何故か、


店内で一斉に歓声が上がったのだった――。





⑥に続く
☆☆☆☆☆☆☆☆☆

1、魔術師
正位置=想像・自信・技術・才能
逆位置=混迷・未熟・消極的・自信喪失



二人の戦いが・・・♥(何の?)笑














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