あの場所でもう一度◇(12)②
「とりあえず街中に行くみたい」
「わかりました」
だが、そう言いながらヨンはジッと助手席のウンスを見ている。電話を切ったウンスはその視線に気付き、何?と見返したが、
「・・・いや」
ヨンはフイと視線を逸らし、エンジンを掛け車を動かし始めた。
・・・まだ怒っているのかしら?
イ医師の実家でも連れて来たイ医師に怒りを露わにしていたし、
何も言わなかった自分にだって本当は腹立ったに違いない・・・。
前を走るイ医師の車を追い掛けヨンの車も走り出し、中心街へと向かって行った。
「・・・・・」
「・・・・・」
沈黙がずっと続いている。
・・・あぁ、私実家に帰れるかもと思っていたのよね。
イ家の方角では無いが、折角来たのだから帰る前には行きたいな。
でも、これでは言う訳にもいかないわね。
ふと、そんな事を思いちらりと横を向き流れる景色を見た。
「・・・最初、ここに向かっている間は凄く腹も立っていたし、悲しかったんです」
突然のヨンの声にビクリとなり、急いで運転席を見ると彼は前を向きウンスを見ずに静かに話し出している。
「でも、来たらウンスさんも詳しく事情は知らなかったみたいで、それなら仕方ないとも思いました」
「チェさん・・・」
「・・・でも、何かがずっとモヤモヤしてて。それがわかりました」
「?」
「いくらイ先生と古くからの仲だとしても、他の男と出掛けるなんて・・・と嫉妬しました」
実は今もまだモヤモヤしている。
「・・・自分の恋人、と言ったけど何処までの関係?と聞かれたらキスまでとしか言えないので」
「ッ?!」
いきなり何を言うのか?
言葉を詰まらせたウンスは驚いた顔を向けたが、ヨンは至って真面目に話していた。しかし、徐々に口篭りボソボソと話し出すと・・・。
「・・・だから、何ていうか、あー」
ガリガリと項を掻き、はぁーとため息を吐いた。
「・・・付き合いも短いのに、独占欲だけが大きくなって、今俺はとてつもなく面倒くさい男になっていると・・・自覚はしてます」
ウンスは自分だけを見て欲しいと言っていた。
それは勿論の事だ。
しかし自分の行動はそれ以上であり、まさか追い掛けて来るなんてウンスは想像していなかったのだろう。
あの唖然とした表情を見ればよくわかった。
自分も衝動だけで車を走らせ、近付いて漸く我に返るというおかしな行動をしたとわかっている。
・・・俺、きっとこれからもそんな事をしてしまうんだろうか?
お互い面倒くさいと伝えたが・・・。
ある意味怖い男ではないか?
ウンスが徐々に自分を避けるのではないかと不安にさえなった。
「・・・別に重くないわよ」
黙ってしまったヨンだったが、ウンスの声が聞こえ赤信号で止まり顔を横に向けるとウンスと目が合った。そんなウンスはコホンと小さく咳をし、サッと視線を逸らしてしまったが少し頬が赤い様にも見える。
「・・・私そういうのされた事ないからわからないけど、何か、嬉しかったし・・・」
相手がイ医師で自分は特に何も考えていなかった。
だが、ヨンの中ではそれさえも嫌だったという事なのだ。
「これは・・・私の方が悪いわよね。ごめん」
誰かから執着される事が今まで無かった。
付き合うとなったらそこ迄考えるのが普通なのに、何時の同僚だからとヨンも知っているのだからと言わなかった自分が悪い。
・・・そうか、自分は彼に執着されているのか・・・。
二度と自分を使うなとイ医師に怒ったヨンはそれは本音で、イ医師でも許さないという事なのだ。
「・・・嫌じゃない?」
「だから、嫌じゃないって」
また聞くの?ウンスが少し頬を膨らませてくるのを見て、ヨンははぁーと長い息を吐き出した。
だが、先程とは違う安堵感が湧き上がっている。
「・・・良かった」
だったら、確認しても良いだろうか?
「ウンスさん」
「え?」
「実家に寄りたいのでしょう?」
イ家での様子を教えて貰い、二人がそう誤魔化した事も聞いていた。
「お昼食べたら行きましょう、ウンスさんの実家に」
昼食迄はイ医師達と同行するが、そこからは二人で行動したい。
彼女の実家に行きたいと思っていたのだ。
自分の不安を取り除きたいといえば、そうかもしれない。
だが、彼女に自分の誠意を見せたい気持ちもある。
「・・・チェさんも会うの?」
「はい、会いたいです」
「そ、そう・・・」
――これは、確実今お付き合いしている彼氏を両親に紹介する展開ではないか?
・・・オ、オゥ。
一気に焦り出してしまう自分に気付いていないのか、
運転しながらヨンは楽しみだなと微笑んでいた――。
(13)に続く
△△△△△△△△
同僚でも駄目!なヨン氏と同僚だから大丈夫では?の考えの違いがあった様ですね(*´`)
実家に行きたいヨン氏笑
🦌🦅🦮🐧🐈🦊🐆🌸🎤~🎶
カムバお疲れ様でした✨
次はC100祭りじゃー!🛍
🦊参加しております🐤

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