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イトシイイトシイイウココロ㉔次の日迂達赤隊の兵舎の中ではテマンが顔を左右に振り、困惑気味に返事をしていた。
前にはトクマンやトルベ数人の隊士達がいる。
「だから、隊長は何処に行ったのだ?」
「た、多分。市井だと・・・」
テマンはしどろもどろと話すが、テマンも何とも言えず口篭り話す事を躊躇している様だった。
実はヨンが朝からいなくなっていたのだ。
唯一知っているテマンは付いて来るなと言われ、戸惑っているうちにさっさとヨンは門を潜り市井に向かってしまった。しかし隊長の事だから王宮も王様も、それに医仙の事を何時も心配し気に掛けているし、遠出はしないとわかっている。場所も安易に想像は付いたのだが・・・。
でもテマンが見た時、出て行くヨンの横顔は険しく沈んだ目をしていた。
「・・・昨日何かあったのか?」
テマンがトクマンに尋ねると、トクマンはそのまま顔をトルベに向けた。尋ねられたトルベは、首を傾げ項を掻いてはぁーとため息を吐いた。
「・・・詳しくは知らん。・・・が、どうやら医仙の部屋にチャン侍医が向かって行ったらしい。しかも夕餉後に」
護衛をしている武閣士の女達が数刻後にチャン侍医が部屋から出て帰って行ったのを見ていたという。
彼らは何時も似た様な香りを付けている為、中で何かがあってもそんな事はわかり様も無い。しかしウンスの声とチャン侍医の声が偶に聞こえたと思ったら、急に静かになったりと、武閣士達も部屋の外にいて良いものか戸惑ったとの事だった。
迂達赤隊士達も男だ、それでわからない訳では無い。
男女の閨事を知らないテマンでも女人の部屋に男が行くというのは何かしらがあるのだろうと理解は出来た。「・・・えぇ?」
サーと顔色が悪くなってしまうテマンに、困り顔になる隊士達を見て再びトルベは長いため息を吐いた。
「副隊長は二人は何も無いのだから余計な検索はするなと言っていたが・・・昨日さっさと帰って来た隊長を見れば、考えるなという方が無理だろう?」
・・・隊長は何かを見たのだろうか?聞いたのだろうか?
トルベや隊士達は微妙な顔で居なくなったヨンの部屋に続く二階を見上げた――。
「何でいきなりヨンが来たんだ?」
「知らないよ。奥の部屋に入って行って寝てる」
「暇なら俺らに鍛錬付けてくれよ!ヨンーッ、おー・・」
「煩せぇ!静かにしろよ!寝れねぇだろうがっ!!」
部屋の中から聞こえたヨンの怒鳴り声に二人は渋々部屋から離れて行った。
「・・・あー、くそっ!」
寝台の上にそのまま寝転び腕で頭を抱える様にし、目を瞑っていた。
朝になればチャン侍医も医仙も何時もの顔で仕事を始めるのだろう。それでもきっと、自分は二人の少しの変化にも気付いてしまう筈だ。兎に角昼まで何も無くて良かった、王宮から呼ばれたら此処から行けば良いのだ。
何時も深く等眠らなくても平気だったのに昨日は何も聞きたくない程に眠りたかった。だが小さい風音や窓に当たる葉の音さえ煩わしく感じ、何ども寝返り打ってしまい気付いたら朝になっていた。
行先は言わなくても、テマンはわかるだろう。
何かがあれば必ずここに走って来る。
それ迄・・・――。
・・・・・・
・・・・
――あぁ、何だ?・・・気持ちが良いな。
額に冷たい何かが覆い、誰かが布でも置いたのか?と中々浮上しない意識の中でふと思った。
それは離れたが、またふわりと乗って来た。
・・・あぁ、今度は手だ。
細く滑らかな手の指を感じ、男では無いと直ぐにわかったが、この店に女人等マンボ姐しかいない。
・・・誰だ?メヒ・・・な訳はないか。
顔も肌も忘れてしまった許嫁に申し訳ない気持ちもあるが、消えたものは仕方がないと諦めてもいる自分がいて随分変わったと思う。
どうせ自分も朽ちてこの世から無くなるのだ。
どうでも・・・――
・・・あぁ、違う。その前にあの方に・・・
「――・・・まだ寝てるのか?――」
「・・・そうみたい。具合でも悪いのかしらね?・・あら、それ――」
部屋の外で心地好い軽やかな声が聞こえ――、
――何故?!
「・・・・はぁ?!」
ヨンはバチリと急いで目を開け、起き上がると額から湿った布が落ちた。
それを凝視しながら、慌てて部屋の入口の扉を開けると・・・。
何故かウンスが部屋の前の石段に座り、手には菓子を持ちながら、いきなり出て来たヨンを不思議そうな眼差しで見つめていたのだった――。
――期待はするなと思いながらも、胸元に仕舞っている手巾が一瞬頭に浮かんだのはどうしてなのか・・・。
㉕に続く
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こっちも後半に近付いていたのよね。´-`)ヤダワ―...
多分隊士達の仕業。優しい部下達だね・・・。
今日はランダムに更新が激しいですよ~笑✨
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