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鈴の鳴る方へ(5)
――見た事が無いのに知っていた。
一人で来た事等無かった筈なのに。
散歩に行くと言ったチャンビンに両親はあまり良い顔をしなかった。それもそうだ、つい先日退院したばかりなのだから。それでもチャンビンは、時間を決めて2時間以内に帰って来ると約束しどうにか外に出る許可を得て、急いで家から出ると買って貰ったばかりのマウンテンバイクに跨り彼は目的地へと急ぐのだった。
何故か自分はアメリカでは周囲と打ち解ける事が出来ず、常に本を読んでいる少年であった。そんなビンを見て両親は視野を広げてみてはどうかと母親の故郷である韓国へとやって来た。航空に降りた時に何故か懐かしい感覚になったのは、母親の話を聞いていたからだろうか?
もしくは自分の中にこの国の血が半分入っているからだろうか?だが、国が変わったところで自分の性格等変わる訳が無いじゃないかと内心思っていたのだ。
・・・まぁ、歴史を学んでみたかったし何処か博物館にでも行ってみようか?
なのに。
着いてから3日後高熱に魘される事になった。
――夢の中の自分はすっかり成長し、大人になっていた。
しかし見た事も無い服を着ていて、周りには忙しなく働く者達がいるのに、その中で自分はそれに反して静かに動いている。
私は偉い何かなのだろうか?
そんな事も考えてしまう。
どうやら周辺の雲行きが怪しい。
護衛している物々しい軍隊達の動きも慌ただしく、
何故か自分も何時もの落ち着きが無くあちこちと走り回っていたのだが、何かを思い出したのか焦る様に奥の部屋へと走って行く。
部屋に近付きながら自分の手は背中に回し挿している扇を握り締めていたのだが――。・・・あの緊張感は何だったのか?
―また次の場面は、夕暮れの迫る空を気に掛けながら隠れる場所が気味の悪い程に入り組んだ木々の中しか無く、これでは絶対に見つかってしまうと、何処かないかと腰を低くし逃げていた。
走る獣道の端々には変色した人だった物が、点々と転がっている。
「・・・援軍はまだ来ないのか?!」
くそっ、と口の中がいつの間にか切れ溜まっていく血を唾と一緒に吐き出した。
一人でこんな所でやられてたまるか。
しかしガンガンと盾を叩く音が聞こえ、敵が近く迄来ているとわかり身を屈め様子を伺った。
「・・・早く来てくれ、“――!”」
・・・今誰を呼んだのだろうか?
―――あ。
口を開けそうになったが、自分の意識は何故かそこで途切れた。
硝煙と怒号、剣の交じる音が耳元でするが既に自分には目を開ける力さえ無い様で。
彼の声が聞こえて来た。
ありがとう、迎えに来てくれたのか。 あぁ、だが、すまない。どうやらもう動く事は無理の様だ。
切断された自分の手首を見て、これでは誰も助ける事は出来ないな・・・何故かそんな事を考えた。
微かに聞こえる彼の声。
「もう少しだったのに・・・」
いいさ。ここ迄連れて来てくれただけで有り難い。
君一人だけでも逃げろ。
声が出ないのがこんな辛いなんて・・・。
すると。
「お前は何処に行った?・・・チャンビン」
そう彼は問うて来た。いや、俺の名前はそんな名では・・・。
「早く起きろ。
願うなら、俺とは違う世界に行けよ。
お前とは女で争いたくないからな。」
――その言葉に、空間が歪んだ。
何人かの足音が慌ただしくワゴンを押している。
銀色に光る医療器具が触れ合う金属音。
―大丈夫か?
―どうしたの?
その声に自分の両親だとわかったが、その声の合間に聞こえるピッ、ピッ、と規則的な電子音がうるさいとも感じてしまった。
自分の部屋で身体中が焼ける様に熱く、腕も腹も、喉さえも痛いと暴れていたのだと止まない目眩の中で思い出した。
――あぁ、君だったのか。ありがとう。
漸く思い出しましたよ。
だが、君も強引な事をするじゃないか。
わざとあの言葉を俺に言ったのだと、今更ながらに気付き薄く笑っていた。
チャンビンはマウンテンバイクを止め、降りると足を門へと向かい中に入って行く。
暫く歩き上を見ると、そこには昼間の明るさで優しく微笑んでいる様にも見える弥勒大仏像。「・・・多分貴方とは会わないだろうな。貴方は何処に行きました?隊長?」
はたして彼は既にチェヨンなのか、どうなのか?
あの瞳を見た自分もまた、同じ闇を見させられてしまった訳なのだが。
「輪廻転生と言う言葉を知っているか?」
「・・・はぁ、一応は」
「俺は信じている」
「・・・意外でした。貴方はそういうのに興味が無い人だと思っていました」
自分が感じた事を口にするとその彼は目を細め、小さく口角を上げていた――。
(6)に続く
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あの記憶も持って来たチャンビン氏でありました。
だから今回はあの赤い花です。
・・・少し意味わからん、て方は申し訳ない(^^;
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