ジグザグ(21)
「それは嫌」
「ウンス」
「あまり言うと、今日から違う部屋で寝るわよ?」
「・・・・・」
それが一番弱い。
ヨンは黙ってしまう。
最近の朝の別れる時はこればかりだ。
「送って行くから」
「大丈夫よ。ヨンはそのまま病院に行って」
同じ江南区ではないか?なのに、何故ウンスを送るのが駄目なのか?
「夜もいいのよ?病院の方が忙しいのだから」
「大丈夫だよ・・」
「大丈夫じゃないわよ!」
声を上げヨンを見上げて来たウンスは、
怒っている様だが瞳が悲しんでいるのがわかった。
「・・・聞いたんだからね?迎え時間に間に合う様に色々断っているって・・・」
「・・・キムか?」
彼奴・・・マジで殴りたい。
キムが自分達に気軽に話し掛けて来るのは大学生時代からだが、いよいよ注意しておかなければならない。昔と今ではウンスだって違うのだ。大学生時代と同じに馴れ馴れしくされても困る。
「キム先生は関係ないわよ・・・。彼を怒らないでよ?」
それは多分無理。しかしそれは言わずヨンが黙っているとウンスはため息を吐いた。
「・・・私と付き合っていると病院の人達だって知っているのでしょう?・・・私のせいでヨンの立場が悪くなるのは嫌だわ」
女の言う事を聞いているのか、女にのめり込んでしまったのか。そんな噂でヨンの居場所の空気を悪くしたくなかった。
「ウンス?」
アメリカに行って折角立場も上に上がれる程の実績を積んだというのに。
「まだ完全には同棲では無いけど、ヨンの傍にいるから」
ウンスはまだ自分のアパートを持っていた。
後数ヶ月間は契約期間が残っている為、まだ住まなくてはならない。しかし時々ヨンのアパートに来てくれる様になっていて少しづつだが、ウンスの物も増えてきた。
不満は無い筈なのだが・・・
いや、ある。
「結局は週末まで待つしかないじゃないか!」
ウンスが泊まりに来るのは週末だけで変わらない。
だからギリギリまでいたいというのに、平日の朝になればウンスは違う場所に行ってしまう。
「・・・それは、仕方ないわよ・・・」
言いにくそうに口篭るウンスは少し頬を染めた。
体力の限界まで付き合わされ身体のあちこちにヨンの手が這い、事が終わった頃にはウンスはペショリと洗濯された服の様になってしまう。
朦朧とする意識の中でヨンが嬉々としてくたくたのウンスの身体に口付けを落としている事だけはわかる。それは毎回だからだ。
嵐だ。
しかも愉悦的で誘惑に勝てない程の。
嫌では無いが、・・・しかしあれはもうウンスの身体が持たないとわかる。
同棲する事になった時が恐ろしい。
「あと数ヶ月だから・・・」
「目を合わせて言っていない」
「・・・兎に角、先に行くから。ヨンも仕事頑張ってね?」
最後は結局応援してくれる。素直に頷いたヨンにウンスはじゃあと手を振り出て行ってしまった。
玄関でポツンと佇むヨンは、はぁーとため息を吐きしゃがみ込んだ。
「・・・あと数ヶ月・・・」
違約金を出すと言ったらウンスに怒られてしまった。
―たった数ヶ月なのに、違約金を払うですって?何を考えているの?!―
滅多に本気で怒らないウンスに怒られてしまい、ヨンはそれからはその話は言うのを止めた。
だけど、そのかわりヨンがウンスに甘えたい時は無下にせずにいてくれて本当に有り難いと思う。
ウンスとの為に契約したこの部屋が、一人になる週明けになると一気に寂しさを増してしまうのだ。
「あと・・・行ってらっしゃいのキスとか欲しい」
その声は既に出て行ったウンスには聞こえる訳もなく。
ヨンはよろよろと立ち上がり、出勤の準備をするのであった。
(22)に続く
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半同棲て所でしょうか?いきなりだし、ウンス側も急には無理ですよ。(∵`)
