ジグザグ(7)
駐車場に来た二人だったが、ウンスはまだ俯いたままだった。
あの後ヨンがユジンを連れ出て行き、様子を見ていた受付の職員達や患者達に興味深そうに眺められてしまいキムはウンスを連れ急いで駐車場に向かったのだった。
今頃職員達がヨンとウンスの修羅場があったと面白おかしく話が盛り上がっているかもしれない。
それよりも・・・。
「・・・一体どういう事ですか?文句言わないなんて」
「・・・私のせいなのよ。なのに・・・」
ウンスはまた指に戻った指輪を見つめている。
指輪を見てふとキムは思い出した。
「ヨン先輩指輪首にしてましたよ?多分傷付けたくないから首に付けているんでしょう?毎回手術前に付けたり外したりは面倒ですからね・・・」
「あ・・・」
ウンスはハッとして顔を上げキムを見た。
外科医が手術前にこまめに手を洗うのは当たり前でウンスだって今だに手も爪も過敏な程気を付けていた。昔みたいに頻繁にブラシは使わなくなったが、アルコール消毒も一日何回も使うのだ。
ウンスは指輪を付けていたが、ヨンはそれさえも、少しの傷も嫌だったのだろう。
「私って本当に駄目ね・・・」
熟自分の事しか考えていない。
「指輪はわかりましたが・・・彼女は一体何なんです?」
「彼女は・・・」
するとウンスはあぁーと唸り、髪をガシガシと掻き乱した。
「彼女がいる会社は医療メーカーで・・・私のクリニックに幹細胞培養液を持って来てくれている所なのよ・・・!」
「うん?」
「他にも美容液も・・・あそこはヨンの口利きで3年前からウチと取引してくれていたの・・・!」
親の管理会社と言っていた。つまりはユジンはその医療メーカーでは強い影響力がある存在でもあるのだ。
キムはウンスの話を聞いて考えていたが、パチンと指を鳴らした。
ほら、やっぱりヨン先輩は変わっていなかった!
「あー、やっぱりウンス先輩の為だったのか!あぁ、良かった!」
「はぁ?!良くない!!」
何言ってんの?!とウンスは喚く。
「彼女の家がヨンを気に入りお見合いを取り付けて来たのよ!だけどヨンは私の為に断らなかったんだわ!」
ヨンが誘って来た時に私がちゃんと返事をして、彼の家に行けば良かった!そうすればまだヨンは断る事が出来たかもしれないのに!
あぁーとまた叫び声迄あげるウンスにキムは、兎に角落ち着いてと宥めながらウンスを助手席に乗せ、自分も車に乗り時計を見ながら車を走らせた。
「・・・だとしても、チェ家が・・・とか言っていましたよね?多分その会社だってチェ家との何か関わりが前からあったんですよ。それで向こうがヨン先輩が帰って来てチャンスだと考えた」
「それを断ったら私のクリニックには・・・」
「・・・まぁ、もしかしたらそうなるかもしれませんが、だからヨン先輩が何か考えユジンて女と見合いをするんでしょうね」
先程のウンスを見つめていたヨンの目は別れる気は更々無い様だった。
寧ろ、3年前からだろう?
既にヨンはウンスと離れられなくしていたのだ。
ウンスの周りの環境にじわじわと入り込み、自分が必ず関わってやるという怖さも感じた。
ウンスに話せなかった、では無い。
話さないでウンスが知らないうちに解決させてしまおうとしていたのだと思う。
自分を見て来たあの目付きもまた然り。
・・・いやぁ、数年経つとああも執着心と独占欲が激しくなるんだなぁ〜。怖〜。
「・・・大丈夫だと思うなぁ。ウンス先輩も心配しなくて良いと思いますよ?」
「・・・そんな簡単に言わないでよっ!」
まだヨンは怒っているのかもしれない。
クリニックも大事だが、ヨンと別れる事になったら私はどうなってしまうのだろう・・・?
・・・オーナーに相談してみようか?
ウンスは先程ヨンが握っていた箇所に重ねる様に再びそこを強く握り締めた。
(8)に続く
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ウンスに知られてチッ( º言º)て思っているだけだから怒ってないよ。
(ヨンの口利き...前のお話にチラリとありますね☆)
そんなヨンを好きと思うか怖いと思うか?ですねー。