ジグザグ6
お見合い当日、ウンスは深呼吸を何回もしビルの前に立っていた。
お見合い自体が初めてなのだ。
昨日漸く田舎の両親に電話を掛け、お見合いの話をすると驚いた父親が受話器を落とし、母親はウンスに延々とお淑やかに、慎ましく、いきなり怒らない様にと言い始めウンスは途中で電話を切った。
この歳まで何の話も無いウンスに両親は、娘の性格に問題があるのだと決め付けていたのだと今になって理解した。
「何なの?!少しは応援してよ!」
ビルのガラスに自分を写して汚れていないか背中を向けてまで確認し、よしと息を吐いてビルの中へと入って行った。
エレベーターで最上階に向かいながらウンスはジッと変わっていく数字を見ていた。全方位から景色が展望出来るレストランがあるという。
「・・・知らない所ばかりだったのね」
仕事しかしていなかったとウンスは落ち込んでしまう。
多分きっかけはヨンを忘れたい為だった。なのにその本人は常に連絡して来るというウンスにとって、何の為の勤勉さだったのか?
最上階に着き扉が開くとそのフロア全体がレストランという広さに一瞬足が怯んでしまったが、
急いでエレベーターから降り言われたテーブルへと向かって行く。
・・・・・・
・・・・え?
指定された席に行くと男性の後ろ頭が見えた。
だが、
その男性の座り方が・・・
高級そうなソファーに浅く座り、身体を背もたれに沈めているのだが何と足をロウテーブルに乗せていたのだった。
「・・・彼?」
気だるげな態度はまるきり見合い等しようとも思っていないのでは?という空気を出していた。
長い足を組んでその足を乗せある意味寝ているのかもしれないとさえウンスは思ってしまう。
『とても物静かで優秀な人』?・・・何処が?
ウンスは唖然と立ち竦んだ。
しかし他の客席からは丁度死角で見えず、遠くから店員だけがチラリと様子を窺っているだけだった。
あぁ、結局は自分はそんな人生しかないのかもしれない。
・・・本当に男運が無い。
はぁーとわざとため息を聞こえる様に吐くと男性の身体がピクリと反応してテーブルから長い足を下ろした。
紺色のスーツの背中が座っていたソファーから見え身体を起こすのをウンスは黙ったまま首を傾け眺めている。
そして椅子にちゃんと座った男性は首をゆっくりとウンスに振り向いて・・・
「・・・・・は??」
「・・・・・あ??」
前には紺色のスーツ姿に身を包み呆然とウンスを見つめるヨンがいたのだった。
(7)に続く
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
ヨンの本性がチラリと見えてしまったな。
(ウンスには見せていなかった姿やね)
※次回少しヨンが怒る場面有り