人魚と騎士[赤の秘密]③
暫くしてチャン侍医は麻袋に何かを入れ竹林から出て来た
「・・・トクマンに口外しない様言っておいて良かった」
そう言うチャン侍医の顔は険しくなっていた
「ヨン、チャン先生が芍薬をくれたのよ!」
役目を終え帰って来るとウンスが机の上にある花を見て嬉しそうに話していて
綺麗な芍薬の花はまるでウンスの様に華やかでとても似合うとヨンは思った
・・・だが
「・・・何故?チャン侍医が?ウンスに?」
「薬草園にも花が沢山ありますから、暇な時はいらして下さいと言ってくれたのよ」
芍薬は漢方薬に使う為花壇に咲いているのを見た事がある
花が好きなウンスには嬉しい誘いだったのだろう
そんな部屋から遠くは無い典医寺に招かれウンスが行かない訳がない
「良かったな」
ヨンはウンスに優しい笑みを向けた
「・・・どういうつもりだ?」
「おや、もう気付きましたか?流石大将ですね」
「煩い、チャン侍医が自ら典医寺に呼ぶ等私用では有り得ないからな」
「そうですね・・・」
ニコリと微笑み返して来たチャン侍医の眼差しは笑っていなかった
この男こそまず初めから素直に受け止める事をしない
まだウンスに対しては様子を伺っている事もわかっていた
チャン侍医の誘いはウンスでは無くヨンを呼び出していたのだ
診察が終わり静まり返った診療所に
チャン侍医とヨンだけがいる
二人は少しの間黙っていたが
チャン侍医は血が付いた布を引き出しから取り出した
「あの女人の足の事ですが・・・」
「女人では無い、ウンスだ」
「・・・ウンス殿の足ですが、おかしいのは足の腱は確かに長い時間の治療が必要です
しかし何故かそれ以外は筋肉も付いているし使っていなかった訳ではなかった」
「後は?」
「・・・髪は染めている訳ではありませんね
調べたら中から赤色でしたから」
「髪迄調べたのか?」
何なのだ?此奴・・・
ヨンの目が薄まり向かいのチャン侍医を睨み付けた
「まぁ、怒らず
私が聞きたいのはウンス殿を何処で見つけたか?です」
「知ってどうする?それこそチャン侍医には理解出来ない話だ」
「私がですか?」
目を大きく開けヨンを見つめて来る
意外だと顔をするな
こういう男が一番信じないのはわかっているのだ
「・・・理解出来ない話ですか
確かに私は御伽噺等は嫌いです
信じてもおりません」
「そりゃ誰だってそうだ」
俺だってウンスを見て驚愕したのだ
それでも信じたのはウンスを見てしまったからだとヨンは思う
チャン侍医は布をヨンの前に差し出した
「ウンス殿が雨に打たれていた場所にあった血です」
「血?」
ヨンは布を見ていたが顔をチャン侍医に戻した
「ウンスは怪我等していなかった」
「はい、トクマンが見つけ私に教えて来ました
調べた所兎の血だとわかりました」
「兎・・・はぁ」
野兎が入って来たのか?
「大量の血が出ていたので、動物なら死んでいる訳ですが・・・」
するとチャン侍医が椅子から立ち上がり部屋の片隅にあった麻袋を持って来た
何やら袋が絶えず蠢いている
「兎の傷はどうやら誰かに切られたものでしたが・・・」
チャン侍医は袋に手を入れ兎の後ろ首を掴み取り出した
しかし・・・
「・・・無い」
ヨンは兎の毛の無くなった脇腹を見て呟いた
④に続く
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※大丈夫、大丈夫。
そんな暗くはならない筈よ・・・多分。
