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イトシイイトシイイウココロ⑲
朝から部屋の窓側に椅子を置きウンスはボーと外の薬草園を眺めていた。
診療所に向かう前にチャン侍医が部屋に入って来てウンスの顔を見ていたが、小さく首を横に振り
“今日は診療所に来ない様に”
と言われてしまい、何故?と詰め寄ったが、眉を顰めたチャン侍医は兎に角駄目だと言うとさっさと出て行ってしまった。
・・・いや、チャン先生のが正しいわね。
ウンスの瞳に何かを感じ、チャン侍医は医者としての判断をしたのだと思う。
ウンスはこの時代に来てどんどん気持ちが不安定になっているのがわかっていた。
「・・・本当にやばいわね、私・・・」
――女官達が言うには兵士達は役目を終えると、夜外に出て酒楼や妓楼等に行く者もいるという。――
だとしたら迂達赤隊士達だって男性なのだから、日頃の疲れや溜まった鬱憤を晴らしたいだろう。
ウンスも激務で睡眠時間も少なくギリギリの精神状態になった時に、もう無理だと同僚と呑みに行った時もあったし、クラブに行って憂さを晴らす時だってあった。
若い時は気軽に男性からも声を掛けられ嬉しかったが、誘いの先は結局ベッドに向かう事で断るうちに徐々にその空間に嫌悪感を感じ、出掛ける事さえしなくなっていた。
・・・この年齢になったら、声さえ掛からなくなってしまったが。
・・・そんな私は彼に何を求めていたのだろうか?
チェヨンに手巾をあげたのは単純にお礼としてだと思っている・・・筈だ。
あの受け取った時の彼の顔を見て心から良かったと思った。
・・・では彼が抱き締めて来た意味は・・・?
恋愛に疎い歳でも無いが、だからといって豊富な人生では無かったし寧ろ失敗だらけで、それなのに自分都合の良い事を先に考える癖だけは中々抜けなかった。
・・・あぁ、またその癖が出て来る前で良かったわ。
「・・・ふっ、・・・別にいいじゃない。
何時の時代だって、彼等だって恋愛する権利はあるものね」
“女人の物ではないですか?”と聞いていたのに、
でも優しく笑っていた彼に気分良くなってしまった。
「・・・チェヨンさんに余計な物あげちゃったな」
小さく呟いた声も自分に言い聞かせる様に声を出す。
現代で誰かの一番目の女にさえもなれなかったウンスは、
もう順位を付けられるのも誰かと比べられるのも嫌だった――。
⑳に続く
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ちゃんと聞けば良かったのにね・・・。
しかし、そこは武閣氏の子達は責められない。
ウンスを守る為ですから。
