学習塾経営者が集まると他塾を評価するときに、どうしてもその規模や生徒数に目が向きがちです。「この教室は生徒数が多いから人気がある」「人数が多ければ活気もある」といった声を耳にすることもあります。しかし、私はそのような“量”を重視した見方だけでは、本質を見失ってしまうと考えます。教室の価値は、まず「質」にこそあるべきだからです。
質とは、単に施設が整っているという表面的なことだけを指すのではありません。もちろん、教室がきれいで、トイレが清潔であること、授業中に静かな環境が保たれていることは重要です。それらは生徒の集中力や学びの質を支える土台となります。しかし、本当の「質」とは、もっと深いところにある「教育環境としての緊張感」や「けじめ」ではないでしょうか。
ある教室を抜き打ちで見学した際のことです。そこは150名規模の比較的大きな教室でした。第一印象は良好でした。設備も整っており、生徒たちも一見真面目に授業を受けているように見えました。しかし、ある時間帯、ある空間で、ふとした「気の緩み」を感じたのです。言葉ではうまく説明できない、でも明確に「このままではいけない」と思わせるような違和感でした。これは、生徒たちが友達同士のような関係性の中で、緊張感を失ってしまっていることに起因しているのではないかと感じました。
「アットホームな雰囲気」と「けじめのなさ」は紙一重です。教室において、先生と生徒、生徒同士が良好な関係を築くことは大切ですが、それが“友達感覚”になってしまっては、本来の学びの場としての機能が損なわれてしまいます。学びには、一定の緊張感や規律が必要です。そうした環境があるからこそ、生徒たちは目標を持って真剣に取り組み、成果を上げることができるのです。
生徒の中には高い目標を持ち、自らを律して努力を重ねる子どもたちもいます。そうした優秀な生徒は、環境の“緩み”に敏感です。もし教室全体の空気がだらけていたり、真面目に取り組もうとする姿勢が軽んじられていると感じれば、その場に失望し、最悪の場合は離れてしまうかもしれません。そうなれば、教室全体のレベルも徐々に下がっていくでしょう。
だからこそ、教室運営において本当に大切なのは、常に「質」を追い求める姿勢です。見た目の規模や人数の多さではなく、「生徒一人ひとりが真剣に学べる環境が整っているか」「けじめある空間が保たれているか」を、常に問い直す必要があります。質の高さがあってこそ、教室の規模や人気が意味を持つのです。
今後も、学びの場を提供する立場にある者として、「質」を最優先に据えた教室づくりを目指すべきだと、私は強く思います。