メリットとデメリットってさ、本当に不公平にできているよね。
常にメリットは目の前に現れて、これでもかってくらい最大化して提示される。
キラキラしていて、話はうまくて、未来まで明るく見える。
営業マンの話なんて、本当に見事なものだ。
最近のフランチャイズブームもそうだし、ネットワークビジネスやら、投資やら、勧誘やら。
もう、テレビショッピングもビックリの世界だと思う。
「今がチャンスです」
「この仕組みなら成功できます」
「自由な時間が手に入ります」
「家族のためにもなります」
なんとも、聞けば聞くほど上手くいきそうに思えてくる。
メリットはドレスを着てやってくる。デメリットはツケを回収しにやってくる。
メリットは、ただメリットとして現れるんじゃない。
人はそこに、勝手に物語を乗せるんだ。
これを選べば、こうなれる。
この道を進めば、ここに辿り着ける。
この人となら、幸せになれる。
まるで、最初からレールが敷かれているみたいに。
でもね、今ならよく分かるんだ。
人が本当に惹かれているのって、その「メリットそのもの」だけじゃないんだよ。
メリットには、未来の物語が乗っている
人が欲しいのは、目の前の利益だけじゃない。
成功した自分。
自由になった自分。
誰かに認められた自分。
家族を幸せにしている自分。
今より少し良い未来にいる自分。
メリットには、そんな未来の自分が勝手に乗り込んでくる。
だから強い。
だって、ただのお金や利益の話じゃないんだから。
価値の話で、意味の話で、人生の話になっている。
まだ敷かれてもいないレールを、もう目的地まで繋がっていると思い込む。
途中に分岐点があるかもしれない。
交差点があるかもしれない。
遅延も、運休も、事故もあるかもしれない。
でも、そんなものは見えない。
というより、見たくない。
路線図が常に正確で、時間通りに運行しているわけじゃないのにね。
「だろう」は危険だと習ったはずなのに
運転免許の試験で、散々言われたはずなんだ。
「だろう運転」は危険です。
歩行者は来ないだろう。
車は止まるだろう。
この道なら大丈夫だろう。
危険を予測して運転しましょうって、あれだけ言われた。
それなのに、人は人生になると急に「だろう」で走り出す。
きっとうまくいくだろう。
自分なら大丈夫だろう。
この人なら裏切らないだろう。
これだけ頑張れば報われるだろう。
まぁ、なんとも都合の良い運転である。
しかも、人間は年齢とともに老眼になっていく。
目の前の危険より、遠く先の可能性が見えるようになっていく。
遠くの危険を見通せば、普通は避ける。
危ない場所には踏み込まない。
でも、遠くの可能性は見たいんだ。
見たいから、見る。
目の前に転がっている違和感なんて、ピントが合いやしない。
デメリットは、通過した後に姿を現す
デメリットは悲しいかな、後からしわ寄せのように迫ってくる。
ギャンブルの負け。
投資や投機の負債。
人間関係の悪化。
信用問題。
疲労。
後悔。
破綻。
それらは最初から無かったわけじゃない。
途中に分岐点もあった。
交差点もあった。
伏線もあった。
でも、通過した後になって初めて認識する。
「あそこから繋がっていたのか」
「あの違和感は、これだったのか」
「最初から兆候はあったんだな」
なんて。
デメリットは、受け取った時にしか実感が湧かない。
借金の説明を聞いても、借金を背負った重さまでは分からない。
人間関係が悪化する可能性を聞いても、本当に誰かを失った痛みまでは分からない。
失う前の人間に、失った後の現実なんて見えないんだ。
盲目だから幸せなんだ
恋愛も同じだと思う。
恋愛している時が、一番人は幸せなんじゃないか?と思う。
片思いの時が一番幸せでしょ?違う?
まぁ、私してないですけどね(笑)
恋愛の渦中にいる時って、盲目になるんじゃない。
盲目だから幸せなんだよ。
気になることが無い。
引っかかることが無い。
多少の違和感も、欠点も、笑って流せる。
見えていないわけじゃない。
ただ、問題として見ていない。
それが幸せなんだ。
ところが、不満が生まれる。
障害が生まれる。
気になることが出来る。
すると、人はよく見ようと目を凝らす。
昨日まで気にならなかったことが気になり出す。
癇に障ることが癪になる。
目をつむっていたことに、目くじらを立てる。
幸せの終わりで、刮目の時だ。
見えたから終わる。
見ようとしたから、終わり始める。
一度ピントが合ってしまったら、もう前の盲目には戻れない。
幸せと不幸は、天秤には乗らない
人は、幸せでいたい。
だから、デメリットを見たくない。
後から来るリスクを考えたら、今の幸せが消えてしまうから。
幸せっていう形のないモノと、不幸っていう形のあるモノは、天秤には乗らない。
比べられないんだ・・・
未来にあるかもしれない幸せと、今すでにある小さな違和感。
いつか来るかもしれない破綻と、今ここにある期待。
同じ重さで測れるわけがない。
だから、人は見たいモノを見る。
それは認知のバイアスでもあると思う。
でも、それだけじゃない。
感情があって。
欲望があって。
本能があって。
価値と意味を求める。
それが人の性なんだと思う。誰かの幸せが乗った瞬間、逃げられなくなる
そして、もっと厄介なのが、そのメリットが誰かの幸せに繋がる時だ。
家族のため。
子どものため。
大切な人のため。
会社のため。
誰かを守るため。
そこに「誰かの幸せ」が乗った瞬間、人は簡単には降りられなくなる。
もう、自分だけの損得じゃないから。
ここで辞めたら、誰かを裏切る。
ここで逃げたら、誰かの未来を壊す。
ここで諦めたら、全部が無駄になる。
そう思ってしまう・・・
まさに、結婚の形だと思う。
だからこそ、
破綻させなければいい。
壊さなければいい。
自分が我慢すればいい。
自分が耐えればいい。
そうやって、自分を追い詰める。
関係を壊さないために、自分が壊れる。
なんとも悲しい話だ。
メリットから逃れられるほど、人は強くない
メリットは、ドレスを着てやってくる。
綺麗で、魅力的で、未来まで見せてくれる。
デメリットは、忘れた頃にツケを回収しにくる。
現金で。
信用で。
人間関係で。
時間で。
時には、自分自身で。
それでも人は、メリットを見る。
幸せになりたいから。
誰かを幸せにしたいから。
選んだ物語を、間違いにしたくないから。
メリットから逃れられるほど、人は強くない。
自分のためだけに生きられるほど、人は強くない。
誰かのために。
大切な何かのために。
人は追われて、走って、守ろうとして。
そして、壊れてしまうのかもしれない。
悲しいね。
でも、たぶんそれも、人が価値と意味を求めて生きるってことなんだろうね。



