📘『吾輩は猫である』を3行で解説!
勢いと語調で説得されちゃいます。
営業マンってホント困る。
人間の心を掴むのを猫並みに造作にこなすから
| ~キャスト~ | |
|---|---|
| 吾輩 | 名前のない猫。冷静で毒舌、人間観察が趣味。意外と哲学的。 |
| 苦沙弥先生 | 主人。意識高い系の中学教師。理屈っぽいが、奥様には弱い。 |
| 奥様 | 家庭を支える現実派。感情が味噌汁の塩分に反映されがち。 |
| 迷亭 | 先生の友人。口達者で詭弁家、喋り出すと止まらない。 |
| 寒月 | もう一人の友人。理屈っぽく冷静沈着だが、恋愛になると不器用。 |
🐾ラノベ風再構成:第5話
第5話:寒月、理屈のかたまりです。
迷亭が喋り倒して帰った翌日、またしてもチャイムが鳴った。
「お邪魔します」
やってきたのは、寒月(かんげつ)という名の男。
黒髪、眼鏡、細身、そして常に無表情。
そう、彼は——理屈のかたまりである。
「この時間、先生が家にいる確率は72%。週末の晴天率は45%。本日はその両方に該当しますので、訪問は合理的と判断しました」
……挨拶くらい普通にできんのか。
吾輩、猫であるが、この寒月という人物はなかなかに興味深い。
迷亭と違って無駄口は叩かないが、その代わり、話がいちいち“重たい”。
「人間の恋愛とは、ある種の錯覚であり、生殖という合理性に美学を付与した制度的幻想です」
昼間から何言ってんの?
しかも先生は、それに対して真顔で頷く。
「なるほどな……やはり理性が感情を超えるには、訓練が必要なのか」
いや、味噌汁しょっぱいって文句言ってた人がそれ言う?
とにかくこの二人が揃うと、会話がどんどん“正しさ”の迷路に入っていく。
寒月の言葉には感情がなく、論理だけが並ぶ。
でも、たまにすごく個人的なテーマに入ると、言葉が詰まる。
「……その、いや……まあ、仮定の話ですが」
「もし、誰かが“自分の名前”を呼んでくれたら……いや、なんでもありません」
吾輩、耳がピクリと動いた。
寒月よ、おまえもか。
名を持つ者ですら、「名前で呼ばれること」に飢えているのか。
人は名前を持ちながら、名前の意味を見失っていく。
吾輩は名前を持たず、名前を求めて観察を続けている。
そう思うと、人間も猫も、あまり変わらないのかもしれない。



