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簡素な暮らしーSimple of life

日々の暮らしの中での”シンプルな”そして”簡素な”ものやことについて綴っています。





ふと気が付けば20年もの年月が流れている話しだが・・・
当時の私は、それまでの人生で一番お金がなかった。

親から反対されていた相手と結婚したのまでは良いが
やはり”亀の甲より年の功”。
年長者のアドバイスには従うべきだった・・・

独りになることを選択し、
それも実家には伏せて住まいを借りた。
何せ人一倍娘の事を心配している人たちだから
実家に戻れば何不自由ない暮らしが待ってはいるが
あえて”独りになってみる”ことで
それまで体験できなかったことをしてみたかった。

住まいは知り合いのツテで借りることができた。
職は近所のパン屋さんでアルバイトを決めた。
それまでの収入の1/3以下だったが
それよりも”使ってくれるかどうか”だった。
当時はまだ”離婚”が再就職にあたって足かせになっていた。
だがその店の社長は履歴書すら必要としていなかった。
「だって、あんた本人が来るんだろ?
別に過去の学歴や職歴、
あんたのプライベートは仕事には必要ないだろ?」
・・・と即決。

その時は正直言って
「たいした仕事じゃないだろう。」
とタカをくくっていた。

ところが大変な肉体労働で
家族だけ、しかも80~90代のおじいちゃんやおばあちゃんまで
総動員で働き、
その働きっぷリは毎日アタマが下がりっぱなしだった。

6時間ほどの仕事なのに
掛け持ちができないくらいに疲れきってしまう。
当然、「本当に生活できるのだろうか?」と
一抹の不安が過るような給料の額だ。

別のお店で同じような仕事をしている友達に
それでどうやって暮らしてるのかを聞いてみた。
「まず手元に残って使えるお金の紙幣は全部1,000円札に変えるの。
そうして沢山の紙幣を手にして
”こんなにあるんだ!”と自分で自分を騙すの。
それでも辛くなったら
”私は外国で働いているんだ”とまた自分で自分を騙す。
そうやっているとなんとか暮らせるものよ。」
と彼女は笑って答えた。

初めて独り暮らしをした部屋は
旅行先に暮らしているかの如く
本当に何もなかった。
でも”0”からの暮らしはかえって心地よく
それまで体験したことないことを体験することによって
自分の心にも余裕ができたのだった。

何事においてもシンプルにする

というのはこの頃形成されたのではないか
と思っている。

ワンルームのその部屋。
備え付けの半間のクローゼットの中が埋まるほどの服はなく、
食器はパスタ皿、カップアンドソーサーに
グラス、フォークとスプーン、
そしてバターナイフが1本。
お蒲団がひと組。
それを大きな布で覆い、ソファー代わりにする。

友達が車を出してくれ
家具屋で不要になった家具をもらってくれた。
ちいさなテーブルと照明器具。
そしてちいさな棚。
テーブルはペイントし、
棚は金具を取り換え、ペイントする。
照明器具を間接照明として2箇所置けば
部屋は温かな雰囲気になる。

お給料が入った時だけ
美味しいコーヒー豆とチーズを買う。
パンには困らなかった。
バイト先で食パンのはじっこを貰えた。
パンを主食に育ってきたので
その主食がタダなのはありがたかった。

バイト先ではお昼が出た。
引退したおばあちゃんが「昔はできなかったから。」
と料理を愉しんでいたので
栄養補給はここでできた。

大好きな本は図書館へ行けば読み放題。
住んでいた町の図書館はたくさんあったが
それぞれの図書館で得意分野があったから
・写真集や画集が眺めたい
・古典や純文学が読みたい
・軽いエッセイが読みたい
・今、売れてる本が読みたい
・児童文学や絵本が読みたい・・・
など目的別にさまざまな図書館へ足を運んだ。

以前は部屋に生花を欠かすことがなかったが
花を買う余裕がないな・・・
などと思っていたら
近くの土手には可愛らしい野の花がたくさんあるのに気が付く。
花瓶代わりにしていたグラスには
いつも季節の花を絶やすことはなかった。

電話も洗濯機もTVもパソコンもなかった。
臨時収入で買ったCDラジカセで聴くラジオと
友達と過ごす時間が
唯一社会を知る時間だった。
上述のものはなくても困るものではなかったし
大好きな映画も”レディースデイ”には観に行っていた。
洗濯は毎日こまめにしていれば困らない。
シーツなどの大物はバスタブで踏んで洗っていた。
「私は洗濯機ー♪」などと鼻歌を歌いながら・・・

何もないところからいざ生活を始めてみると
”持てない暮らし”なのではなく
あえて”持たない暮らし”を選択すれば
これほど気持ちも軽くない、心も豊かになるものなのだと
あらためて知ることができた。

部屋には必要最小限のものしかないのだから
窓を開け放てば風が通り、
快適な気分を味わうことができる。
TVのない生活は
普段の生活の所作が早くなり、
時間に余裕ができる分、本を読んだり散歩をするなどすれば
社会の動きがわかり、想像力が豊かになる。
そしてないものを想像力で代用することを考えることから
自然と応用力も身に付く。
シンプルなライフスタイルは
私にさまざまなことを教えてくれた。

私にとってシンプルとは
なんでもかんでも捨ててしまう、のではなく
無駄なものは増やさない、
必要で手に入れたものは愛しみ、手入れをしながら長く使う、
ということ。

この経験があったからこそ
歳と共に自分にとって必要なものを選ぶようになり
ただ減らすのではなく、自然と淘汰されて
今の暮らしがあるのだと思っている。
今の暮らしでも
傍から見ればシンプルすぎるように映るかもしれない。
でも当の本人は豊かな気持ちで
幸せに感じているのだから・・・