あの頃の私へ




あの日から、家の中の空気が少し変わったよね。
朝の時間が、微妙な時間帯になった。
スマホのアラームは鳴っているのに、急かす声は出ない。「早く起きなさい」と言わなくなった代わりに、どう声をかけていいのか分からなくなった。
ドアの向こうに気配はある。
でも、無理に開けることも起こす事もできない。
「学校へ行かない」という選択は、本当は大きな出来事のはずなのに、少しずつ少し歪んた形で我が家に定着化された。

洗濯機は普通に回るし、お弁当がいらないだけで朝ごはんは作る、テレビは普通についてる。時間も止まらない。
ただひとつ違ったのは、私(母)の心の中だった。

このままでいいのかな?
誰かに相談した方がいいのかな?
それとも、もう少し様子を見る?
正解を探して、頭の中だけが忙しかった。

外から見れば、ただの静かな家。
誰にも相談出来ない難問を抱えてるなんて想像もつかないだろう。

それでも、子どもはちゃんとごはんを食べて、好きな動画を見て、好きなゲームをしてケラケラ笑っていた。
その姿を見て少し安心し、次の瞬間にはまた不安になる。
気持ちは行ったり来たり。
あの静かな朝の積み重ねが、私に「立ち止まる」という時間をくれた。
焦りながらも、私は少しずつ考え始めていた。
学校に戻す方法よりも、まずこの子の「安心できる居場所」を作ろうと。

あの頃の私へ。
あの空気は、
ずっと続くものではなかったよ。