曇つた秋
或る日君は僕を見て嗤ふだらう、
あんまり蒼い顔してゐるとて、
十一月の風に吹かれてゐる、無花果の葉かなんかのやうだ、
棄てられた犬のやうだとて。
まことにそれはそのやうであり、
犬よりみじめであるかも知れぬのであり
僕自身時折はそのやうに思つて
僕自身悲しんだことかも知れない
それなのに君はまた思ひ出すだらう
僕のゐない時、僕のもう地上にゐない日に、
あいつあの時あの道のあの箇所で
蒼い顔して、無花果の葉のやうに風に吹かれて、
ー冷たい午後だつたー
しよんぼりとして、犬のやうに捨てられてゐたと。
猫が鳴いてゐた、みんなが寝静まると、
隣の空地で、そこの暗がりで、
まことに緊密でゆつたりと細い声で、
ゆつたりと細い声で闇の中で鳴いてゐた。
あのやうにゆつたりと今宵一夜を
鳴いて明さうといふのであれば
さぞや緊密な心を抱いて
猫は生存してゐるのであらう
あのやうに悲しげに憧れに充ちて
今宵ああして鳴いてゐるのであれば
なんだか私の生きてゐるといふことも
まんざら無意味ではなささうに思へる
猫は空地の雑草の陰で、
多分は石ころを足に感じ
その冷たさを足に感じ、
霧の降る夜を鳴いてゐた───