気がついたらもう夏前です・・・どうしましょう。
某様、お許しくださいませ~~~~!!!
もともとクリスマスネタ?のはずなのですが、まだ終わりませんがだらりと続けさせていただきます~。
【(仮)『肉食キョーコちゃんのヘタ蓮君添え』レシピができるまで 4】
「そういやお前、最近アレ、どうした?」
都内某所。
シリーズのCM撮影の打ち上げで関係者で貸し切ったダイニングバーは程よく…から結構なお酒の入った人間で溢れていた。
最上キョーコ、芸名京子。
この業界に入って早数年、幸運なことにアルコールを嗜む年までなんとか仕事を頂いて過ごすことができている。
「アレってなんですか?」
「お前な~!俺がアレって言って即座に思い浮かばないあたり偉くなったもんだよなぁ」
「偉くなんて、そんな・・・」
今回のシリーズCMの黒崎監督は見た目に違わず酒豪だった。彼の前にはビールからシャンパン、ワインと様々な空き瓶が山になっている。
挨拶しに行っていきなりそんな事を言われても何を指しているのか分からない。
そんな私の表情を見て、咥え煙草を灰皿に押し付けた黒崎監督はにやりと笑った。
「今シーズンのCMで好評だったから次のシリーズの話も来てるんだが・・・」
出演している身で言うのも少し照れくさいが、美しい画面に効果的な映像加工、そして商品を印象付ける演出の素晴らしさは最近のCMも中で一番だと思う。もちろん世間一般の評価も高い。
黒崎監督がこの商品を手掛けたCMは人気を博し、今回が4作目。1クールストーリー仕立てで4~5本のCMは好評で息の長い仕事になっている。スポンサーから1作目からメインキャラにとオファーを受けて出演し、私にとっても付き合いの長い仕事だ。
商品のキャンペーンにも何度も出てテレビ以外のイベント仕事も多く、色々学ぶことが多く有意義な時間を頂いている。
「さすが黒崎監督ですね。私もこのシリーズのCM大好きです!」
「次のシリーズって聞いてまた一緒にお仕事できるんですね!とは言わねぇんだな」
「まあそれは・・・」
メインキャラクターとして4作お付き合いした仕事でもちろん愛着はある。
でもシリーズ化してる分マンネリ感はつきもので、4~5作続くとキャラクターを入れ替えたり、作風を一新したり転換期がやってくる。ちょうどそのタイミングにあたるため、次回作も当然自分がメインキャラだなんて自惚れることなんて出来ない。
「お前さぁ~、このCMは自分のだって言う感覚は無いわけ?」
「も、もちろん思い入れの強いお仕事です!できるならばまた一緒にお仕事させてもらいたいです!」
「ふんっ、・・・どうだか」
それなりに飲んでいる監督も普段以上に感情を表に出す状態で酒の席での話と分かっているが、そんな言われ方をすれば私だってカチンと来る。
思わずむっとしてしまったが、黒崎監督が目の前に空のグラスを突き出したので、身体は反射的にそこに新たな酒を注いでしまう。
「だってお前、俺がアレって言ってピンとこないあたりなぁ~」
「・・・・・」
お前のグラスも空だと顎で示した黒崎監督は、私のグラスにも並々とワインを注いできた。
酔いのまわり始めた頭で必死に考えては見るものの、アレが即座に思い浮かばない。
「別にな、謙遜したり謙虚な姿勢が悪いって言ってんじゃねーよ。そもそもお前は天然入ってオモシロ女のくせに礼儀正しいってところもセールスポイントだし」
「・・・・・・」
「オファーがいくつかあって仕事を選べるくらいになって来たって事は、実力なり人気なりもってるってことだし」
「はぁ・・・」
手放しで褒められてはいないけど、辛口な黒崎監督から出るそれらの言葉は少し居心地が悪い。
「でもな」
一気にグラスの中身を煽った目の前の男は、空のグラスをトンとテーブルに置いた。
「最近お前の一番の武器、錆ちゃいねぇか?」
「・・・・・・・・・・」
いつもなら条件反射のようにボトルに手が伸びるのだが、挑発的な視線に動けなくなった。
そんな私を尻目に、黒崎監督はまた空のグラスに手を伸ばす。そんな仕草に気付いた近くのスタッフがボトルをもってお酌をしにきた。
「次のシリーズ、キャラクターオーディションにすっから」
「えぇ?次作も京子さんじゃないんですか?」
「ちょっと考えるとこがあってな~」
「スポンサーサイドは?」
「んなモン知るかよ。俺の仕事だ」
黒崎監督の突然の宣言にスタッフ達がにわかに騒ぎ始める。
「さて、どぉーする?京子ぉ」
話題を振りまきに言ったスタッフを見送った黒崎監督は、再度私を見てニヤリと嗤った。
「はじめて仕事を獲りに来た時のお前はどんなだったかな」
~~~~~~
一話の長さはまちまちですが、場面転換で一話とさせていただきます