例えばまな板と包丁。些細なことで心がささくれ立って、お腹がジワジワと黒に染まっていって、嫌というほど自分に失望してしまったとしても、ひとつだけ深呼吸して、いつもの自分のリズムを心がけていたら、いつの間にか日常がそこに佇んでいることに向き合うことができる。例えばまな板と包丁。トントンしているうちに私のテンポを思い出して。例えば菜箸と油。ジュウジュウと泳ぐ鶏肉を菜箸で挟んで、脂を切っていると、いつの間にか楽しくて笑ってる。やった!私は私に勝ったんだ!!仏頂面じゃない私で振り返って、会話を再開できる。