家事や食事、通院の工夫から、ケガや病気を防ぐための生活のコツまで──介護歴30年のプロである藤原清明さんが、親が自宅で安全・安心に暮らすためのヒントを幅広く紹介している一冊でした。
高齢期には、健康な状態から要介護へ移行する「中間の段階」としてフレイル(虚弱)があり、筋肉量が低下するサルコペニアという現象も知られています。筋力や認知機能が衰え始めた状態ではあるものの、適切な対応を続ければ元の状態に戻れる可能性が高いとされています。
要介護に至る典型例としては、認知症の発症、転倒による骨折からの入院・寝たきり、脳梗塞による半身麻痺などが挙げられます。
だからこそ、親本人だけでなく家族も意識して、日常生活の中に予防のヒントを取り入れていくことが大切だと感じました。
以下では、印象に残った箇所や、これからの生活に役立ちそうなポイントを取り上げます。
■ 色のコントラストで「見やすさ」をつくる
老化に伴い視力が弱くなるため、メリハリのある色使いが暮らしやすさにつながるという視点が新鮮であり、色のコントラストは、気づいた瞬間に世界の見え方が変わる工夫でした(94P)
・濃く鮮やかな赤・オレンジ・緑などで皿や椀の色を統一する
・同系色ではなく、コントラストをつけて識別しやすくする
・便座カバーは濃い色にして見分けやすく
・階段と手すりの色を変えて安全性を高める
「見えるように工夫する」ことが、転倒防止や自立支援につながるのだと改めて気づかされました。
■ 食欲を引き出す“甘口・とろみ・香り”
カレーライスは老若男女問わず好まれる料理ですが、高齢者にとっても食べやすく、食欲不振の打開策になると紹介されています。(98P)
・甘口で食べやすい
・とろみがあり飲み込みやすい
・具材で多様な食品を摂取できる
ほかにも、だしの香りが食欲をそそる茶碗蒸し、牛乳で作るカルシウム豊富なアイスクリームなど、日常の食事に取り入れやすい工夫が示されていました。
■ 親の老いを責めず、言葉の選び方で関係を深める
心遣いの言葉が、親とのきずなを深めるという指摘が印象的でした。(144P)
藤原さんは「NGと言い換え例」を挙げ、地雷を踏まないコミュニケーションのヒントを示しています。
・「その話はもう聞いたよ」
→「そうだよね。あとさ……」と話題を変える
・「さっき言ったでしょ?」
→「ここにメモしておくね」
・「何言っているのかわからない」
→「それって、こういうこと?」
・「どうだっていいじゃない」
→「そうなんだ、心配だね」
・「もう年なんだから私がやるよ」
→「大変だろうから、私がやってもいい?」
・「年寄なんだから気をつけてよ」
→「怪我したら心配だから、気をつけてね」
・「年甲斐もない」
→「おお、似合うね!素敵」
・「どうせできないでしょ」
→「ちょっと手伝わせて」
言葉の選び方ひとつで、親の尊厳を守りながら寄り添う姿勢が伝わるのだと感じました。
■ 日常で気をつけたいポイント
親に優しい環境づくりは、他の家族にも安全で優しい環境になります。
・電気コードやケーブルを床に放置しない
・床に物を置かない
・しまい込む収納より、使う場所にフックで「見せる収納」
・立ち上がりやすいよう椅子の位置を工夫
・夜間の階段・廊下にはセンサーライトを設置
どれもすぐに取り入れられる工夫で、日常の安全性が大きく変わると感じました。
■ 目次
はじめに 介護のプロならではの知恵で介護未満の親を健やかに・ハッピーに!
第1章 この道30年の介護のプロが伝授する 70代からの暮らしの知恵
第2章 「要介護」にさせないためには「未病」が肝心 高齢者の健康チェック
第3章 飲み忘れ・飲みすぎ防止。「一病息災」を叶える 毎日の服薬管理
第4章 介護現場でも実践中のメソッドを家庭でも 体力・脳力の低下対策
第5章 老後はなお一層「医食同源」 ちょっとした食事の工夫で介護予防!
第6章 「後悔先に立たず」だから今すぐ! つまずきやケガ・事故への防御策
第7章 親も介護者もより快適&安全に! トイレ・入浴をスムーズにするコツ
第8章 高齢者ならではの問題を解決! 親が快適&健康に過ごせる衣食住+α
第9章 コミュニケーションが増えれば認知症予防にも 老いた親と会話するレッスン
第10章 楽しさは笑顔を生み、暮らしに張りが出る 趣味・娯楽で老化を遅らせる
第11章 一人で抱え込むのは「百害あって一利なし」 地域包括支援センターや公的サービスを利用しよう
第12章 長期戦だからこそプロに助けを求めよう 「介護未満」の親と子を支える有料サービス
おわりに 介護未満の暮らし方を意識すれば、要介護の予防になる!
■ 著者紹介
藤原清明さん
1977年京都府生まれ。京都社会福祉専門学校卒。合同会社ライフさぽーと代表。介護業界歴30年。介護福祉士としてデイサービス、ヘルパー、特養などで15年間勤務し、1000人以上の高齢者の介護に携わる。2013年に独立し、兵庫県豊岡市と大阪府豊中市で自立支援型デイサービスを中心に4施設5事業所を経営。毎月約350人の高齢者にサービスを提供している。
