【No1805】星の教室 髙田 郁 角川春樹事務所(2025/02) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

204P「あってはならない夜間中学」、けれど「なくてはならない夜間中学」

世の中で自分が知らない世界があるのはわかります。またこれまで育ってきた環境ではあまり出会わない人たちはいます。小説のなかでいろいろな方々と出会ってきました。いわゆる主人公になりきって疑似体験をしてきたこともあります。

218P 「戦争や貧しさや病気で、学校に行けなかったかた、読み書きから学べます。授業料や教科書代の負担はありません。一緒に、河堀夜間中学で勉強しませんか」と、声を張り上げ続ける。

いろいろな事情で義務教育を受けることができなかった人や修了できないたちがいます。

夜間中学校に通うことで自分も家族も救われたこの小説の主人公「さやか」は、「シネ」などの言葉の暴力やろっ骨を折るくらいのいじめに遭ったことが原因でした。

義務教育さえまともに終えていないという枷は、社会でも家庭内でもさやかを生き辛くさせていました。

例えば、不遇の人にも配慮できる人となり、そういう人を受け入れることができる世の中がずっとあってほしいと願う必要があると思うのです。

249P 

身体を捻じる運動を続けながら、さやかもまた天を仰ぎ見る。

澄んだ夜空に大きくオリオン座、それに木星やシリウスなど明るい星々が瞬いている。

視線を校庭に向ければ、仲間たちが伸びやかに両腕を横に開く。

何年もかかって、この場所に辿り着いた者がいる。

何年も通って、文字や言葉を手に入れようとする者がいる。

そして何年もかけて夢を育み、叶えようとする者がいる。

ひとりひとりが、さやかには、頭上の星と同じく、輝いて見える。

ああここは星の教室だ。

さやかを夜空ごと、学び舎ごと、仲間たちを抱き締めたい、と思った。

 

これまで当たり前に学校に行けて食事ができて普通に本を読み勉強をすることができたことはかなり幸せなほうだと思います。

227P 学びとは誰に奪われないものを自分の中に蓄えることだ、と悟った。誰のためでもない、自分自身のため、自分の人生のために学ぶのだ、と。

 

読んでいる最中、涙腺が緩んでしまいその症状が止まらない。その姿が誰にも見せられないくらい。

198P

「わしが駅前でビラをもろたんは七年ほど前だった。当時、字が読めなかったわしに、「平仮名から勉強できる」て、ビラ配ってた人が教えてくれた。けど、李さんと一緒で、「いきなり中学校へ入れるわけがない」と思い込んでしもてな」

それでも、ビラを捨てられなかった。

考えて、迷って、とうとうビラを握り締め、河堀夜間中学校に来た。

「小さい小さいビラ一枚が、わしをこの学校へ導いてくれた」

その声が揺れている。

「けど、きっと、わしらだけど違う。この国は義務教育を終えてへん者が、もっともっと仰山いているはずなんや。わしはこの手ぇで」

両の手をぎゅっと拳に握って、遠見は、

「この手ぇで、何とか、そのひとらにビラを届けたい」

届けたいんやと、声を絞った。

 

 <目次>

第一章 履歴書

第二章 夜の高低で

第三章 あおぞら

第四章 弱くて、脆い

第五章 明日の夢

第六章 結び直すのは

第七章 まだ見ぬ友へ

最終章 星の教室

あとがき

 

高田 郁さん

兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒。1993年、集英社レディスコミック『YOU』にて漫画原作者(ペンネーム・川富士立夏)としてデビュー。2008年、小説家としてデビューする。2013年『銀二貫』で第1回大阪ほんま本大賞を受賞し、2022年には第10回となる同賞の大賞を『ふるさと銀河線―軌道春秋―』で受賞