蔦屋重三郎と浮世絵「歌麿美人」の謎を解く 松嶋雅人 NHK出版(2024/11) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

表紙にあるように、歌麿が描いた「ポッピンを吹く娘」はなぜ名作と言われるのか?

2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」。

この主人公は蔦屋重三郎です。

「吉原細見」等本を作り上げるうえでの行動力は他人よりも優れていたのではないか。歌麿などの浮世絵師を選定する目利きがあり描いてもらえるご縁を求めて交流を深める人たらしの要素があったのはないか。

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである」アイデアの発想が豊かな人ではなかったのか。蔦重は、現代ではすでにビジネスモデルとなっているやり方を江戸時代において既に先じて取り入れて実践して大いに成功しました。

今を生きる現代のビジネスマンはこの粋なセンスを学ぶべきです。

商売人としての神のように崇められる稀有な人物だったからです。

75P 手堅い商売で経営基盤を固める

蔦重は、いわゆるクリエイターではありません。名プロデューサーであり、稀代のディレクター、敏腕エディターではあるけれど、ゼロから新しいものを創造したりしたわけではないのです。何をしたかと言うと、すでにあるものの形式を変えたり、切り口や枠組みを変えてみたり、リアリティというスパイスを加味してアレンジしたりしていた。彼のアレンジの趣向に江戸の人々は新しさを感じ、それが熱狂を醸成して、蔦屋が発信する情報や最新の流行が市中に拡散していったわけです。

富本節の本も吉原細見も、独占的に版行できれば、ある程度の安定収入が望めます。それで資金を貯めていったのでしょう。そうした手堅い商売と、歌麿の美人大首絵のように表現の新機軸を打ち出す企画という二つの異なるビジネスモデルを並走させてバランスを取っていた。そこにも蔦重の商売におけるリアリズムが貫かれていたように思います。

 

 <目次>

はじめに 

第一章 歌麿のリアリズム―浮世絵美人画の旋風

第二章 なぜ「歌麿」だったのか

第三章 蔦重のリアリズム―はじまりは吉原

第四章 飛躍のカギは「狂歌ネットワーク」

第五章 出る杭は打たれても出る―蔦重と筆禍

第六章 写楽のリアリズム―蔦屋の誤算

第七章 貫かれた蔦屋イズム

おわりに 

蔦屋重三郎関連年表

掲載図版一覧

参考文献

 

松嶋雅人さん

1966年、大阪市生まれ。東京国立博物館学芸企画部長・広報室長。金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科卒業、同大学大学院修士課程修了。その後東京藝術大学大学院博士後期課程に進み1997年単位取得満期退学。日本近世から近代にかけての絵画史を中心に研究

 

【No1765】蔦屋重三郎と浮世絵「歌麿美人」の謎を解く 松嶋雅人 NHK出版(2024/11)