【No1443】獣の夜 森 絵都 朝日新聞出版(2023/07) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
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一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

 

短編集7篇

「獣の夜」、鹿、猪、穴熊などジビエが食べたくなった、本能のまま生きることができれば。人はドロっとした感情があるはずなのにとてもうまくまとまっていた。

122P

立ちこめる獣臭と自分の体臭が確たる境界を失っていくなか、嚙みごたえある雉肉との格闘に疲れた私の口から、我知らずそんな言葉がこぼれていた。

「みんな自分の鼻を信じてさ、もっと直感的に、本能のままに生きればいいのにって。後先なんか考えないで、今だけに集中して、それが本来の自然な生き方なんじゃないの、って」

 

「あした天気に」、“実家は包容力がある”に、ぼくも同じような感情を持つので納得する。「俺のあしたを晴れにできるのは俺自身だけだったのに」と、てるてる坊主に頼らずに、「親友の死のせい」、他人のせいにしないで!やっと言い訳しないことに気づけた主人公の一平。彼はこれからちゃんと地に足をつけて歩んでいけるのだろうと思った。

212P

本日二度目の入浴。

水色のタイルを貼りめぐらせた浴室は、子どものころから俺がもっとも心安らぐ空間だった。家族を感じながらも一人になれる場所。それは今も変わらない。深めの湯槽に首まで沈め、居間から膜越しに響いてくるような人声を感じていると、なにものにも揺るがない日常に守られている安堵感が胸を満たしていく。

そう、実家の良さはつまるところ、家族の個々というよりも、全体としての包容力にある。いつ来ても変わらない不動の集合体。皆の話は長いわりにオチがなく、テレビの画面に映っているのはだいたい芸人か動物で、トイレの芳香剤はフローラル、冷蔵庫には籠城でもするのかってくらいの食べものが詰めこまれており、もちろん、そこには謎のてるてる坊主など存在しない。

 

 <目次>

雨の中で踊る

Dahlia

太陽

獣の夜

スワン(『ラン』番外編)

ポコ

あした天気に

 

1968年東京都生まれ。早稲田大学卒業。90年「リズム」で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『アーモンド入りチョコレートのワルツ』で路傍の石文学賞、『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞を受賞する。03年、児童書ではない初の一般文芸書『永遠の出口』を上梓し高い評価を得る。06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、一七年『みかづき』で中央公論文芸賞を受賞、同作で本屋大賞二位