【No1424】わたしたちに翼はいらない 寺地はるな 新潮社(2023/08) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

199P

雲に届くように高く飛べと、浜田先生は朱音に言った。きみには翼があると。

群れから離れ、高く飛翔する者は、美しい。そのような生き方は美しい。強く気高い者は美しい。それでも朱音は飛ばない。どれほど醜くても、愚かだと笑われても、地べたを歩いていこうと決めた。わたしに、翼はいらない。

 

「十代の頃って、人生でいちばん良い時代だよね」こんな問いに「いちばん良い時代じゃなかった」と答える園田。いじめている者は、いじめられている人ほど真面目に真剣に考えていないものだ。

マンション管理会社勤務の独身の園田、4歳の娘を育てるシングルマザー・朱音、朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦・莉子の三人が、中学時代に負った傷に癒されないままに大人になった今を生きるさまが赤裸々に描かれていた。

 

みんなと仲良くやっていくというあたりまえの事がしんどいと感じるようになって来たのはいつからか。夫婦も親子も友人も、人はだれも一人では生きていけない。

仲間を作り徒党を組むのはなぜ?相手にマウントを取る必要はあるの?

普通には大人になれるけれどもその普通は人によって違う。

幾つになっても他人の人生ではなく自分のものだから。

諦めや妥協ばかりでは辛いだけ。自我が強すぎても苦しいだけ。

気づくのは早い方がよいが、そのいい加減がいくつになっても難しい。

 

214P

自分は「たしかなもの」を手に入れることはできない。唐突に、園田はそのことを理解した。器を傾ければ容易にこぼれる湯を守るように、そろそろと歩んでいくことしかできない。

 

 <目次>

序章、第一章から第十章、終章

 

佐賀県生まれ。「ビオレタ」でポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。「水を縫う」で河合隼雄物語賞を受賞。ほかの著書に「夜が暗いとはかぎらない」など。