「クイズは人生である」
このことばの意味は、クイズの参加者とこれを読んだ人ならわかるはず。
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前より少しだけ、強くなったような気がする。前より少しだけクイズのことが好きになって、クイズのことが嫌いになった。世界にはまだ、僕の知らないクイズが存在しているのだ、と考えることにした。何かを知るということは、その向こうに知らないことがあるのだと知ることなのだ。
「問題―」という声が聞こえる。
「ずばり、クイズは何でしょう」
僕はボタンを押して、「クイズは人生である」と考える。
「ピンポン」という音はいつまで経っても鳴らなかったが、正解だという確信があった。百パーセントの確信だった。
生放送クイズ番組での決勝戦最終問題。
相手がどうして問題をひと文字も聞くことなく正解することができたのか。
常識的に考えると不可能だ。
八百長なのか!いやそうではない。
少しずつ論理を積み重ねて真実を追及していく過程が面白かった。
クイズの回答から人生を振り返ることを。
プレイヤーのメンタリティを丁寧に描き、きれいに完成されていた物語だった。
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僕は当たり前の前提に気がつく。
クイズに正解できたときは、正解することができた理由がある。何らかの経験があって、その経験のおかげで答えを口にすることができる。経験がなければ正解できない。当たり前だ。
クイズに答えている時、自分という金網を使って、世界をすくいあげているような気分になることがある。僕たちが生きるということは、金網を大きく、目を細かくしていくことだ。今まで気づかなかった世界の豊かさに気がつくようになり、僕たちは戦慄する。戦慄の数がクイズの強さになる。
1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。「ユートロニカのこちら側」でハヤカワSFコンテスト〈大賞〉、「ゲームの王国」で日本SF大賞と山本周五郎賞を受賞。
