ずっと読んでいても飽きが来ず続きが待ち遠しく愉しみとなる話だったと思う。
二人のきたさん。文庫売りの北一と湯屋の釜たきの喜多次が市中の出来事に四苦八苦・東奔西走しながら解決していく物語だった。
文庫屋として独り立ちした北一。この文庫づくりを手伝っている欅屋敷の若・栄花や用人の青海新兵衛、末三じいさん。北一の岡っ引き見習いを応援しているのが亡き千吉親分のおかみさんの松葉、差配の富勘や回向院裏の大親分政五郎、政五郎の元配下で過去の事件をくまなく記憶している町奉行の文書係の三太郎、通称「おでこ」、本所深川同心の沢井蓮太郎、検視の手練れで与力の栗山周五郎、九崎村の半次郎など多彩な仲間が出てきている。
千吉親分が亡くなっていたのは残念だったが、こんな人たちが物語を彩りよくして物語の話に深みを増していた。
二話の「おでこの中身」と三話の「人魚の毒」は一続きのお話だ。
倹しくも幸せに暮らす弁当屋一家三人が毒殺された凄惨な事件、北一も義憤に駆られ見習いとして調べ動きまわるのだった。
ときが現代に変わっても、時代劇の侍のような粋な生き方や北一のような義理と人情はいつまでも変わらずありうべきものだと思う。
事件を通じて成長していく北一の姿を見ているだけですがすがしい気持ちとなった。
おわりが未解決となり、その犯人のお蓮が行方知れずとなった。
つぎの物語への展開にお蓮が絡んできそうな感じがする。
きたきた捕物帳は、二作目だがなにか長く読み継がれるシリーズものとなる予感がした。
<目次>
子宝船
おでこの中身
人魚の毒
1960年東京生まれ。「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞、「理由」で直木賞、「名もなき毒」で吉川英治文学賞を受賞
