本の表紙は、なんとも良き昭和の風情があります。
全体を通じて、動きのテンポが良かったです。
悲喜こもごもな喜怒哀楽があり楽しく読めました。
かつて正面玄関のガラス戸を開け放してあった鄙びた駅まえの旅館を思い出します。
旅館のスリッパがズラッと上り口に何十も並んでいました。
昭和30年代の東京上野駅前の団体旅館「柊元旅館」。
子供の頃から女中部屋で寝起きして番頭になった主人公「生野次平」。如才ない人であり才覚が長けています。彼が宿屋家業の舞台裏を赤裸々に語る物語。
旅館業界の符牒から、出身地別の客の性質の差異、呼び込む番頭による手練手管、業界の番頭仲間らの奇妙な生態、修学旅行の学生らが巻き起こす騒動など、ユーモアがあってコミカルでセンチメンタルもあり、昭和30年代のリアルな風俗描写が面白く、立ち振る舞いも鮮やかに描き出されています。
人間ドラマの本質には、昭和、平成、令和とあれから時代が変わっても、変わらない普遍性があり、絶妙で情緒豊かな感覚があります。
次に続くであろう生野次平と於菊との関係が、このあとにどうなっていくのか気になるところデス。
