睦月から師走までの季節をひと月ごとに素敵なご縁が繋がっていきます。
一つひとつの物語は短くても、そのなかにはぐっとくる、じーんとこころ温まる、がんばろうという気持ちになる、背中をそっと押してくれる言葉がさりげなく散りばめられています。
ぼくはこんな風にほっこりする雰囲気が好きだな。
前後関係がわかればなおさらよいのですが。
段落のなかの一文を切り取っても伝わるものは伝わると思います。
言葉には不思議な力があります。
言葉に内在する霊力としての言霊が。
“ノリの良さと運の良さは比例する”
14P
「人でも物でも、一度でも出会ったらご縁があったってことだ。縁っていうのはさ、種みたいなもんなんだだよ。小さくても地味でも、育っていくとあでやかな花が咲いたりうまい実がなったりするんだ。種のときは想像もつかないような」
38P
「思い出って、流れ流れゆく時間を留めておくピンのようなものかもしれませんね。だけど留める場所は人それぞれだから、ピンの位置がちょっとずれちゃったりもするんですよ」
45P
そこに「ある」と知ってもらうこと。
それがいかに大切か、私は身に沁みて実感した。いくら一生懸命に良いものを作っても、きづかれなければ「ない」のと同じなのだ。
59P
「卒業って、次のステージに行っておしまいじゃなくて、ここまでがんばってきたことをたどって自分で自分を認めたり、支えてくれた人たちにあらためて感謝したりの節目ってことでもあるんだわ」
73P
「自分が一番大事だって感じることをちゃんと大事にできたんだから、それでいいんだよ。佐知は、思ったようにしていい。これからもすっと」
118P
時代はめまぐるしく移り変わる。
あったものが消え、なかったものが現れる。
そんな流れに身を置きながら、私は信じたいと思った。ずっと大切にしたいものは、形を変えて伝わり続けていくということを、存在し続けるということを。
178P
マスターは「それはよかった」と笑みを浮かべ、コーヒーを一口飲んだ。
「俺は思うんだけど、望み通り想定したままのことを手に入れたとしても、それだけじゃ夢が叶ったとは言えないんだよ。そんなふうに、どんどん自分の予想を超えた展開になって、それをちゃんとモノにしていくっていうのが、本当に夢を実現するってことなんじゃないかな」
213P
「縁って、実はとても脆弱なものだと思うんです。どちらかが一度でもぞんざいな扱いをしたら、あっけなくちぎれてしまうぐらいに、ひとつひとつ交わす言葉や、わずかでも顔を合わせる時間や、相手へのそのつどの思いやりや……丹精込めて手をかけて、続いていくものなんですよ」
<目次>
月曜日の抹茶カフェ(睦月・東京)
手紙を書くよ(如月・東京)
春先のツバメ(弥生・東京)
天窓から降る雨(卯月・東京)
拍子木を鳴らして(皐月・京都)
夏越の祓(水無月・京都)
おじさんと短冊(文月・京都)
抜け巻き探し(葉月・京都)
デルタの松の樹の下で(長月・京都)
カンガルーが待ってる(神無月・京都)
まぼろしのカマキリ(霜月・東京)
吉日(師走・東京)
1970年生まれ、愛知県出身。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。第28回パレットノベル大賞(小学館)佳作受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』(宝島社)が第1回宮崎本大賞を受賞。同作と2作目『猫のお告げは樹の下で』(宝島社)が未来屋小説大賞入賞。『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)が2021年本屋大賞で2位獲得
