善良な弁護士白石健介が竹芝桟橋近くの路上に止めてあった車内で遺体で発見される。
警察の捜査の結果、愛知県に住む一人の男が殺害を自供して事件は解決のはずだった。
自供した男の倉木達郎家族の数々の苦悩。
殺された白石弁護士家族のささいな疑問。
三十数年前に起きた「東岡崎駅前金融業者殺害事件」という過去の事件の顛末。
五代と中町の担当刑事が感じるなにかしらの違和感。
このように色々なものが絡まり合いながら、物語が捻れながら反転していった。
391P
「そのことも意外でしたね。被害者の遺族と加害者の家族が協力して情報交換しているなんて、ふつうじゃちょっと考えられないですよ」と中町は頭を左右にゆらゆらと揺らした。
「その通りだが、あの二人の場合は特殊なんだよ。共通の理由がある」
「何ですか、それは?」
「どちらも事件の真相に納得していないってことだ。もっと別の真実があり、それを突き止めたいと思っている。ところが警察は捜査を終えた気でいるし、検察や弁護士は裁判のことで頭がいっぱいだ。加害者側と被害者側、立場上は敵同士だが、目的は同じ。ならば手を組もうと思っても不思議じゃない」
「なるほどねえ……といいつつ、やっぱり納得はできないですね。俺には気持ちがわかりません」中町は奴豆腐を口に入れ、首を傾けた。
「光と陰、昼と夜、まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうって話だ」
捜査結果に納得できない被害者遺族の白石美令と加害者家族の倉木和真。
「白鳥とコウモリ」のごとく異例のタッグを組んで真相究明に向けて東奔西走する。
最後に予想外の繋がりで驚く5百ページを超える大作だった。
1958年大阪府生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒業。85年『放課後』で第三一回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年『秘密』で第五二回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』で第一三四回直木賞、第六回本格ミステリ大賞、12年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で第七回中央公論文芸賞、13年『夢幻花』で第二六回柴田錬三郎賞、14年『祈りの幕が下りる時』で第四八回吉川英治文学賞を受賞。19年に第一回野間出版文化賞を受賞。著書多数
