【No.790】疼くひと 松井久子 中央公論新社(2021/02) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

「愛とは他人の運命を、自己の興味とすることである。他人の運命を、傷つけることをおそれるこころである」(倉田百三)

「恋愛は芸術である。血と肉とを以て作られる、最高の芸術である」(谷崎潤一郎)

「恋愛は、唯性欲の誌的表現を受けたものである。少なくとも、詩的表現を受けない性欲は、恋愛と呼ぶに値いしない」(芥川龍之介)

 

生きているうちにどれくらいの人と出会えるのだろう。

何度も袖を触れ合うくらいに親しくなれる関係、腹を割って自分をさらけ出せる機会は、多くはならないものだと思う。

 

主人公の脚本家の唐沢燿子と15歳年下の恋人、建設現場で働く鳶職、沢渡漣とのSNSからの出逢い。そして「私は、あなたが考えているような男ではない!」と突然の別れ。また、燿子の高校時代の同窓生たち、4人の女性の人生を絡めた恋愛小説だった。

 

古稀を超えて行われる明け透けな性愛が垣間見られた。

知らない未踏の境地だったので興味を抱いた。

性愛は子どもを産むためとか、男性の性欲を満たすためだとか、女性が奉仕するためだけではない。

そこには性による差別も年齢の壁もなく、お互いに愛し合うためのものであることを知った。

 

36P

四十五歳で脚本家でデビューを果たすと、唐沢燿子は、あっという間に人気脚本家の一人として、あちこちの局から引く手数多の存在になった。

そして彼女は、遅らせながら知ったのである。

女の人生の幸せは、誰かに与えてもらうものでなく、自分の力で摑むものだということを。

「ママは、いつも誰かのために生きているフリをして、いちばん大事なのは、自分なのよ」

 

1946年生まれ。東京出身。早稲田大学文学部演劇科卒。雑誌ライター、テレビドラマのプロデューサーを経て、映画監督。著書に「松井久子の生きる力」など。