令和5年度税制改正 建議書 | 税理士の世界一周旅行&司法試験挑戦記

令和5年度税制改正 建議書

 

消費税の軽減税率制度を廃止し単一税率に戻す。消費税の軽減税率制度は、区分経理等により事務負担が増加、低所得者への逆進性対策としては非効率、「社会保障と税の一体改革」という当初の目的から乖離して歳入を毀損し補填のため標準税率の引上げや社会保障給付の抑制が必要となる等の理由から単一税率制度に戻すべき。消費税の逆進性の緩和対策は消費税枠内で解消する必要はなく税制・社会保障制度全体の中で解決することが適切。

財務省◎ 首相❓

 

コロナ禍と日本経済――「財政ファイナンス」について考える

中里透 マクロ経済学・財政運営 2020.08.19

大きく落ち込んだ景気は、4-6月期に底を打ち緩やかな回復を続けている。世界経済の減速と消費増税の影響で、景気はコロナ前からすでに落ち込んだ状態になっていた。消費税率が8%に引き上げられた2014年4月以降の局面をみると3年近く消費が停滞し景気の停滞感が強まった。

 

1.景気の現状をどうみるか

家計調査の消費支出などは7月以降景気回復の動きにやや足踏みが生じている。3月初からスーパー食品販売額が増加したのは、新型コロナの影響で外出が控えられたり、帰宅時間が早められ、外食から家庭での食事へのシフトが生じた。ドラッグストアの化粧品の売上の推移も在宅勤務など外出を手控える動きが広まる。

 

コンビニエンスストアは食品が売上高の6割を占めるにもかかわらずスーパーと対照的な動き。深夜の来店客が減少、在宅勤務が増えオフィス街に立地する店舗の来店客が減少したことが影響。

 

外出自粛で3月、4月は家電量販店の販売額も前年割れとなっていたが5月には売上が回復し6月には大幅な増加がみられた。もっとも、特別定額給付金とキャッシュレス決済時のポイント還元の終了を控えた駆け込み需要が大きい。7月中旬以降は販売額の前年割れが目立ち、増勢は一時的な要因によるものだった。

 

コンビニの販売額の減少幅も7月以降拡大しつつある。ネット通販や宅配など店舗購買を代替する動きもあるが、消費を押し上げる力とはなりにくい。ドラッグストアの健康関連品については5月半ば以降、販売額の増勢が続いているが、これは不織布マスクの品不足が解消されていった経過を表すものだ。

 

景気回復が緩やかなものにとどまることは、7月分の景気ウォッチャー調査から足踏みがみられる。

消費税率が10%に引き上げられた後、景気が大きく落ち込んで多くの経済指標においてアベノミクスがスタートした頃(2013年前半)の水準への逆戻りが生じた。その落ち込みから十分な回復がみられないうちに、新型コロナの感染拡大で外出の自粛が求められたことから、景況感が東日本大震災の発災時を超えて悪化し、リーマンショック後と並ぶような状況が生じたことになる。新型コロナについても収束が見込める状況になったとしても景気の回復は引き続き緩慢なものとなるだろう。

 

2.「財政ファイナンス」についてどのように考えるか

景気が大幅に落ち込む中、生活困窮世帯に対する家計支援や売上の急減した企業の資金繰り支援などを目指して、財政・金融両面から大規模な措置がとられてきた。金融面では政策金融を通じて資金繰り支援に手厚い措置が講じられるとともに、日本銀行において国債買入れの上限が撤廃されるなど潤沢な資金供給に向けた措置がとられている。

 

コロナ禍のもとで大きな影響を受けた個人や企業に対する支援策として積極的に評価されるべきものであるが、拡張的な財政政策と無制限の資金供給という組み合わせについては、「財政ファイナンス」が行われているのではないかとの指摘もみられる。

日銀が資金供給を行う際に買い入れる資産が国債である必要は必ずしもないが、十分なロットが確保でき、信用リスクを考慮しなくてよい資産を探すとなると、公開市場操作は国債の買入れによらざるを得ない。

19年度については財政支出の増加が生じたが、これは19年10月の消費税率の引き上げ(8%から10%へ)に伴う増税対策のために財政支出の追加がなされたことによるものである。

コロナ禍のもとで、今年度については財政支出の大幅な追加がなされるとともに、日本銀行において国債の買入れ上限の撤廃がなされた。

 

3.財政政策と金融政策の連携のあり方について

イールドカーブコントロール(YCC)と呼ばれる現行の金融政策の枠組みのもとで、日本銀行は長短金利を極めて低い水準で推移させるよう金融調節を行っている。こうしたもとで、新型コロナへの対応として政府が大幅な財政拡張を行っている。

名目金利がすでに引き下げ可能な範囲のほぼ下限に到達しており、通常の金融緩和による対応の余地が大きく狭まってしまっている。日銀当座預金に付利をするタイプのマイナス金利政策は、実質的には「銀行税」であり、その深堀りは景気にむしろマイナスの影響を与える可能性があることにも留意が必要となる。

 

もうひとつの理由は、資金繰り支援において信用リスクの顕現化を現実の問題として考慮しなくてはならない局面にあるということだ。このような局面では信用コストの発生に対して財政を通じた補填が必要となるから、中小事業者などに対する資金繰り支援は政策金融あるいは予算を通じて対処することが基本ということになる。民間金融機関を窓口とする融資を通じて実質無利子・無担保の融資を実行。失業や倒産の増加によって経済が停滞し、デフレに逆戻りするのことのないよう、財政・金融両面から引き続き十分な支援がなされていくことが望まれる。