「上級生から勧誘され親も知らない間に信者に」 宝塚と創価学会の蜜月関係を現役生徒の保護者が明かす
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2024年には創立110周年の節目を迎える宝塚歌劇団。が、その「宿痾」が引き起こした事件の帰趨は年をまたぎ、輝かしいはずの伝統はかすむばかりだ。一方、利益主義が幅を利かせる劇団では、かねて巨大宗教との関わりが取り沙汰されてきた。その実態とは……。 ***
両者の主張に隔たりが
宙(そら)組の娘役だったAさん(103期)=享年25=が飛び降り自殺を遂げたのは2023年9月30日の朝だった。それから3カ月――。 「劇団は12月20日、遺族側の代理人と11月下旬に続いて2回目の面談を行ったと明かしました。あわせて『現時点での見解をお伝えし、一定のご理解をいただくことができたと考えております』とし、今後についても『誠実に協議してまいりたい』との談話を発表しています」(社会部デスク) 一方で同日、遺族側もコメントを発表し、 〈(劇団側が)遺族側意見書の内容を踏まえ、(調査)報告書の内容にかかわらず、事実関係と評価を再検討しているものと考えています〉 としている。1月半ばまでには3回目の話し合いが行われるというのだが、 「劇団側はあくまでAさんへのパワハラは“認められていない”との主張で一貫しており、両者の隔たりは大きいままです」(同) Aさんへのパワハラやいじめと並行し、遺族側が指摘してきた過重労働については、過密日程の見直しを始めているといい、 「当の宙組公演は3月まですべて中止となり、また24年開催予定だった110周年記念式典や、10年に1度の『大運動会』も取りやめると発表しています」(同) が、内部にはびこる“悪癖”の改善なしには根本的な解決など望むべくもない。
密接な関係を維持してきた二つの組織
宝塚問題とともに、昨年大きなニュースとなったのが創価学会である。池田大作名誉会長(享年95)というカリスマの死去によって、あらためて巨大宗教の存在がクローズアップされたわけだが、この二つの組織は従来、密接な関係を維持してきたとされている。 1995年には、新進党から参院選に出馬して初当選した元花組トップスター・松あきら氏(76)が選挙期間中、池田氏から激励の和歌を贈られたことがあった。「文藝春秋」04年10月号によれば、松氏は同じく95年の参院選で新進党から立候補、初当選した花組の先輩・但馬久美氏(79)から誘われて学会に入信したという(のちに二人とも公明党に入党)。同記事では、劇団が99年に行った中国公演にも言及。その実現には、自民党参院議員会長として同年からの自自公連立政権の立役者となった故・青木幹雄氏とともに、創価学会もまた重要な役割を果たしていたというのだ。
成功した宝塚中国公演
記事では公明党の益田洋介・元参院議員(故人)が、 〈公明党と自民党は平成七年の宗教法人法をめぐって対立もありましたから、学会と縁の深い宝塚を応援するのは関係を修復するには絶好のチャンス。宝塚ならイメージもいいし、学会の婦人部にあった自民党へのアレルギーを払拭するのに丁度いい、と青木さんが判断したんじゃないですかね〉 などと回想しており、前出の但馬氏も以下のように述べていたのだった。 〈公明党は文化芸術政策を充実せよと主張してきました。宝塚中国公演は、自民党と力を合わせたから実現できた。(中略)あの公演をきっかけに宝塚と中国の繋がりも出来ました〉 公演は成功裏に終わり、一方の政界でも自公が長きにわたってタッグを組む礎が築かれた。では、そうした壮大な構想を実現させた宝塚と創価学会との「蜜月」は、いかにして育まれていったのだろうか。
折伏と座談会
前出「文藝春秋」では、かつて創価学会芸術部書記長だった古谷博氏(故人)が、こう明かしている。 〈昭和四十年代の半ばころでしょうか、タカラジェンヌを熱心に折伏(創価学会における勧誘活動のこと)していたことがあります〉 具体的な手法としては、 〈入信したタカラジェンヌたちに話を聞くと、歌劇団という閉ざされた空間に長くいたので、宝塚を離れると社会に適合しにくく苦労するという。(中略)それぞれに悩みがある。それに宝塚は完全なタテ社会ですからね。先輩に座談会(学会でいう集会)などに誘われると断りにくい。その点も折伏するには好都合でした〉 そんな活動のかいあって、現役とOG合わせ、会員は当時50人ほどに上ったというのだ。
持ちつ持たれつの関係
また池田名誉会長によって63年に設立されて現在に至る一般財団法人「民主音楽協会」(民音)の存在も大きい。音楽文化の向上や異文化との交流を目的としながら各種コンサートのチケットも取り扱っており、学会員は割引価格で購入できる。ジャーナリストの乙骨正生氏が言う。 「民音は創価学会の外郭団体です。学会の地域毎の区分はまず、隣近所の3~5所帯から構成される『ブロック』、それが合わさって30~50所帯の『地区』、次に『支部』、そして200~300所帯の『本部』、さらにゾーンと呼ばれる『圏』や『区』から『総区』『県』『方面』と上がっていきます。民音の責任者は各『地区』に配置され、組織的に割り当てられた分を学会員に買わせるのです」 実際に劇団は数年前まで民音と購入取引があり、現在は「お取引はございません」というのだが、宝塚のチケットを取り扱い始めたのは68年ごろというから、持ちつ持たれつの関係がおよそ半世紀も続いてきたわけである。
「“大人の食事会”に来ない?」
民音との取引がなくなっても、劇団と学会との関係は揺るがない。これまで宝塚OGで学会員であると公言してきたのは但馬・松両氏などごく少数で、現在の劇団内では大規模な折伏は行われていないというのだが、ある現役生徒の保護者が明かすには、 「生徒の中にも、確実に一定数の学会員がいます。音楽学校入学前から家族で入信しているケースもあれば、劇団に入団後、上級生から声を掛けられて新たに会員になることもあります」 後者については、こんなパターンが一般的だという。 「入団後、研7(7年目)までの代が出演する新人公演でいい役をもらったり、また人気が出てスター路線に乗った生徒は、先輩から『今度“大人の食事会”があるんだけど来ない?』『あなたにとってもためになると思うよ』などと誘われます。よく分からないままついて行くと、そこには学会員の上級生らが集まっていて『創価学会に入ればチケットもたくさんさばけるよ』と、入信を促すのです。劇団内での出来事を外に話す“外部漏らし”はご法度なので、家族も知らないまま娘が入信していることもあると聞いています」(同)
「保護者たちがごく自然と学会とのつながりを口に」
世間にもまれず「特殊な閉鎖空間」で過ごしてきた若い生徒らは、自ら判断するすべを持たず、先輩から言われるまま入信していくというのだ。さらに続けて、 「2代前の理事長の時代には、五つある組のうち3組で、学会の力によってトップスターが生まれたといわれていました。うち一人の舞台は、公明党の山口那津男代表も観劇に訪れています。そもそも日頃から、歌や踊りなど特に秀でたものがない生徒が抜てきされると、『学会のおかげだ』と、まことしやかにささやかれます。つまりそれだけ学会の力が強く、かつ生徒の身近に存在するわけです」 また、さるOGの母親が明かすには、 「複数の組トップの保護者が集う会食に居合わせた人が、相手の親たちがごく自然に学会とのつながりを口にするので『みなさん入信しているのですか』と尋ねたところ、『え、あなたは違うの?』と、逆に驚かれたといいます。信心を持つかは別にして、入信することでうまみがあるからです」
ウィンウィンの関係
ある現役生徒の父親はかつて本誌(「週刊新潮」)の取材に、劇団内では事実上のチケット販売“ノルマ”があるとした上で、こう明かしていた。 〈チケットをさばける生徒は良い役につけてもらえます(中略)トップに上り詰めるためには、実力だけではなく、カネとコネが重要だということです〉 先の乙骨氏が言う。 「何枚ものチケットをさばかなければならない劇団員にとって、学会員のよしみで買ってもらえ、それが自身の配役や人事に反映されるのであれば、まさしくウィンウィンの関係でしょう」 「週刊新潮」2024年1月4・11日号 掲載