教諭時代 5
                清水景允

 
 信吾は、新築した家から葬式を出す事まで覚悟するのであったが、君枝の病気は回復に向かっている。
体重が40kgを下回っていたのが40kgに戻るのである。
また、信吾の持病である痔の方も、少々無理をしても発病しなくなっていた。
これは、この家を建てるコンセプトが健康を第一に考えて建てたことにあるのか分からないが、君枝はじめ信吾の身体は良い方向に向かっていることは明らかである。

 良く人から話を聞くのだが、家を新築すると、人によって、その家に災いをともたらす事があると言う。もし、それが真実ならその原因が有るはずだ。
信吾の場合、全く逆の事が起きているようだと云える・・・。
家族の健康を第一に考え設計したことが功を奏したのか・・・。
 しかし、家を新築するとき、誰でもが家族の事を考え、家を建てるはずである。でも、中には思いもよらない方向に進む事が有る。
その原因は何か・・・。
家を建てる時期が悪いのか・・・。方向(方位)が悪いのか・・・。また、家相が悪いのか・・・。
世間では色々な事が言われている。
信吾は、その様な事は全く気にしなかった。
早く校宅から家族を出す事しか考えていなかった。
ただ、家の設計の時、考えた事は、家の中の換気を充分に行なえる事、家の中に空気の淀む場所を作らない。また、換気と矛盾することになるが、暖房にエネルギーをそれほど使わないと言う考え方で図面を書いた。
 家の中に空気の淀む場所を無くするには、空気の流れを作らなければ成らない。その場合、家具の配置と人の動向を考慮した。
もちろん、家を建てると言う事は、最も大きい買物である。従って、将来の事も考え(子ども達の教育)徹底的に信吾の今の経済状況、また将来を分析しての新築であった。
その結果、出来上がったのが今の家であった。

 だが、お袋はこの二世帯住宅に満足していなかった。
年寄りは2階より1階の方が、何か有ったとき直ぐ避難できると言う理由からである。
 しかし、信吾は譲らなかった。
1階は隣の家との間が狭く、1階に陽の入る時間が少なかった。
2階の方が、陽が当たり、年寄りには健康的だと説明をした。また、火災等の心配に対して、今の建築物は建築法でしっかり守られているから大丈夫と説明をしたが、お袋は納得しなかった。
後にお袋は1階の我々の寝室に降りたいと言い出したのである。
そこで、我々の寝室を2階にし、お袋を1階の西陽の当たる、我々の寝室にお袋を降ろす事を建築業者と話し合った。その話し合いの場にお袋を交えて相談した。
 我々の寝室は6畳である。
そこに、台所と仏壇を付けるのである。
台所と仏壇は押し入れを改良してスペースを確保する事が出来るが、今までの生活とは、180度の変化である。と、業者はお袋に説明するのである。
その話を聞きたお袋は二階の方が良いと言う事に成り、従来通りに落ち着くのであった。