退職後の信吾 16
               清水景允

 水からエネルギーを得るには、水を水素と酸素に分解しなければならない。その水素をエネルギーとするのである。
水を分解する方法はあるのか。
現在、最も一般的に言われている方法は、再生可能エネルギーを使用して発電し、その電力で水を電気分解し水素を得る方法である。しかし、再生可能エネルギーを使用し発電するにしても2gの水素22.4リットルを得る為には96500クーロンの電気量を必要とする(1クーロンは1アンペアの電流を1秒間流して得られる)。
また、莫大な設備投資を必要とする。

 信吾は考えるのである。
生命の力を借りて水素を作る方法であると・・・。
 この地球上で生物が生きて行くからには有機物の廃棄物が必ず出て来る。
その廃棄物をメタン発酵菌の力を借りメタン発酵させメタンを作る。
そのメタンを水と化学反応させ水素と一酸化炭素を作る。その時、出来る一酸化炭素は空気中の酸素と反応させ二酸化炭素にする。この時、熱が発生するから、その熱をメタンと水を反応させる時の熱源に使用するのである。
また、発生する二酸化炭素は循環型二酸化炭素であるため、温暖化ガスにはならない。このシステムには環境を破壊する要素が、全く含まれていないのである(CH4+H2O→3H2+CO 2CO+O2→2CO2)。
理論的にはメタン22.4リットルから水素67.2リットルできることになる。
また、生活廃棄物をメタン発酵させた時、出て来る副産物としての残留物にはリン、窒素、硫黄等を含むが、これらのものは、生物の身体を作るのに大切な物質であるため肥料として農地に散布し農産物の収益を上げるのに役に立つのである。

 メタン発酵させる資源は、何も生活廃棄物とは限らない。
雑草、収穫後の農産物、また家畜の糞尿など炭化水素化合物であるなら全てが資源になるのである。

 信吾は後日「水素社会への期待」と題してネットを通して小論を発表するのであった。