教諭時代 10
                清水景允

 一回目の担任の時と同じ様に40名の合格した生徒の受験票が信吾の元に届いた。
前回の反省として、生徒の中学生時代の情報が欲しかった。
個々の生徒に対する情報は、入学願書の担任所見欄の記載しかなく、個々の生徒についての把握はそれほど得る事ができない。

 そこで、信吾は生徒の受験票に書いてある出身校をチエックした。
その頃になると、信吾は中学校の情報は有る程度掴んでいた。
その中に、いじめをする生徒と、その対称に成っていた生徒とがクラス名簿の中に確認された。
 小学校、中学校、そして高校でのいじめを経験している信吾には、このいじめられる生徒の不安を手に取る様に分かる。
また、いじめる側の生徒には、自己顕示欲が強く子供じみた行動がいじめ行為を起こす一因であることを把握していた。
入学式前に何とか対策を取らなければ成らない。
信吾は考えるのである。
 高校生は分別が出来る大人であると言う前提で、入学前であるが、合格した40名の生徒に学級通信を郵送することにした。
学級通信には「化学者の 『金のたまご』 北海道旭川工業高等学校工業化学科」とタイトルを付け、3月30日に 第一号を発送するのである。
それから、毎日4月9日まで日曜日を除き郵送した。

 第一号は、新入生に会う事が出来ない、3月10日に卒業した卒業生からのメッセージを、新入生に送る言葉として

「伝統ある北海道旭川工業高等学校工業化学科に合格おめでとう
     ここに、「化学者の『金のたまご』」第一号を送ります。
           平成3年度 工業化学科卒業生一同」

と見出しを付け、先輩として期待していることを短文で書き、結びに信吾から「さあ、みんな素晴らしい先輩の後に続こうではありませんか。」と記すのである。
 入学式までの学級通信には、高校生は大人である。従って自分の行動は自分で責任を持たなければならないということを、号数を重ねる事に随所に見られるのである。
 4月9日の入学当日の「金のたまご」第9号をみると、
 「今日から旭工生です。そして、社会は若い君達に期待をしています。これからの地球を守るのは、化学の知識を持った若い君達です。
                       おめでとう
と書いてあった・・・。