教諭時代 7
清水景允
信吾は、現像所で現像されて来る写真を含めて、信吾が現像したフリントについても不満を持っていた。それは、写真の褪色である。
当時、百年プリントというコマーシャルがテレビ等から流れていた。
その百年間、褪色せずに鮮やかな色彩を持たせる為には、条件があった。
それは、湿気の無い乾燥したところで光りを当てず、空気に晒さないで保存するということであった。
信吾は、光に当てないで、どの様にその写真を鑑賞すれば良いのか・・・。
湿気の無い、光の当たらない場所に保管すると言うことは、乾燥のした暗室にしか写真を展示出来ない事になる。
これでは、一般的な家庭では展示する事が出来ない。
写真は、何時でも目に付くところに飾って、初めて写真の存在価値が出て来るのでないか・・・。
そこで信吾は、紫外線をカットする紫外線硬化樹脂で写真を包み込むことを考えた。
実験をしてみた。
確かに、湿気や有害物質が入らない。
しかし、少しの衝撃を与えただけで樹脂に傷が入り、その場所から有害物質が入り込み色素を破壊してしまう。
また、小さな写真なら、この方法で傷が付かない限り有害物質から保護する事ができるが、大判の写真となると、大型の紫外線発生装置が必要である。その装置を作らなければならない。さらに、紫外線硬化樹脂は高価である。
信吾が手に入れる事のできる透明樹脂を取り寄せ塗布しテストを試みる。
しかし、どれも信吾にとって満足する物はなかった。
信吾の写真に対する考え方は、自分で現像した写真を浴室で鑑賞したいと言う事である。
この原点に返り、もう一度写真の耐候性について考えるのである。
そこで、欠点の多い樹脂で写真を保護することを止め、防水額縁の開発に取組みだした。
カラー写真の褪色問題は、発色した粒子を環境破壊物質である亜硫酸ガス、二酸化窒素等の他に紫外線から防御することが出来れば解決することができる。従って、防水額縁の開発が成功すると、有害物質は額縁の中に入らない。また、紫外線カットガラスを使用すれば色素の破壊を防ぐことが出来ると考えたのである。
しかし、幾ら防水加工をした額縁に写真を入れても、一ヶ月も浴室には展示することができなかった。二週間位から水滴が額縁の中に入って来るのである。また、高額で一般的ではない。
信吾は、防水額縁の開発を中止した。
ある時、暗室で現像が終わった試し焼のカラー写真の上に薬品を落としてしまった。その薬品はメタクリール酸メチルと言うアクリル板の原料である薬品で、あまりにも臭いが強烈なので、側に有った透明のアクリル板を、そのこぼした薬品の上に載せて置いた。
その事は忘れてしまうのであるが、一週間程後に気がつき、そのアクリル板を取り除こうとした。
すると、アクリルにその写真が引っ付き、中々その写真を剥がせない。
無理矢理、裏面の紙を剥がした。しかし、発色物質が取れない。良くみると発色した粒子がアクリル板の中に入っているのである。
それを見た信吾はひらめくのであった。
『この現象を応用すれば、発色物質がアクリルの中に入っている為、有害ガスから隔離する事ができるのでないか・・・。』と・・・。
さらに、アクリルは75%も紫外線をカットする。
それからと言うもの、取り付かれた様に、どうして発色物質がアクリルの中に入り込んだのかということについて追跡調査研究を始めるのである。
担任を持たない信吾にとって、助手時代とは異なって授業以外の時間を教材研究と言う事で自由にこなす事ができる。事実、信吾は、この写真研究が即授業に使うのである。
清水景允
信吾は、現像所で現像されて来る写真を含めて、信吾が現像したフリントについても不満を持っていた。それは、写真の褪色である。
当時、百年プリントというコマーシャルがテレビ等から流れていた。
その百年間、褪色せずに鮮やかな色彩を持たせる為には、条件があった。
それは、湿気の無い乾燥したところで光りを当てず、空気に晒さないで保存するということであった。
信吾は、光に当てないで、どの様にその写真を鑑賞すれば良いのか・・・。
湿気の無い、光の当たらない場所に保管すると言うことは、乾燥のした暗室にしか写真を展示出来ない事になる。
これでは、一般的な家庭では展示する事が出来ない。
写真は、何時でも目に付くところに飾って、初めて写真の存在価値が出て来るのでないか・・・。
そこで信吾は、紫外線をカットする紫外線硬化樹脂で写真を包み込むことを考えた。
実験をしてみた。
確かに、湿気や有害物質が入らない。
しかし、少しの衝撃を与えただけで樹脂に傷が入り、その場所から有害物質が入り込み色素を破壊してしまう。
また、小さな写真なら、この方法で傷が付かない限り有害物質から保護する事ができるが、大判の写真となると、大型の紫外線発生装置が必要である。その装置を作らなければならない。さらに、紫外線硬化樹脂は高価である。
信吾が手に入れる事のできる透明樹脂を取り寄せ塗布しテストを試みる。
しかし、どれも信吾にとって満足する物はなかった。
信吾の写真に対する考え方は、自分で現像した写真を浴室で鑑賞したいと言う事である。
この原点に返り、もう一度写真の耐候性について考えるのである。
そこで、欠点の多い樹脂で写真を保護することを止め、防水額縁の開発に取組みだした。
カラー写真の褪色問題は、発色した粒子を環境破壊物質である亜硫酸ガス、二酸化窒素等の他に紫外線から防御することが出来れば解決することができる。従って、防水額縁の開発が成功すると、有害物質は額縁の中に入らない。また、紫外線カットガラスを使用すれば色素の破壊を防ぐことが出来ると考えたのである。
しかし、幾ら防水加工をした額縁に写真を入れても、一ヶ月も浴室には展示することができなかった。二週間位から水滴が額縁の中に入って来るのである。また、高額で一般的ではない。
信吾は、防水額縁の開発を中止した。
ある時、暗室で現像が終わった試し焼のカラー写真の上に薬品を落としてしまった。その薬品はメタクリール酸メチルと言うアクリル板の原料である薬品で、あまりにも臭いが強烈なので、側に有った透明のアクリル板を、そのこぼした薬品の上に載せて置いた。
その事は忘れてしまうのであるが、一週間程後に気がつき、そのアクリル板を取り除こうとした。
すると、アクリルにその写真が引っ付き、中々その写真を剥がせない。
無理矢理、裏面の紙を剥がした。しかし、発色物質が取れない。良くみると発色した粒子がアクリル板の中に入っているのである。
それを見た信吾はひらめくのであった。
『この現象を応用すれば、発色物質がアクリルの中に入っている為、有害ガスから隔離する事ができるのでないか・・・。』と・・・。
さらに、アクリルは75%も紫外線をカットする。
それからと言うもの、取り付かれた様に、どうして発色物質がアクリルの中に入り込んだのかということについて追跡調査研究を始めるのである。
担任を持たない信吾にとって、助手時代とは異なって授業以外の時間を教材研究と言う事で自由にこなす事ができる。事実、信吾は、この写真研究が即授業に使うのである。