寺田澄子との別れ、そして結婚 4
                     清水景允

 信吾は切り替えが早かった。
それは、冬山で危険な思いをした事から、失恋など小さく感じたことと、研究助成金が出たこともあった。

 カラー写真の自家現像となると温度管理、現像時間管理を正確にしなければならない。白黒写真の現像と異なり、現像を行なう人の感覚など適応出来ない。現像環境が整えば全くの機械的作業である。
一応、文献通りに薬品を調合し現像に取りかかった。
現像温度20℃、0.5℃温度が変われば奇麗に発色しない。現像時間8分、それから現像停止、漂白作業、定着作業、水洗と進み、総時間30分はかかる。
これらを厳守しなければならない。
白黒写真を現像する様に、安全光は使えない。
真っ暗な暗室での作業である。
しかも、現像液には危険な薬品が入っている。
皮膚に付くとそこが炎症を起こす。
全く手探り状態の現像作業が続く。
30分程暗室にこもる。
30分後明室に出て現像が終わった写真を見た。
素晴らしい発色であった。
空は青く、山の木々の濃淡が樹の重なり具合から緑の濃淡で発色している。
初めて白黒写真の現像したときの新鮮な感動が込み上げてきた。
カラー写真の自家現像について没頭する中、来年の夏期スクーリングの準備をはじめた。

 そんな中、お袋の知人から縁談の話が急に信吾の所に来た。
見合い話である。
信吾は考える。
寺田澄子の件で、恋愛はコリゴリであった。
信吾自身、全くの白紙の状態から女性を眺めてみたい気持ちになっていた。
その見合い話を受ける事にした。