寺田澄子との別れ、そして結婚 2
清水景允
富山信吾は26歳になっていた。
大学の通信教育に席を置いて、6年になる。
普通、5年から6年で卒業して行くのだが、信吾はなかなか卒業が出来なかった。
実習助手には所定の単位を大学で修得すれば教諭へ任用替えができた。
高校に勤める、殆どの実習助手は単位を比較的修得しやすい大学に願書を送り、教諭になる為の単位を修得し5年から6年で卒業していった。
しかし、信吾には教諭への単位修得より、哲学的問題意識の芽生えから哲学の門を叩いたので、まだその問題意識解決の糸口も掴めなかった。
また、信吾は教諭と実習助手の給料差が付いて来るのは40歳頃であるから、それまでに実習助手から教諭に任用替えすれば良く、今は哲学を研究することが最優先と考えるのであった。
幸い、卒業論文指導教授である沢田先生は「通信で哲学を専攻した学生については、しっかりとした考え方を持って卒業して欲しい。」と常に言われる。このまま。安易に卒業してしまうと、それまでの人間として終わってしまう様な気がするのであった。
信吾は何事に付いてもそうであるが、通信教育の卒業を意識する時、常に小学生の時お袋に言われた言葉を思い出すのであった「三日坊主で終わったら、決して偉い人になれないよ・・・。」と。
信吾にとって偉い人とはどのような人を指すのか分からないが、「三日坊主で終わる・・・」と言うことは、人間失格とさえ思わせる言葉であった。
信吾は、この言葉が何時も心に浮かぶのであった。
寺田澄子とはクラスの月例会以外、逢っていない。月例会では何時もの様に慶応の事務連絡と、その後の発表会で時間が過ぎてしまう。
月例会が終了すると終電車の時間が来て居り、例によって始発駅まで二人して歩き、終着駅まで共に電車に乗り、そこから寺田澄子がハイヤーに乗るのを見届け、歩いて信吾の住宅に戻るだけで、寺田澄子とは、これと言った話はしなかった。が、信吾にとってそれで満足であった。
『今日も澄子さんの澄み切った声が聞けた・・・。』と、星空の下を自宅まで戻るのであった。
そんな時、勤務校で信吾に対する縁談の話があった。
工業高校には、業者に委託している売店があった。そこの従業員が信吾に女性を紹介すると言うのである。
その申し入れに信吾は丁重にお断りをするのであるが、結婚について考える様になった。
以前、結婚を機会に富山家の経済状況の改革を考えていた信吾は『そろそろ、寺田澄子との結婚を・・・。』と考えるのであった。
寺田澄子は、三人兄弟の長女である。
責任感も強く女性特有な優しさを持っており、家族を大切にする女性であった。
身長は、信吾より少しだけ低く、色白で細身であった。
プロポーズの時期とその方法を考える。
信吾には、小学校、中学校、高校と友達を作らず、一人で物事を考え行動をしていたので、独り善がりのところがあった。
寺田澄子と付合ってからも、その傾向は直らなかった。
ある日、寺田家の遠い親戚で、信吾が勤める学校の定時制の教頭として勤務し定年退職していた先生にお願いをし、寺田澄子に信吾の気持ちを伝えてもらった。
信吾にとって、寺田澄子との間に社会的に信頼できる人を経てて、結婚の申し込みをするのが礼儀であると考えたのであった。
清水景允
富山信吾は26歳になっていた。
大学の通信教育に席を置いて、6年になる。
普通、5年から6年で卒業して行くのだが、信吾はなかなか卒業が出来なかった。
実習助手には所定の単位を大学で修得すれば教諭へ任用替えができた。
高校に勤める、殆どの実習助手は単位を比較的修得しやすい大学に願書を送り、教諭になる為の単位を修得し5年から6年で卒業していった。
しかし、信吾には教諭への単位修得より、哲学的問題意識の芽生えから哲学の門を叩いたので、まだその問題意識解決の糸口も掴めなかった。
また、信吾は教諭と実習助手の給料差が付いて来るのは40歳頃であるから、それまでに実習助手から教諭に任用替えすれば良く、今は哲学を研究することが最優先と考えるのであった。
幸い、卒業論文指導教授である沢田先生は「通信で哲学を専攻した学生については、しっかりとした考え方を持って卒業して欲しい。」と常に言われる。このまま。安易に卒業してしまうと、それまでの人間として終わってしまう様な気がするのであった。
信吾は何事に付いてもそうであるが、通信教育の卒業を意識する時、常に小学生の時お袋に言われた言葉を思い出すのであった「三日坊主で終わったら、決して偉い人になれないよ・・・。」と。
信吾にとって偉い人とはどのような人を指すのか分からないが、「三日坊主で終わる・・・」と言うことは、人間失格とさえ思わせる言葉であった。
信吾は、この言葉が何時も心に浮かぶのであった。
寺田澄子とはクラスの月例会以外、逢っていない。月例会では何時もの様に慶応の事務連絡と、その後の発表会で時間が過ぎてしまう。
月例会が終了すると終電車の時間が来て居り、例によって始発駅まで二人して歩き、終着駅まで共に電車に乗り、そこから寺田澄子がハイヤーに乗るのを見届け、歩いて信吾の住宅に戻るだけで、寺田澄子とは、これと言った話はしなかった。が、信吾にとってそれで満足であった。
『今日も澄子さんの澄み切った声が聞けた・・・。』と、星空の下を自宅まで戻るのであった。
そんな時、勤務校で信吾に対する縁談の話があった。
工業高校には、業者に委託している売店があった。そこの従業員が信吾に女性を紹介すると言うのである。
その申し入れに信吾は丁重にお断りをするのであるが、結婚について考える様になった。
以前、結婚を機会に富山家の経済状況の改革を考えていた信吾は『そろそろ、寺田澄子との結婚を・・・。』と考えるのであった。
寺田澄子は、三人兄弟の長女である。
責任感も強く女性特有な優しさを持っており、家族を大切にする女性であった。
身長は、信吾より少しだけ低く、色白で細身であった。
プロポーズの時期とその方法を考える。
信吾には、小学校、中学校、高校と友達を作らず、一人で物事を考え行動をしていたので、独り善がりのところがあった。
寺田澄子と付合ってからも、その傾向は直らなかった。
ある日、寺田家の遠い親戚で、信吾が勤める学校の定時制の教頭として勤務し定年退職していた先生にお願いをし、寺田澄子に信吾の気持ちを伝えてもらった。
信吾にとって、寺田澄子との間に社会的に信頼できる人を経てて、結婚の申し込みをするのが礼儀であると考えたのであった。