寺田澄子との出会い 5
                     清水景允

 クラブの月例会の内容は、大きく二つから成り立っている。
 一つは、通信教育課程の教務部からの事務的連絡の通知である。
特に地方で科目試験が行なわれる次期になると、教務部を通して教授との事務的打合せ、教授の講義の内容を事前に分析し、それに伴う学習会の開始などである。
 二つ目は、クラス構成員での学習会である。この学習会は教養課程の教科が主であるが、専門課程となると各自が専門家として、学生の前で話すのである。
この試みは、人前で話す事によって、さらに深く身に付くことを念頭に於いての試みであった。
 
 例会は終わった。
軽くお茶を飲んで終電車の時間が近づいたので、会場を後にした。
帰る方向が同じなので、寺田澄子と二人して電車の発車駅に向かう。二人は今日の例会について話ながら歩いた。20分程で駅に着いた。

当時、最終電車の時間になっても旭川四条駅付近までは閑散としていたが、電車の駅内は帰途につく人達で賑やかであった。
「今日の専門課程の人の話、分かった・・・。」
信吾は語りかけた。
「難しかったです。」寺田は答えた。
「そうだね・・・。専門過程の人が話すことについて、この例会で最も大事にしているところなのだよ・・・。
とかく、専門課程に入ると、通信教育では一人善がるところがある。そこで、自分の考え方を人に聞いてもらい、皆に理解してもらえなかったら、先ず、その考え方は通用しないと考えて良い・・・。特に僕なんか、独り善がりのところがあるから、そこのところ注意をしているのだよ・・・。」
「でも、富山会長の話はおもしろいです。」
「そうかな・・・。僕は哲学専攻だから、つい皆に理解できない言葉を使ってしまうところがある。」
「そうですか・・・。でも会長さんの話の中に『哲学はカントがどう言った。ヘーゲルがこう言った。』と言う事を勉強するのが哲学でない。『なぜ、カントがその時代に、あのような事を言わなければならなかったのか・・・。』と云いましたよね・・・。その話を聞いて、教養課程に哲学がありますが、哲学とは歴史の中で、その人々が如何に平和に生きて行く為に、何をすべきなのか・・・。と言う事を学ぶ学問だと言う事を気がつきました。だから、難しい事を掘り下げて行く事を止め、次回の科目試験でそこの所を書きます。」
と寺田は言うのであった。