助手時代 三
                  清水景允 
 新学期がはじまった。
生徒達の前で、人事異動で転勤して来た先生、及び新任の先生の紹介がある。
それに出て一言挨拶をしなければならない。
丁度、その頃には背広も出来上がり、それを着て演台に上がった。
辞令公布式と同じく、信吾の紹介はラストである。その分、挨拶文を複唱することが出来た。
信吾の番が来た。
学校長は「今年本校を卒業し、君たちの先輩の富山信吾先生です。先生は君たちと一緒に勉強をしたいということで本校に残っていただきました。これからは、君たちの先輩であると同時に、本校の先生です。先生から学ぶことが数多くあると思います。富山信吾先生です。」と紹介してくれた。
信吾の挨拶は「只今、ご紹介いただいた富山信吾です。これからは君たちに親しまれる先生になるよう頑張ります。よろしくお願いします。」としか言えなかった。
「・・・親しまれる先生・・・。」ここには本校に入学して間もなく、工業化学科の先生に言われたことが脳裏に浮かぶのである。
生徒も人間として対等であるのに、どうしてクラスの皆の前で「このバカもの・・・。」なんて言えるのだろう。もし、その先生が愛の鞭で言うとするなら、言われた者に傷を付けずに言う言葉と、場所とが有るはずだ・・・。
三年前のことがよみがえってくるのであった。